電気料金を最大4割削減する、エネクラウド。その根にあるのは電気契約の「不」の解消

企業の固定費の中でも存在感が大きいのがエネルギーコストだ。一般に企業向けの電気代は個別に契約内容を決める相対契約で、自社の電気料金が適切なのか分からない仕組みとなっている。電力自由化によって契約する電力会社は選べるようになったが、実は他社よりも割高な電気料金を支払っている——なんていうこともあるのだ。

この仕組みにメスを入れ、電気料金を最適化し、コスト削減を実現するのが中小企業向けに電気に関するコンサルティングを行う「エネクラウド」だ。中小企業のエネルギーコストをどう最適化するのか。そのビジネスモデルと目指している世界について、田嶋義輝社長に聞いた。

(聞き手:Business Insider Japan編集長 伊藤有)

電気契約にあるさまざまな“不”を解決する

電気契約にあるさまざまな”不”を解決する

Image: Blue Planet Studio/Shutterstock

——企業が契約する電気代は「相対契約」で場合によっては割高な場合があるということですが、エネクラウドはなぜ電気料金の削減に注目したのでしょうか。

田嶋義輝社長(以下、田嶋):元々は電力自由化に合わせて、小売電気事業をやろうとしていました。そのサービスを作ろうとして、色々な企業様から電気料金の明細を見せていただいたところ、もう千差万別で全く同じものがありませんでした。

田嶋義輝(たじま・よしてる)氏

田嶋義輝(たじま・よしてる)氏/エネクラウド 代表取締役社長。1981年神奈川県生まれ。獨協大学卒業。大手上場企業に入社し、2019年に現在のエネクラウドの前身である日本電気サービスで代表に就任。同社にて電気削減クラウド(旧:電気料金削減サービス)を提供開始。同じくしてフルキャストホールディングスの出資により同グループへ参入し、事業を拡大。

特に、法人向けの「高圧・特別高圧」の電気契約はブラックボックスで、サービスを提供しようとしてもどこに金額を設定すればいいのか見えない。その問題に気づいたことが「電気削減クラウド」をスタートしたきっかけです。

多くの中小企業には自分たちが支払っている電気料金が最適なのか分からないという「“不”明」があります。もしかしたら、競合の電気料金はもっと安いのかもしれません。自社の電気料金が適切かどうかを明確にして、削減のお手伝いをするのが「電気削減クラウド」です。

——企業の電気代を削減できる仕組みということですね。まずはビジネスモデル、最適化の仕組みについて教えて下さい。

田嶋:我々はさまざまな企業の電気料金の明細情報を持っていて、どういった電気の使い方をしていればどの程度安くなるか、という知見があります。

まずは現在の明細をもとに、解析ツールを使ってシミュレーションを行います。ここで削減できると判断できたら、弊社が用意する電力会社向けの入札プラットフォーム「エネビッド」を活用し、最適な電力会社への切り替えをサポートしています。これまでにお申し込みいただいた企業の84.9%が電気料金の削減に成功しており、最大4割の電気料金を削減したケースもあります。

電気料金の範囲

——そもそもなぜ、企業によって電気料金が違うのでしょうか。規模の大きさや交渉の仕方などにノウハウがあるということですか。

田嶋:まず、電気の使用量や時間帯別の電気の使い方によって電力会社の原価が変わってくるため、企業に提示する金額のベースが異なるものになると考えています。相対的に企業規模が大きい方が契約内容で好条件になっていることが多いです。

また、最終的な価格決定の段階で各社毎の交渉が入り、契約内容に大きな乖離が生まれます。例えば大手企業で、毎年、総務主催でコスト削減プロジェクトを掲げて専任者が取り組んでいるところがあります。各電力会社に毎年切り替えを打診して、交渉しているような企業は、電気料金がかなり低水準になっているようです。ただ、これを中小企業が行うのは難しいでしょう。電力会社にただ「安くしてくれ」と言っても簡単には下がりませんので、私たちが具体的な手順と方法を示して電気料金の削減を支援します。

——「電気削減クラウド」の料金体系が成果報酬型で作られているのは、電気料金の下げ幅が企業によって違うからですか。

田嶋:それもありますが、日本企業はほとんどが中小企業ですのでお客様の負担なく、コスト削減の手助けができればと思っています。そのため、電気料金がきちんと下がったときにのみ、その下がった中からお支払い頂くことにしています。そうすることで中小企業の方々の本業に支障のないところできちんとコスト削減できます

電気削減クラウド

他にはない強みは「6万件の電気料金明細のデータベース」

——電気料金を削減する「電気削減クラウド」を実現するに当たり、人材派遣会社のフルキャストと提携して企業の電気料金の明細を集めたと伺っています。具体的にどの程度の数を集めたのでしょうか。

田嶋:フルキャストグループに加入したのが、この事業をスタートした約3年前で、実際に動き出してから数カ月で約4万件の明細を集めました。おかげでサービスのスタート直後から一気に事業を立ち上げることができました。現在は製造業など電気を多く使う企業を中心に約6万2000件の明細を所有しています。

