新生パナソニックが100年企業として空気の課題に注力する理由

2022年4月に持株会社制へと移行するパナソニックホールディングス。持ち株会社の傘下には、8つの事業会社がぶら下がる。家電や電気設備、空調といった主力事業を引き継ぐのは、パナソニック株式会社。そのなかで、空質空調事業を担う社内カンパニーが『空質空調社』だ。パナソニックで空調事業を担う『空調冷熱ソリューションズ事業部』と換気・空気清浄機器など空質事業を展開する子会社『パナソニック エコシステムズ』が融合して発足した。

パナソニック エコシステムズの源流は、1909年創業で 国産初の扇風機を開発した電機メーカー『川北電気』に遡る。パナソニックは1918年に創立した松下電気器具製作所に端を発するので、いずれも100年企業である。重ねてきた歴史に触れつつ、今、融合すべき理由と見据える未来を紐解いた。

松下幸之助の危機を救った「扇風機」とクーラー事業が生まれた一言

ブランドスローガンの画像

パナソニック空質空調社のブランドスローガン「空気から、未来を変える。」

パナソニックは、言わずと知れた、日本を代表する総合エレクトロニクスメーカー。しかし、グループを取り巻く環境は楽観視できない。未来が不透明で予測できないVUCAの時代。中長期的な視点でグループの経営を深化させ、成長をより確かなものにしていくためには、なにが必要か。選んだ道が持株会社制への移行だ。

持株会社制への移行で、各事業会社は分社化。明確になった責任と権限に基づき、自主責任経営が徹底される。目的は、外部環境の変化に応じた迅速な意思決定や事業特性に応じた柔軟な制度設計などを通じて、事業競争力を大幅に強化することである。

家電や電気設備、空調といった主力事業を引き継ぐ事業会社は、パナソニック株式会社だ。そのなかで、空質空調事業を担う社内カンパニーが『空質空調社』である。掲げるスローガンは、「空気から、未来を変える。」。100年を超えて空質、空調両事業の強みを積み上げてきた歴史があるからこそ、「未来」という言葉にも重みが増す。

社歴表

そもそも、空質空調社は、空調事業を展開する空調冷熱ソリューションズ事業部と、換気・空気清浄機器など空質事業を担うパナソニック エコシステムズが融合して発足した社内カンパニーだ。

パナソニック エコシステムズの源流は、日本で初めての扇風機を製造した『川北電気企業社』まで遡る。この川北電気、実はパナソニックの誕生に大きく関わっているという。その経緯を経営企画室の西村基(にしむら・もとい)室長はこう語る。

西村さんの写真

西村基(にしむら・もとい)氏/パナソニック 空質空調社 経営企画室 室長

「松下幸之助は大阪電灯(現在の関西電力)から独立後、電球用ソケットの製造販売に乗り出します。今でいうベンチャー企業です。しかし、なかなか売れずに、進退窮まるところまで追い込まれました。そんなとき、『川北電気』が救いの手を差し伸べたのです。

当時、扇風機の碍盤(がいばん:絶縁体で電気を通さない板。スイッチに使われた)は陶器製で壊れやすかった。扇風機の大手メーカーである川北電気は、碍盤を練物で作ることを考えました。そこで声を掛けたのが、電球用ソケットの胴の部分に練物を使っていた松下幸之助。その仕事が軌道に乗り、どうにか危機を脱したそうです。勢いそのままに、1918年、松下電気器具製作所を創立。パナソニックの歴史はここから始まりました」(西村室長)

タイフーンの画像

1913年に量産が開始された、日本初の量産型交流12インチ扇風機「タイフーン」

後に川北電気は、松下電器と提携。1956年には正式に松下グループに加わり、1962年、松下精工へと社名を変更する。当時、松下幸之助は、「風が動くものは、全て松下精工がやっている印象になるくらい、風一本でいけ」と話したという。その後、松下エコシステムズ、パナソニックエコシステムズと社名を変更し、「風と空気」をキーワードに事業を進めてきた。

ホームクーラーの画像

1958年に発売されたルームクーラー1号機「ホームクーラー」

一方、空調冷熱ソリューションズ事業部の歴史は、1957年、松下電器 電機事業部が水冷式ルームクーラー(冷房機)を開発したことに始まる。その試作機は、松下幸之助の自宅に据え付けられたという。「小型軽量のフロア型クーラーだったそうです」と西村室長。社内に残るエピソードを語ってくれた。

「風呂から上がってきた松下幸之助が、『これがクーラーか。風が冷たいなあ、いい気持ちやなあ。これがあったら、夏、高野山に登らんでもええな』と言ったそうです。大事だったのは、その次の一言。『これが安くできたら、世の中の人は喜ぶやろうな』。この言葉に鼓舞され、翌年には業界に先駆けてナショナル・ホームクーラーを発売。その翌年にはクーラー事業部を発足し、本格的に事業が始まりました」(西村室長)

