写真左からMac mini(2018)とMac Studio。
撮影:小林優多郎
3年超ぶりにPCを新調した。今回購入したのは今まで使っていた「Mac mini」……ではなく、3月18日に発売されたばかりの「Mac Studio」だ。
結論から言えば、この買い物は大正解だった。想定していた予算より幾分高い買い物になったが、今できるベストな買い物をしたという感触がある。
Mac miniからMac Studioに乗り換えた理由や、「いい買い物」と感じるに至った現実的なベンチマーク結果などをレポートする。
約3年前のMac miniでは動画の処理が重荷に
設置面積自体は変わらないMac miniとMac Studio。
撮影:小林優多郎
自分が2022年3月下旬まで使っていたのは、「Mac mini(Late 2018)」だ。
購入したのは2018年12月、スペックはCPUがインテル製の「Core i5-8500B(3GHz)」、メモリー32GB、1TB SSD。決して最高スペックと言える構成ではないが、当時のレシートを確認したら27万5184円(税込、Apple Care+なし)だった。
当時この仕様を選んだ理由は、Photoshopを快適に使いたかったから。転職してフルサイズのミラーレフ一眼を購入し、RAW撮影にも慣れないとな、という矢先のMac mini購入だった。
当時は、「最上位のCore i7でなくてもいいかな、動画なんて編集しないし」という気持ちだった。だが、2020年のパンデミック発生以降、イベントや取材動画などを扱い始めて、性能の限界を感じ始めた。
上からmini、Studio。冷却のためのファンで高さをとっているのがわかる。
撮影:小林優多郎
そこで新しいPCを探し始めた。必要なのは普段の記事の執筆も、RAW写真の現像も動画編集も快適にできるもの。普段使っている4Kディスプレイも使い続けたい。
当然、2020年11月発売のM1搭載miniも検討したが、メモリーが最大16GBまでに搭載されているのがネックだった。2021年10月発売の「MacBook Pro」の方がスペックには合っていたが、高性能なディスプレイ分の料金がもったいなかった。
そこで、ようやく待って購入したのがMac Studioだ。選んだ仕様は「Apple M1 Max」(10コアCPU、24コアGPU)、32GBメモリー、1TB SSDの構成。
話題の「Apple M1 Ultra」にしなかった理由は、予算の関係から。価格は27万1800円。 構成の基準は前回のMac mini購入価格と合わせた格好だ。
「高速化」は写真は2倍以上、動画は13倍
実際に性能比較してみよう。
まずは定番ベンチマークアプリ「GeekBench 5」と、CPUを活用したCG生成に関するベンチマーク「Cinebench R23」だ。
前出のMac mini(Late 2018)とM1 Max搭載Mac Studioに加え、西田宗千佳氏による本誌寄稿記事から引用したM1 Ultra搭載のMac Studio、M1 Pro搭載のMacBook Pro 14のスコアーも参考として掲載する。
GeekBench 5の実行結果。
作成:Business Insider Japan
Cinebench R23の実行結果。
作成:Business Insider Japan
この結果を見ると、どちらのベンチマークでのマルチコアの値では、M1 Ultraの「ウルトラ」な性能は見てとれる。一方で、シングルコアの値ではApple M1シリーズの値はほぼ横並びだ。
肝心のMac mini(Late 2018)と比べると、搭載されているCore i5-8500Bが現在の最新より4世代分も前のチップなだけあり、M1 Max搭載Mac Studioと比べても約2.6倍もの差が開いている。
実際、OSやアプリの立ち上げなど、基本的な操作が非常に快適になったのは言うまでもない。
Lightroom。ソースとなるRAW画像はMac内のSSDに保存している。
画像:筆者によるスクリーンショット
では、続いては写真の現像テストだ。
Mac mini(Late 2018)とM1 Max搭載Mac Studioで、ソニーのミラーレス一眼「α7III」で撮影した6000×4000ドットのRAW画像100枚の現像にかかる時間を比べた。
