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シャンプーや洗剤も脱プラ。花王が競合と手を結んでリサイクルに取り組む理由

表紙

撮影:三ツ村崇志

洗剤やハンドソープ、シャンプーなど、私たちの日常生活をサポートするトイレタリー製品の容器は、基本的に「プラスチック」だ。洗剤などの液体成分を安全、かつ健全な状態で保存し続けるには、プラスチックは必要不可欠な素材だと言える。

「プラスチック容器はなくてはならないものだと認識しています。従って、脱プラという発想ではなく『プラスチックと正しく付き合う』という発想です

花王のESG活動推進部でESG活動マネジメントグループ担当部長を務める柴田学部長は、世界で加速している脱プラスチックの取り組みに対する意識をこう語る。

花王は、洗剤の「アタック」やシャンプーの「メリット」などを販売するトイレタリー製品の大手だ。

プラスチックの使用が「前提」とならざるを得ないこの業界では、実は古くからプラスチックの使用量の削減に取り組んできている。また、自治体や競合であるライオン、ユニリーバ、P&Gなどとも積極的に協働し、4月1日に施行される新法でも重要視されているプラスチック容器を回収する取り組み(プラスチック廃棄物サイクルの「静脈」と言われる)を進めるなど、脱プラに対して「先進的な業界」だとも言える。

業界大手の花王に、プラスチックが欠かせない業界の「脱プラ」戦略を聞いた。

「プラスチックが必要」だからこそ進めてきたプラ削減

詰め替え

スーパーやドラッグストアでは、花王の商品に限らず、ボトル容器よりも詰め替え用パッケージの販売の方が多数だ。

撮影:三ツ村崇志

花王に限らず、洗剤やハンドソープ、シャンプーなどのトイレタリー製品を販売している企業の「脱プラ」の取り組みは、製品の改良の歴史とともにある。

例えば、少量でも洗剤などの洗浄力を高めるための高性能化や濃縮化の研究もその一例だ。

合成洗剤などは原料に石油資源を消費することから、もともと資源に限りがあることが課題だった。高性能化は消費者の利便性を高めることはもちろん、省資源化という意味でも必要だった。粉末洗剤から液体洗剤に移行が進むと、容器がプラスチックになり、濃縮化によって容器をコンパクト化し、プラスチックを削減する意味合いも出てきた。

実際、濃縮化や容器の小型化、加えて強度を保ちながらボトルを薄くする設計を追い求めた結果、花王ではプラスチックの使用量を従来のボトルから約40%削減することに成功している。

リデュースイノベーション

画像:花王

また、トイレタリー製品では洗剤にしろシャンプーにしろ、花王に限らずほとんどの製品で「詰め替えタイプ」が販売されている。ボトルに比べると、詰め替え用のフィルムパッケージの方がプラスチック使用量がはるかに少ない。

花王によると、詰め替え容器への移行が進んだことで、現在の花王の売り上げの「全て」がボトルで達成された場合と比較すると、プラスチックの使用量を約75%削減できている計算になるという。

「日本の市場では詰め替えを相当やってきました。花王としても、包装容器の革新・改善などを進め、それを先導する役割を果たせていたのではないかと思っています」(大谷純子ESG部門 ESG戦略部長)

業界全体での取り組みの結果ではあるとはいえ、消費者に「ボトルではなく詰め替えタイプを使う」という行動変容を自然に促せたという事実は、プラスチックの消費量を削減する上で非常に大きな成果だったと言える。

脱炭素時代に考えなければならないプラスチックの使い方とは?

詰め替え用ホルダー

花王では、詰め替え用フィルム容器をそのままセットするホルダーも販売している。

画像:花王

プラスチックの使用量を削減していくことは、必然的にカーボンニュートラルな社会に対応していくことと紐付いている。石油の消費量・採掘量が減っていけば、それを原料とする新規のプラスチック製造量も少なくなるからだ。

そこで製品を作る上での資源となりうるのが「捨てられているプラスチック」だ。つまり、これから先訪れる脱炭素時代には、プラスチックをリサイクルする「静脈」の仕組みを整えることが必要不可欠となる。

「全体で資源を減らして、リサイクルできる社会を作るために、調達から廃棄サイクルまで全体を設計しています。花王が、静脈(リサイクル)を外部のパートナーと協業してやっているのは、それをやらないと全体が回らないからです」(大谷部長)

大谷純子ESG戦略部長

花王、ESG部門の大谷純子ESG戦略部長。

画像:取材時の画面をキャプチャ

日本の各家庭で発生するごみの約60%は容器包装であり、その大半が「プラスチック」だとされている。

詰め替えタイプの容器も含め、こういったプラスチックをリサイクルするのは、かなり骨が折れる。

質の高い再生プラスチックを作るには、ペットボトルリサイクルのように同じ成分のプラスチックごとに仕分ける必要がある。しかし、ゴミとして捨てられるプラスチック容器包装は、複数の種類のプラスチックフィルムを組み合わせて作られているケースが多い。また、企業や用途ごとにその設計は異なるものだ。

雑多なプラスチック包装容器を集めて再生プラスチックにしようとしても、安定した品質を確保することは難しい。

もし本当にこういったプラスチック容器包装を回収・リサイクルしようというのであれば、そもそも資源を循環させることを前提とした商品設計や、商品サイクルの見直しが必要となる。

ただし、それはいくら大企業でもたった1社だけでコントロールできることではない。

さらに言えば、雑多なプラスチック容器包装をリサイクルすることが当たり前の社会になるには、かつてボトルから「詰め替えタイプ」が主流になったように、消費者にも行動変容が求められる。それには、消費者が受け入れやすい「リサイクルの仕組み」が必要だ。

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