半導体不足でも強い高級車メーカー。フォード、GMが苦戦する中、BMWやテスラが生産台数を伸ばせた訳

BMW

ドイツのミュンヘンにあるBMWの工場でBMW車種の組み立てを行うロボット。

Daniel Josling/picture alliance/Getty Images

この2年間で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うサプライチェーンの問題が、半導体市場を混乱させている。

コロナ禍が始まった2020年から、突然在宅勤務を余儀なくされた人たちやオンライン授業を受けなければならなくなった学生らの事情により、半導体の需要が急拡大した。この混乱は、2021年に自動車業界で需要が急回復したことでさらに加速した。

需要の拡大はディーラーには利益をもたらしたものの、自動車メーカーの一部は厳しい状況に追い込まれた。フォードはエントリーレベルのトラックの生産遅延を余儀なくされ、アメリカで販売台数1位のGMは部品不足により一部のラインで生産を縮小せざるを得ず、2021年の販売台数首位の座をトヨタに明け渡すこととなった。

半導体の供給はかなり遅れているため、供給不足は2023年まで解消されないだろうと専門家は見る。バイデン政権は半導体製造を支援するため、520億ドル(約6兆6500億円、1ドル=128円換算)の補助金を出す法案を打ち出しており、EUも増産に向けて490億ドル(約6兆2700億円)の官民資金の投入を検討している。

自動車市場においてコロナ禍の影響による受注残、サプライチェーンの混乱、インフレにもかかわらず好調だったのは高級車セグメントだ。

BMWは、米サウスカロライナ州の工場における2021年の生産台数が過去最高となり、これが海外への販売促進と業界平均水準を上回る伸びをもたらしたと発表した。フォルクスワーゲン傘下のベントレーやランボルギーニといった高級車は、サプライチェーンの混乱が比較的少なかったことが2021年の記録的な販売台数につながったと発表している。また、テスラは高級車ブランドとして販売台数がアメリカ国内第3位にまで躍進した。

本稿では、世界の自動車ブランドが課題に直面するなか、高級車メーカーがこれをどう克服したのか詳しく考察する。

大衆車より販売サイクルの予測がつきやすい

高級車に乗る人は実際のところ、車を買うのではなく通常は3年ほどリースして、維持費やローン金利その他のコストを節約している。顧客が次にいつ戻ってくるか分かるため、高級車のディーラーは部品その他の必要なものを把握できるのだ。

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