(写真左から)ガシャポン オデッセイの発表会に登壇したバンダイの近藤創氏、ニューヨークの嶋佐和也さん、屋敷裕政さん、女優の山本美月さん、バンダイの田川大志氏。
撮影:小林優多郎
ハンドルを回して、カプセルに入ったおもちゃが出てくる「カプセルトイ」。
回した際の音から連想される「ガチャを回す」といった言葉は、スマホゲームなどで抽選をする際の俗称などにも使われている。カプセルトイを1977年から展開するバンダイは3月28日、「ガシャポン」45周年を記念して「未来のガシャポン」を披露した。
裸眼立体視のできる体験型カプセルトイ筐体
ガシャポン オデッセイが動く様子。
撮影:Business Insider Japan
未来のガシャポンこと「GASHAPON ODESSEY(ガシャポン オデッセイ)」は、高さ2.1メートル、幅2メートルの巨大な筐体を持つ。
正面には3.9平方メートル、総パネル枚数135枚のLEDディスプレイを備える。ディスプレは中央で湾曲しており、視差効果を利用した裸眼立体視を実現している。
ガシャポン オデッセイはかなり大きい筐体だ。
撮影:小林優多郎
ディスプレイの映像は、中央の巨大なハンドルを使った操作と連動する。今回のために用意されたオリジナルコンテンツ「MATERIALS of the EARTH」では、5種類のキャラクターが登場し、映像の演出で現れるキャラがカプセルに入っているという内容だ。
MATERIALS of the EARTHの場合、お金を入れてからカプセルが出てくるまでに数分間「遊ぶ」時間がある。単にハンドルを回してカプセルが出てくるというわけではなく、映像内の「扉を開ける」「物質を混ぜる」などをハンドルで操作していく体験型コンテンツとなっている。
船の「舵」をイメージしたハンドル。
撮影:小林優多郎
ガシャポンオデッセイは世界で2台だけのコンセプトモデルで、東京「ガシャポンのデパート池袋総本店」と、福岡「ガシャポンのデパートキャナルシティ博多店」に展示されている。4月28日から2023年2月28日までは実際に遊ぶこともできる(1回500×2枚=1000円)。
ガシャポンが抱える2つの課題は「知名度」と「コロナ影響」
バンダイのカプセルトイ「ガシャポン」は誕生45周年を迎えた。
撮影:小林優多郎
「1回1000円のガシャポン」と聞くと、非常に高価なものに感じる。
ただ、バンダイでガシャポンオデッセイの開発を担当した近藤創氏によると、キャラクターのデザインから連動する映像の制作、筐体の開発まで合わせたプロジェクト総制作費は「1億円以上」。
2箇所しか設置していないことからも、売り上げだけで制作費を回収しようという意図ではない。
昔ながらの筐体。呼称は人によって異なる場合も。
撮影:小林優多郎
バンダイはガシャポン事業に対して2つの課題を抱えている。
1つは知名度だ。バンダイはカプセルトイ市場でメーカー別売上で約55%のシェア(トイジャーナル調べ)を持っているが、同社商標の「ガシャポン」の知名度は全国で4%(バンダイ調べ)しかない。
これは「ガシャガシャ」「ガチャ」など……他社商標も含めさまざまな言葉があることが原因だが、バンダイは45周年を機に一気に定着させたい狙いがある。
最新の商品はクオリティーも上がっている。
撮影:小林優多郎
2つめはコロナの影響による需要の変化だ。人々の外出が減ることによってカプセルトイを遊ぶ機会も減っている。さらに、観光地などでカプセルトイをお土産代わりに買っていた訪日外国人の需要も激減した。
バンダイ執行役員でベンダー事業部ゼネラルマネージャーの田川大志氏は、ここ2年ほどは「厳しい状況が続いている」とするが、「カプセルトイ市場は拡大を続けている」と前向きな考えを示している。
カプセルトイと言えば「キンケシ」という人も多いのではないか。
撮影:小林優多郎
その根拠となるのが、ニーズの多様化だ。カプセルから出てくる商品自体も、「キンケシ」(キン肉マン消しゴム)のようなシンプルなものから、腕などの一部の部位を動かせるフィギュアのようなものまで増えている。
また、カプセルに入る商品だけではなく、色紙やクリアファイルといった厚さ1センチ・A4サイズまでの商品を出せる「フラットガシャポン」も2月に登場。ホビー向けに加え、企業のPR用途などにも活用の幅を広げようとしている。
2021年11月時点で、55万台あると言われるカプセルトイの販売機(トイジャーナル調べ)だが、さまざまなニーズに応える形で、今後も拡大していく可能性がある。
(文、撮影・小林優多郎 動画・山﨑拓実)