国内宇宙ベンチャーが119億円の大型資金調達。損保ジャパン、ジャフコら大手投資会社から

Synspectiveが開発する、SAR衛星のイメージ。

Synspectiveが開発する、SAR衛星のイメージ。

画像:Synspective

宇宙ベンチャーSynspectiveは、3月29日、シリーズBラウンドによる第三者割当増資と融資により、119億円の資金調達を実施したことを発表した。

引受先となったのは、損害保険ジャパン、野村スパークス・インベストメント、シンガポールのPavilion Capital Pte. Ltd.など15社と2金融機関。Synspectiveの累計調達金額はこれで228億円になった。

なお、損保ジャパンとSynspectiveは、2022年1月から業務提携を開始しており、衛星データを活用した減災・防災に関する取り組みを進めている。今後、宇宙活動におけるリスクを対象とした保険商品の開発や、衛星データを活用した新しい保険商品の開発なども検討しているという。

地上を見通す「SAR衛星」

SAR衛星

画像:Synspective

Synspectiveは、衛星データを活用したサービスや、小型の「SAR衛星」と呼ばれるタイプの衛星の開発・運用を進める2018年に設立されたベンチャーだ。衛星データを用いて広域の地盤変動を解析するサービスや、災害対応のための浸水被害(浸水域、浸水深、被害道路、被害建物)評価サービスを展開している。

Synspectiveの広報は、今回調達した資金の用途について、

「主に小型SAR衛星の開発・製造・打上げ・運用や量産施設の準備、衛星データソリューションの開発とグローバル展開等に使用します」

と回答した。

Synspectiveが開発・運用する「SAR衛星」は、マイクロ波を用いて地上を観測する衛星。一般的なカメラのように可視光線を捉える衛星では、雲などの天候条件によって地上が見えなくなってしまうことがある。マイクロ波を用いることで、天候に左右されずに地上を見通すことができる点が特徴だ。

国内では、Synspectiveのほかにも、九州大学発ベンチャーのQPS研究所などがSAR衛星を開発している。

Synspectiveの広報は、自社のSAR衛星の特徴を次のように説明する。

「弊社の小型SAR衛星『StriX』の特徴は、重量が従来の大型SAR衛星の約1/10である100キログラム級で、コスト面では開発と打上げ費用を合わせ、大型SAR衛星と比較し約1/20を実現しています。これにより、大型SAR衛星と同等に近い性能を維持したまま、小型・軽量による低価格化をはかることで多数機生産が可能となります」(Synspective広報)

Synspectiveでは、小型のSAR衛星を無数に打ち上げる「コンステレーション」を構築することで、広い範囲をいつでも観測することを狙っている。

2022年2月現在、軌道に導入が完了している実証衛星は2機。

Synspective広報は、

「今後、2022年中に商用試作機『StriX-1(ストリクス・ワン)』、2023年末までには合計6機を軌道上へ打ち上げ、2026年前後には30機のコンステレーションを構築することで、広範囲、高頻度の地上観測を可能にするシステムの構築・運用を目指します」

と今後の予定を語った。

Synspectiveの新井元行CEOは、今回の資金調達に対して

「当社はSAR衛星30機からなるコンステレーション構築とそのデータ解析技術をより一層加速させ、持続可能な未来にむけて『学習する世界』の実現にまい進します」

とコメントを寄せている。

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