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- バイデン政権の予算教書には、超富裕層の財産をターゲットにした新しい税制が含まれていた。
- しかし、その多くは赤字削減を強調したものだ。
- バイデン大統領はまた、国防費の大幅な増加を求めており、これがバーニー・サンダース上院議員らによる批判を引き起こしている。
アメリカのジョー・バイデン大統領は2022年3月28日、5.8兆ドル(約716兆円)規模の予算教書を発表した。この2023会計年度(22年10月から23年9月)の予算案には、国防費と国内支出を強化する一方で、裕福なアメリカ人に新たに課税することが盛り込まれている。
今回の予算案で象徴的なのは、資産1億ドル(約123億円)以上の世帯に最低20%の所得税を課すというものだ。テスラ(Tesla)のイーロン・マスク(Elon Musk)CEOのような億万長者は、10年間で最大500億ドル(約6兆1760億円)を連邦政府に納めることになる、という試算もある。
しかし、予算の他の部分は問題の核心への一歩を示すものだった。バイデン大統領をはじめとするホワイトハウス関係者は、この日の会見の大半を費やして、この案が最終的には赤字、つまり連邦政府が支出する金額と税収の間のギャップを縮小させることになると強調した。
少なくとも、ウェストバージニア州選出のジョー・マンチン(Joe Manchin)上院議員のような中道派を取り込もうとする意図があるようだ。彼は一貫して、国家債務の削減を優先事項として挙げている。
「今日発表する予算は、我々が一番大切にしていること、つまり財政的責任について、アメリカ国民に明確なメッセージを送るものだ」と、バイデン大統領は予算案の概要を説明する会見で述べた。
「二番目には安全と安心、三番目によいアメリカを築くために必要な投資だ」
予算は価値観の表明だ。今日発表する予算は、明確なメッセージを発している。我々は、財政的責任、国内外の安全・安心、そしてよりよい米国を築き続けるために必要な投資を重視する。
また、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が在任中に経済分野で「不始末」をしでかし、赤字を膨らませたと非難した。バイデン大統領が宣伝した赤字削減の多くは、永久に続くはずのなかった連邦政府のCOVID-19援助が期限切れとなった結果だ。
中間選挙が近づくにつれ、共和党はバイデン政権を批判している。「この予算が示すのは、バイデン大統領がより多くの支出、より多くの負債、より多くの税金、そしてアメリカ国民のより多くの痛みに価値を見出しているということだ」と下院予算委員会のジェイソン・スミス(Jason Smith)共和党下院議員は声明で述べている。
それでも、専門家の中には、今回の案では約1兆5000億ドル(約185兆円)という大きな資金が赤字削減に充てられると指摘する人もいる。
超党派の「Committee for a Responsible Federal Budget(責任ある連邦予算委員会)」でシニア・ポリシーを務めるマーク・ゴールドウェイン(Marc Goldwein)はInsiderに、「2022年度より財政的に責任ある予算であることは確かだ」と語った。昨年度のホワイトハウスの予算案では、10年間で1.4兆ドル(約173兆円)も赤字が拡大することになっていた。
歳出には、国防費の大幅な増額が盛り込まれた。ホワイトハウスは2022年度から10%増となる8000億ドル(約100兆円)超の国防費を要求し、警察へも320億ドル(約3兆9700億円)の新たな支出を求めている。
バイデン政権が求める巨額の軍事費に、すでに一部の進歩的な人々は反発を始めている。バーモント州選出のバーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員は声明で、「すでに(軍事費でアメリカの次に来る)11カ国を合わせたよりも多くの軍事費を費やしている今、国防予算の大幅増は必要ない」と述べた。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)