アマゾンは2022年11月にドローン配送試験運行の実施条件および制限の緩和を求めて、米連邦航空局(FAA)に申立書を提出。しかし、その背景では知られざるドローン墜落事故がいくつも発生していた。
Federal Aviation Administration
Insiderが米連邦政府の墜落事故に関する報告書と内部文書を精査した結果、アマゾンの自動運転配送ドローンが過去13カ月間に少なくとも8回墜落していたことが明らかになった。
把握できた墜落事故のうち1回は、試験航行中のドローンが高度160フィート(約48メートル)から落下し、エーカー規模(4000平方メートル程度)の山火事を発生させた2021年6月の事故で、Insiderは3月25日公開の記事で先行して報じている。
また、上記の書類から、最新の事故事例は2022年2月に米オレゴン州東部の飛行場で発生したことも明らかになった。
アマゾンは2013年、ドローン配送の実現を目指して野心的な「プライム・エア」プログラムを発表。2020年8月に米連邦航空局(FAA)から飛行許可(=無人航空システムの商業利用認証)を得て、実施エリアや積載物の種類など制限付きの試験運行をくり返してきた。
現在は、人口稠密地により近いエリアで、かつより少ない制限のもとで、試験運行を実施するための当局認可を目指しており、そうしたなかで今回の事故履歴は明らかになった。
Insiderが入手した内部文書によると、アマゾンは2021年、2300回以上のドローン試験運行を実施した。同社はこれまで、試験運行を通じて負傷者を出したことはないと公言している。
アマゾンの広報担当は過去の発表コメントで以下のように強調している。
「アマゾンのあらゆる企業行動に安全性(の確保)は不可欠です。当社は、ドローンやそれに搭載した各種テクノロジーの安全性を確認するため、公共空間ではない閉じられた施設内で運行実験を続けています。
安全な環境のもとでドローンとテクノロジーを限界までテストし、その結果から学び、改善をくり返す。そのプロセスを経てはじめて配送用ドローンの安全性が確保されるのです」
しかし、そうしたたゆまぬ努力と裏腹に、プライム・エア開発チームが高い離職率、内部対立、プロダクト開発の遅延に苦しんでいる現状を、Insiderは以前報じている。
ある内部文書によれば、およそ800人が所属する同部門では2021年、離職率が20%超に達した。Insiderが2021年8月公開の記事で報じた、(プライム・エア部門が本部を置く)イギリスの開発チームでレイオフされた100人以上の従業員もそこに含まれる。
FAAの墜落事故報告書のほとんどは編集によってアマゾンの具体的な社名が伏せられているため、Insiderは墜落事故の発生を従業員に通知する社内メッセージのスクリーンショットと報告書記載の事故発生期日を照らし合わせてみた。
報告書のほとんどは、アマゾンがドローンの試験運行を実施しているオレゴン州ペンドルトンの一部エリアで起きた墜落事故に関するものだった。
記載された墜落の理由はさまざまだ。
2021年7月の事故では、ドローンに取りつけられた6枚のプロペラのうち1枚が離脱、トルクと動力を喪失するに至り、高度120フィート(約36メートル)から地面に墜落した。
その6日後、プロペラを誤った取付箇所に装着したことに起因する、別のプロペラ事故が発生した。
具体的には、反時計回り仕様のCCWプロペラを、時計回り仕様のCWモーターに装着したため、離陸後間もなく天地逆転してそのまま墜落したという。
ほかにも、モーターの故障やソフトウェアの不具合を原因とする墜落事故が報告されている。
FAAが受理した書類によれば、アマゾンは2021年11月、安全確保のための各種条件および制限の適用見直しを申請している。
現在の(FAAの)登録条件のもとでアマゾンは、ドローンを公道、建造物、人間の上空で飛行させることを禁止されている。新たな申請が許可されれば、そうした制限の一部が緩和されることになる。
アマゾンは申請書のなかで、試験運行を経て改良した第二世代ドローンシステム「MK27-2」は、試験運行バージョンの「MK27」よりはるかに安全で、「顧客への安全なドローン配送を次のステップに進めるため」に、運行条件と制限の修正を求めるとしている。
FAAは申請に対してまだ結論を明らかにしていない。
(翻訳・編集:川村力)