2022年1月、コロラド州グレンデールで行われたKing Soopersのストライキに参加する全米食品商業労働組合(UFCW)のメンバー。
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- スターバックス、REI、アップル、アマゾンなどの企業の小売店の従業員が労働組合の結成を試み始めている。
- これらは10年以上にわたって企業の収益が増加する一方で、労働者がその恩恵をほとんど受けなかった結果だ。
- 専門家は、パンデミックは「マッチに火をつける火種」だったと話している。
それはニューヨーク州バッファローにあるスターバックス(Starbucks)から始まった。その後、7店以上のスターバックス、アウトドア用品REIの1店舗、そして1つのアップルストア(Apple store)に広がった。
全米の小売業の労働者が組合の結成に挑戦している。そしてついに、アマゾンのニューヨークにある倉庫の労働者たちは労働組合の結成を賛成多数で可決した。
この傾向はパンデミックに伴う不満から生まれた。かつては「必要不可欠」「英雄」ともてはやされていた労働者たちは、企業の利益が増加し、CEOの報酬が高騰する中で、賃金がほぼ横ばいとなっている。彼らはコロナ禍で働き、同僚を亡くし、マスクを着けたくない客から嫌がらせを受けるという経験をしてきた。
将来も同じことが繰り返されると知った彼らは、会社を辞めるか、あるいは雇用主から権力を取り戻すための唯一の選択肢、労働組合を結成することにした。
「人生を変えるような出来事を経験すると、その人の人生が変わることがよくある。我々は社会全体が変わるような出来事を経験してきた。それがこのようなことを大量に目にする理由だと思う」とカリフォルニア大学バークレー校の労働・雇用研究所の労働経済学者、シルビア・アレグレット(Sylvia Allegretto)はInsiderに語っている。
パンデミックは「マッチに火を付ける火種」だった
コロナウイルスのパンデミック時、会社の方針に抗議するアマゾンの労働者たち。2021年5月1日、カリフォルニア州ホーソーンで。
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しかし、コーネル大学の産業・労使関係学部の労働教育研究部長、ケイト・ブロンフェンブレナー(Kate Bronfenbrenner)によると、組合結成の動きはパンデミックよりさらに前にさかのぼることができるという。
「この10年間を振り返ってみると、アメリカも世界もさまざまなショックを経験したが、これらの企業はショックに見舞われなかった。しかし、労働者はショックに見舞われた」と彼女は言う。
「新型コロナウイルス感染症は、まさに火付け役になった」
2008年の金融危機でも、新型コロナウイルスのパンデミックでも、危機が起こるたびに、企業は従業員に犠牲を求めるようになったとブロンフェンブレナーは話す。労働者は賃金の凍結、福利厚生の削減、労働時間の短縮、あるいは労働時間の延長を経験している。彼らは適切な防護服も着用せず、体調が悪くても出勤しなければならないような職場で、同僚とともに命がけで働くことを求められたのだ。
「不景気な世の中で労働者が犠牲を払うのは仕方がないことかもしれないが、自分や家族の命を危険にさらすのはまったく別の話だ」とブロンフェンブレナーは言う。
「加えて、賃金が本当に停滞しているという事実がある。最低賃金が十分に上がっておらず、生活費は上がり続けている。そして、彼らは職場で尊重されるという基本的な問題だけを求めるが、雇用主はそれにノーと答えている」
ダヴィデはゴリアテに挑む
ニューヨーク州バッファローのスターバックスでは、組合結成の是非に関する投票が行われた。
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2021年の時点で、小売業で働く人のうち組合に加入しているのは約4.4%で、その割合は過去20年間着実に減少してきた。2020年のアメリカ政府のデータによると、2000年には小売業の労働者の6%強が組合に加入していたという。
UCバークレーのアレグレットは、この労働組合の縮小はたとえ規模が小さくても組合活動があるたびに、企業が反組合的なストーリーを引っ張り出してくることが原因だと指摘する。
例えば、2021年に初めて労働組合が結成されたバッファローのスターバックスの店舗では、組織委員会に参加していた従業員が会社の労働組合潰しを訴えた。その後、全米労働関係委員会(National Labor Relations Board:NLRB)は、スターバックスが行ったフェニックスの店舗で組合を支持する従業員の扱いについて批判したが、同社は反組合活動だという主張は「完全に誤り」だと述べている。
アマゾン(Amazon)は労働者が力を合わせることを阻止するために反組合的な戦術を取ってきたと労働者たちは話している。NLRBは、アマゾンが組合結成を試みたスタテン島の倉庫従業員を違法に「脅迫、監視、尋問」し、アラバマ州での組合投票の結果を覆したと非難した。そのスタテン島の倉庫の労働者たちは4月1日に投票を行い、労働組合の結成を賛成多数で可決した。
その他の労働者も労働組合結成の試みを続け、その結果、全米の小売店での組合運動が徐々に広がっている。例えば、スターバックスでは、2021年12月以降150以上の店舗が労働組合結成の投票を申請しており、これは全国にある9000店舗から見ればほんの一部に過ぎないが、明らかにドミノ効果が出ているとブロンフェンブレナーは話している。
「組合の勝利は伝染していく。投石器を持った小さな少年が大男を倒すと、『ああ、我々にもできることなんだ』となるだろう」
[原文:A surge in retail union organizing is the surest sign yet that workers are fed up]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)