——このビジネスモデルが行けそうだという手応えは、いつ頃からあったのでしょうか。

田嶋:フルキャストと組んで明細書を一斉に集める前段階で、数百件の明細がありました。それらを見たときに電気料金を削減する取り組み、交渉の支援というビジネスモデルは必ず成功すると確信に近いものがありました。その後、明細が集まっていく中で確信に変わっていった感じですね。

——電気代を削減するのが難しい業種や傾向、企業規模などの条件はあるのでしょうか。

田嶋:業種や企業規模による制約は特にありません。削減のパターンは大きく2つに分かれると思っております。比較的安定的に多くの電力を使う企業の場合は、大手電力会社が安くなる傾向にあります。理由はシンプルで電源の構成です。大規模火力発電所などで発電していますので細かなコントロールは利きません。きちんと安定的に電気を使う企業に対するニーズが高く、安くなりやすいと解釈しています。

一方で最近増えている新電力の場合、JEPX(日本卸電力取引所)での電力調達依存度が高いため、電力量料金部分での粗利は非常に少なく、基本料金部分で収益源を確保しなければなりません。そのため、新電力で安くなる企業の傾向として、日中のコアタイムに瞬間的に多くの電気を使って、それ以外の時間はそこまで使わないというケースが挙げられます。

つまり、同じビジネスモデルであっても電力会社によって原価構造が大きく異なるため企業ごとに最適な電力会社が異なるという結論です。

どちらにしても、「電気削減クラウド」は、成果報酬型なので、電気代を安くしたい場合、相談していただければと思います。お客様にあったところを我々の方で精査して提示します。

——昨年、新電力と契約した一般家庭の電気代が高騰したことがありました。そういうトラブル・リスクはないのでしょうか。

田嶋:最近問題になっているのが市場連動型プランで契約しているケースです。この場合は仕組み上、JEPXの電気卸価格が高騰すると電気料金が上がってしまいます。その状況は個人に限らず法人も同じような状況です。ただ、当然、我々はこういった状況やリスクを踏まえて最適な提案をします。ご相談頂ければ、その都度どのような手を打てるのかサポートしますし、仮に電気代が上がってしまって我々にサービス利用料を払うとマイナスになるというような場合には、その期間は利用料を請求しません。

——昨今の世界情勢を見ると、電気料金、エネルギーコストの上昇トレンドは避けられない状況です。その上げ幅を抑えることもできるのでしょうか。

田嶋:現在の上昇トレンドの要因に戦争の影響が含まれるため、短期的かつ的確に読み取るのは困難です。LNGの価格高騰の影響は大きいと思います。

しかし、我々とお客様は5年契約を基本にしています。当然その間にあらゆる情報収集を行い、適切なタイミングで各企業を全力でサポートしながらその都度一緒にベストな選択をしていきます。

電気に関する何かがあったら、エネクラウドに連絡する、というのを各企業に浸透させることができたらいいなと思いますね。

「電気」に関わる全てをトータルでマネジメントする

田嶋義輝(たじま・よしてる)氏

——電気に関して、何を改善すればいいか、提案していくというのはコンサルティングに近いと思うのですが、そういったソリューションも提供されていますか。

田嶋:これから「電気管理クラウド」というサービスをリリース予定です。電気を見える化した上で最適化するための仕組みで、いわばオール電化の家庭などにあるEMS(エネルギー・マネジメント・システム)を企業向けに提供することで電気の使用状況を一元管理でき、当社のコンサルタントが最適化するためのコンサルティングを継続的に行うことで確実な省エネに繋げています。

EMS機器自体は世の中にたくさんあるのですが、導入コストが非常に高い。安い機器でも、200万円から1000万円くらい、大規模な工場向けだと1500万円程度から高いと1億円ほどかかります。

我々は、これを中小企業の方でも導入しやすいような価格設定にします。また、サービスもクラウド化することで、常に全てのお客様に最新の状態で提供していきます。これは近日中にローンチしますので、電気料金を今よりも削減したい企業にご検討いただければと思います。

——最後に中長期的な事業戦略を教えてください。

田嶋:我々が掲げているのは中小企業を主体としたAEMS(エリア・エネルギー・マネジメント・システム)を強力にサポートできるような体制を作ることです。アグリゲーターと呼ばれており、電気の調整市場で重要な役割を果たしていくといわれている事業です。

電気を効率的に使うためには、発電した量と使う量が瞬時に100%になる「同時同量」が理想です。それを補完するためにソーラーパネルと蓄電池を使って、発電した電気を溜めて求められる時間に使えるようにコントロールします。このコントロールを行うのがアグリゲーターです。例えば、電力が逼迫しているときに、私たちの方で各企業に導入されているソーラーパネルでの自家消費のボリュームが増やしたり蓄電池を使ったりと調整できればエリア全体の電気の最適化を実現できます。

我々はコンサルティングによって企業の中に入り、「電気管理クラウド」により電気の使い方を個別具体的に把握できますので、ボトムアップで電力の効率的な運用をするための情報を蓄積していくことが可能です。

そのためにも中小企業にも大企業と全く遜色ない設備を、導入コストを極力抑えた状態で提供できるようにしていきたい。その結果として得られる、限りなく100%に近い電気に関するデータベースを元にして日本中の電気を最大限有効活用していきたいですね。


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