こうして、パナソニックエコシステムズは空質、空調冷熱ソリューションズ事業部は空調、それぞれの分野のフロントランナーとして、常に未来を見据えながら、各時代が抱えるIAQ(=Indoor Air Quality 室内空気質)の課題を解決してきた。

空質空調社が目指す空間価値の提供と地球温暖化の防止

長らく、それぞれの技術でIAQの課題を解決してきたパナソニックエコシステムズと空調冷熱ソリューションズ事業部。なぜ今、融合する必要があったのだろうか。一義的には、空質と空調を1つに融合し、開発・製造・販売の方向性を一元化し、お客様接点と事業を強化することにある。また、両方のコア技術によるシナジーで、環境テクノロジーも更に進化するはずだ。

西村室長は、より踏み込んで、今こそ融合する必然性に言及する。

「これまで、パナソニックエコシステムズと空調冷熱ソリューションズ事業部は、温度・湿度・清浄度・気流からなる空気質4要素と除菌・脱臭・香りからなる感性3要素、この7つの要素を価値として提供してきました。ニューノーマル時代の今、そして未来においては、商品価値だけでなく空間価値がより重要になります。そのためには、事業領域の一元化は避けて通れませんでした」(西村室長)

空質空調社は、3つの提供価値を掲げている。1つ目は、<空気から、安心安全を。>。独自のクリーンテクノロジーとセンシング技術で、菌やウイルス、アレルギー物質などさまざまな有害物質を抑制し、気持ちよく呼吸できるくらしを実現する。

2つ目は、<空気から、社会に活力を。>。一人ひとりのくらしや仕事に合わせて、ストレスを軽減する空気をお届けし、心とからだのベストを引き出すことで、人と社会に活力をもたらす。これらはまさに、空間価値の提供だろう。

そして3つ目が、融合する大きな理由となる、<空気から、健やかな地球を。>だ。

パナソニックは、2022年初頭、グループ全体で取り組む新たな環境コンセプト、『Panasonic GREEN IMPACT』を発表した。2030年までに全事業会社のCO2排出量を実質ゼロに、2050年に向けてBtoC商品からのCO2排出量を減らし、さらには、BtoB、BtoG(Business to Government)の省エネソリューションやクリーンエネルギー技術の提供を通じて、社会のCO2を減らす活動を進めるという。

生活空間から公共空間まで、お客様の課題を解決するための事業活動へ

2022年4月1日の社内カンパニー発足に先駆け、2021年10月からは空質空調事業として、すでに業務がスタート。そのシナジーは、徐々に現れつつある。

「パナソニックエコシステムズと空調冷熱ソリューションズ事業部は、それぞれに強みと技術を持っているので、スピーディーで流動性のある開発を期待しています。例えば、空調事業のビル・オフィス・店舗用エアコンに、空質技術の新ナノイーXやジアイーノを組み合わせる。これによって、大空間の空気質でもよりアクティブな除菌が可能になると考えています」(西村室長)

その先駆けであり、象徴的な製品も発表された。空調、換気、除菌、脱臭、加湿機能を一体化した『業務用空質空調連携システム』である。

業務用空質空調連携システムの写真

2022年4月1日に発売される、空調、換気、除菌機能などを一体化した、業務用空質空調連携システム。

この『業務用空質空調連携システム』は、最大で52%のエネルギーを削減するという。この省エネ性能には、日本を代表する家電メーカーとしての使命感も垣間見える。

「パナソニックは家電メーカーとして、お客さまが手軽ながらも安心・安全に使って頂けるユーザビリティーを磨いてきました。省エネもそのひとつです。そのための要素技術も常に進化させてきました。空質・空気においても、家電メーカーとしての強みは活かしていきたいと思っています」(西村室長)

ニューノーマル時代、住宅だけでなく、オフィスや店舗、公共空間まで、人が生活するすべての空間において、換気や除菌など空気質への関心が高まっている。それは、自動車や鉄道といった移動空間も然りだ。

「空質空調社の事業領域は、どんどん拡大するはずです。空気から未来を変えるためには、従来の事業領域と価値提供に甘んじることなく、自らが変わり、変化しなくてはいけません。今回の融合は、変わらなければお客様のお役立ちになれないという危機感の表れでもあります」(西村室長)

「空気と水のテクノロジーで、健康で快適なくらしと社会を創造する、グローバルトップクラスのプロフェッショナルカンパニー」というビジョンを掲げている空質空調社。

「そう宣言するからには、しっかりとやり遂げる責務があります」と意気込む西村室長。100年の歴史から得た知見、そして、積み重ねてきた技術で今の時代の課題を解決し、これから先の未来を変えてくれるはずだ。


パナソニック空質空調社についての詳細はこちら

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