ロシアによる侵攻を受け、ポーランドに避難してきたウクライナの人々(2022年3月27日、プシェミシル)。
REUTERS/Hannah McKay
- ロシアによる侵攻を受け、ウクライナから避難してきた女性を車に誘い込み、食い物にしようとする人間がいると、ポーランドのある慈善団体のスタッフが話したとガーディアンが報じた。
- ウクライナから近隣諸国に逃れてきた弱者が人身売買業者に狙われていると、慈善団体は警鐘を鳴らしている。
- 国連によると、ウクライナからの避難民370万人のうち約90%が女性と子どもだ。
ウクライナの近隣諸国では、避難してきた女性や子どもが人身売買業者の標的にされていると、慈善団体が警鐘を鳴らしている。
ポーランドのルブリンを拠点に活動している人権団体「Homo Faber」のコーディネーターをしているKarolina Wierzbińskaさんは、慈善団体で働く人々がウクライナから逃れてきた人々が標的にされるのを目撃しているとガーディアンに語った。
「わたしたちはルブリンにある難民シェルターの近くで、ウクライナ人女性を食い物にしようとした売春あっせん業者(と疑われる)の最初のケースを認定しました。こうした業者は移動手段や仕事、宿泊施設を提供すると見せかけて、場合によっては強引に、女性たちに声をかけています」とWierzbińskaさんは同紙に話した。
Wierzbińskaさんによると、こうした人々の弱みに付け込もうとする業者が「長旅で疲れ切った、困窮した女性たちに車での送迎や泊まる場所を提供するふりをしている」のが目撃されている。
こうした業者には男性だけでなく女性やカップルもいて、ウクライナから避難してきた女性にバス停などでアプローチしているという。
Wierzbińskaさんは以前、なんとか子どもだけでも助かってほしいと親族や友人などを頼って、親が単独で国境を越えさせた子どもたちが行方不明になるケースもあると、ガーディアンに語っていた。
慈善団体は女性が奴隷のような状態に置かれたり、売春を強制させられているのではないか、子どもが誘拐され、犯罪集団に売られているのではないかと心配している。
ポーランドのヴロツワフ警察は、19歳のウクライナ人女性に性的暴行を加えた疑いで49歳の男を逮捕したと発表していて、男は女性に泊まる場所を提供すると声をかけたと、France24は報じている。
混乱に乗じて
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ロシアが軍事侵攻を始めてから約1カ月の間に370万人以上がウクライナから国外へと逃れている。
その大半 —— 200万人以上 —— は隣国ポーランドに避難した。
ロシアによる侵攻を受け、ウクライナ政府が18~60歳の男性の出国を禁止していることもあり、避難民のうち約90%は女性と子どもだとUNHCRの担当者は話している。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「人の弱みに付け込もうとする人間や人身売買業者にとって、ウクライナでの戦争は悲劇ではない。チャンスだ。そして、女性や子どもが標的にされている」とツイッターで指摘した。
避難民が国境を越えてポーランドへ流入する中、数千人のボランティアが彼らに食べ物や住居、無料の移動手段を提供しようと立ち上がった。
国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは、国境の町メディカや、プシェミシルやワルシャワの駅など、彼らがポーランド国内で訪れた場所では、政府当局よりもボランティアの方が圧倒的に存在感があり、積極的に活動していたと報告している。
最近では、避難民に「車で送ってあげる」と声をかけるボランティアやドライバーの身元をこれまで以上にきちんと確認するために警察がプレゼンスを強化しているものの、多くの車は今も止められることなく通過しているとガーディアンは報じた。
人身売買業者は困窮する避難民に付け込もうと、この混乱を利用していると考えられている。
アムネスティ・インターナショナルのヨーロッパ地域の責任者Nils Muižnieksさんは、ポーランドのボランティアの取り組みは称賛されるべきだが、当局は避難民を守るためにもっと尽力する必要があると話している。
「ポーランドのボランティアが示した連帯感は並外れたものですが、中央当局が責任を負い、活動を調整しなければ、保護や支援を必要としている人々が見過ごされてしまう危険性があります」とMuižnieksさんは言う。
The Huffington Postによると、ウクライナから避難してきた弱者に付け込み、騙そうとするケースはスロバキアやドイツといったその他の国々でも慈善団体で働く人々によって報告されている。
国際事件NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのシニア・リサーチャー、ヒラリー・マーゴリス(Hillary Margolis)さんは、避難民はお腹を空かせたり、からだが弱るにつれ、危険な状況に陥りやすくなると指摘している。
「人は自分ではやると思っていなかったようなことをすることがあります。彼らは文字通り、飢えに苦しみ、医療や泊まる場所を必要としているからです」とマーゴリスさんはThe Huffington Postに語った。
(翻訳、編集:山口佳美)