就活セクハラをなくすため、国が新たな対策に乗り出す。就活生は労働法制で保護されておらず、その隙をついた悪質な事案が未だ絶えないからだ。
オンラインで就活セクハラ対策講座
未だ被害が絶えない就活セクハラに関して、国が新たな対策を打ち出した。
撮影:今村拓馬
就職活動中の学生を狙ったパワハラやセクハラなどのハラスメントに対し、厚生労働省は新たな対策を発表した。
その1つが大学生に対する出前講座だ。就活生は雇用関係にないため、労働法制で保護されていない。しかしセクハラは男女雇用機会均等法、パワハラは労働施策総合推進法、それぞれの指針で、企業が取ることが「望ましい取り組み」として対策が求められている。
たとえばOB・OG訪問では学生と接する際のルールを定め、被害の防止に努めることなどだ。
出前講座ではこうした法令のポイントに加え、各都道府県の労働局など被害を相談できる窓口を案内。就活中に学生がハラスメント被害にあわないため、またもし被害にあった場合にどうすればよいかを説明する。
講師を務めるのは厚生労働省の担当者だ。対面はもちろん、オンラインでも対応する。希望する大学は同省の雇用環境・均等局の雇用機会均等課まで、ぜひ問い合わせて欲しい。
ハラスメント起こす企業への行政指導も強化
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厚生労働省では、これら出前講座を受講した学生を対象に調査も行う。就活セクハラなどの被害にあった学生で、本人の同意が得られた場合に限り、非公表でヒアリングを実施。聞き取った内容は今後の施策などにいかしていくという。
また、かねてより労働局と地元の大学が連携して労働法制を学ぶ講座を学生向けに行っていたが、そこでも就活セクハラに特化した解説を行っていくという。
加えて、就活セクハラを起こした企業に対する行政指導も徹底していく。厚生労働省の担当者は言う。
「就活セクハラは未だに悪質な事案が見受けられます。就活生へのセクハラがメディアで報じられた企業や、労働局に学生から相談があった企業などを対象に、行政指導をより徹底していきます」
2021年に厚生労働省が公表した調査では、4人に1人の学生が就活セクハラの被害にあっていた。国も対策を進めているが、就活生が労働法で保護されていない現状の見直しに向けても、もう一歩、踏み込んだ議論が必要だろう。
(文・竹下郁子)