使用したのは「Adobe Photoshop Lightroom」のバージョン5.2(執筆時点の最新安定版)。無編集の状態で長辺2000pxのJPEG画像に書き出す時間と、露光量とシャドーの値を変更してから長辺2000pxに書き出す時間を比べた。
- Mac mini(Late 2018):編集なし・2分21秒、編集あり・3分55秒
- Mac Studio:編集なし・56秒、編集あり・1分39秒
すると、非常に大きな変化があった。編集なしでは2.5倍、編集ありでは2.3倍のスピードアップとなった。
筆者の仕事の範囲で、100枚のRAW画像を一気に書き出すことはあまりない。多くても1記事20枚ほどだが、数十秒ほどで書き出せるのはかなりの驚きだ。
Premiere Proで短編、長編動画をそれぞれ書き出し。
撮影:小林優多郎
最後に、本題の動画の処理スピードだ。ミラーレス一眼やスマホで4K解像度で撮影して約2分にまとめた記事むけの動画と、イベント向けに「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」3台で撮影した4K画質のBRAW動画にマルチカメラ編集をした1時間弱の動画の書き出し(エンコード)スピードを比較した。
使用したのは「Adobe Premiere Pro」のバージョン22.20(執筆時点の最新安定版)で、書き出し画質に設定。いずれの場合も、プロキシーの利用などはしていない。
- Mac mini(Late 2018):取材動画・6分35秒、イベント動画・推定6時間超
- Mac Studio:取材動画・30秒、イベント動画・32分39秒
この結果はかなり満足度の高いものだ。高い頻度でアップしている取材動画の書き出しスピードが約13倍になったことはかなりの効率化になる。
イベント動画に関しては、Mac mini(Late 2018)では6時間超の書き出し予測時間が表示され、過去には高頻度で書き出しエラーが発生したため、今回は測定を断念した。
一方でMac Studioで同様の設定、同様のソースとプロジェクトファイルで書き出したところ32分39秒……ちょっと席を離れて家事をしている間に終わるという結果には、感動すら覚える。
Mac mini(2018)で表示された残り時間。こう表示されたら、もう絶望しかない。
画像:筆者によるスクリーンショット
なお、これらの結果は単にCPU/GPU性能の違いだけではない。同じ容量であっても、メモリーの規格も違い、以下の値のようにストレージであるSSDの読み書きスピード(Blackmagic Disk Speed Test結果)も大きく影響している。
- Mac mini(Late 2018):書き込み2454.5MB/s、読み込み2621.9MB/s
- Max Studio:書き込み5285.5MB/s、読み込み5318.7MB/s
自分にとってはminiの正統進化だったMac Studio
Mac Studio開封時の様子。恒例のアップルシールは黒だった。
撮影:小林優多郎
正直、誤算だったのは価格面だ。当初はMac miniからMac miniへの買い替えを検討していただけに、予算は「出せても22、23万円」、理想は「M1 Proを搭載したMac mini」だった。
しかし、Mac Studioは最小構成でもM1 Max搭載で、直販価格24万9800円(税込)。ストレージ容量も増やすため、注文時にはやや躊躇した。
ただ、このMac Studioと同様のスペックを、仮に14インチMacBook Proで実現すると、直販価格36万5800円もする、という事実もある。
正面にUSB Type-C端子2基、SDカードスロットが追加されたのも非常にうれしい。
撮影:小林優多郎
Mac Studioには当然ディスプレイもキーボードもタッチパッドもない。MacBook Proは外出先で動画編集のような負荷の高い作業をこなせるマシンだ。
けれど、当初の想定通り現状の周辺機器をそのまま使い回せて、11万6000円も「浮く」し、筆者の場合は外より家で落ち着いて作業がしたい。
前述のような具体的なデータにも表れているように、予算はややオーバーしたが買い替えた満足度は非常に高い。
筆者のように「高性能なMac miniを待っていた」という人は(特定のソフトやプラグインが動かない場合などを除いて)、Mac StudioのM1 Maxモデルは悪くない選択肢だと思う。
3月のアップル発表会の解説動画はこちらから
撮影:山﨑拓実
(文、撮影・小林優多郎)