ハル・ベリーは、2002年の第74回アカデミー賞で主演女優賞を受賞した。
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- ハル・ベリーは、自身の2002年アカデミー賞主演女優賞受賞は、より多くの黒人女性が受賞できるようになる「扉を開くものではなかった」と語っている。
- ベリーは今でもこの部門で受賞した唯一の黒人女優だ。
- 彼女はニューヨーク・タイムズのインタビューで「胸が張り裂けそう」と述べた。
2002年、ハル・ベリー(Halle Berry)は黒人の女優として初めてアカデミー賞主演女優賞を受賞し、歴史にその名を刻んだ。それから20年、黒人の女優はこの賞を獲得していない。
「それは扉を開くものではなかった」
ベリーは2022年3月24日、ニューヨーク・タイムズ(NYT)に対し、受賞を振り返ってとそう述べた。
「私の隣に誰も立っていないという事実に、胸が張り裂けそうだ」
「チョコレート」で夫と息子の死を嘆き悲しむ母親を演じたベリーの受賞は、歴史的なものであると同時に、「ムーランルージュ」のニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、「アイリス」のジュディ・デンチ(Judi Dench)、「イン・ザ・ベッドルーム」のシシー・スペイセク(Sissy Spacek)、「ブリジット・ジョーンズの日記」のレネー・ゼルウィガー(Renée Zellweger)らを抑えた、アカデミー賞史上最大の番狂わせのひとつになった。
そして彼女は、1955年に「カルメン」 で黒人女性として初めて主演女優賞にノミネートされたドロシー・ダンドリッジ(Dorothy Dandridge)にこの受賞を捧げるという、感動的な受賞スピーチを行ったのだ。
受賞当時、ベリーは同部門にノミネートされた7人目の黒人女優であり、彼女の受賞以降、さらに7人がノミネートされている。しかし、ベリーの受賞後、2010年にガボレイ・シディベ(Gabourey Sidibe)が「プレシャス」でノミネートされるまで、黒人女優が再び同部門にノミネートされることはなかった。
しかし、ベリーは前進を実感している。
彼女はNYTの取材に対し、「賞の数で成功や進歩を判断することはできない」と語っている。賞はケーキの上の飾りのようなもので、仲間たちが「今年は特別に素晴らしかったよ」と言ってくれたようなものだと。
「でも、特別に素晴らしかったと評価されなかったら、偉大ではなかった、成功しなかった、世界を変えなかった、チャンスを広げなかったということになるのだろうか」
ベリーは、業界の変化の例として、レナ・ウェイス(Lena Waithe)やヴィオラ・デイヴィス(Viola Davis)が行っているプロデュース業を挙げている。そして、ベリー自身もアカデミー賞受賞後に変化している。2021年11月にはネットフリックス(Netflix)の「ブルーズド 〜打ちのめされても〜」で監督デビューを果たし、カムバックを目指す格闘家を演じてもいる。
「20年前、黒人女性が格闘技の映画を監督するなんて、思いもしなかった。これは、物事が変わってきている証拠」だと彼女は述べている。
2021年には、「マ・レイニーのブラックボトム」のヴィオラ・デイヴィスと 「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」のアンドラ・デイ(Andra Day)の2人の黒人女優が主演女優賞部門にノミネートされた。
3月27日(現地時間)に授賞式が行われる今年のアカデミー賞では、主演女優賞部門の候補者に黒人女優はいない。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)