作成:Business Insider Japan
「進む、脱プラスチック」特集として、アパレル業界で進む脱プラの取り組みを追う2本目はユニクロを展開するファーストリテイリングだ。同社は4月1日から施行されるプラ新法に関するアクションとして、
「弊社では、お客様へ商品をお届けする過程で使用する資材の削減・切り替え・再利用・リサイクルを通して、早期に『廃棄物ゼロ』を実現する目標を掲げています。
すでにプラスチック製の梱包材を分別、回収し、リサイクル処理するための実証実験を一部のエリアで開始しており、こうした資源の循環利用を促進・後押しするものと考えています」(ファーストリテイリング広報)
としている。
直近の脱プラに関するユニクロの取り組みと、その目線の先に見えるものとは?
ユニクロは「RE.UNIQLO」で回収PETでつくる再生ポリエステルを展開
2021年9月にリニューアルオープンした「ユニクロ銀座」。初のカフェ併設店舗になっている。
撮影:小林優多郎
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」—— これがファーストリテイリングのステートメントだ。「服のチカラを、社会のチカラに」をスローガンに、服のビジネスを通じて、世界をよい良い方向へ変えるための活動に取り組む。「無駄なものはつくらない、運ばない、売らない」仕組みをも追求している。
2021年12月にはコンセプトである「LifeWear」のあり方を問い直し、サステナビリティ発表会において、創業家の柳井康治取締役が「衣食住の“衣”において、持続可能な社会に貢献する新しい産業革命を起こす」という新ビジョンと新たな事業モデルを打ち出した。
2021年12月の「LifeWear=サステナビリティ」説明会で示された概念図。
出典:ファーストリテイリング
新たな事業モデルとして提示するバタフライ型の概念図(上)では、「『サステナビリティ・持続可能な社会への貢献』と『ビジネスの成長』を両立するモデル」として、顧客を中心に置く。
左側には新たな服を生み出しながらサプライチェーンを持続可能なものとしていくサイクル、右側では新たに「販売後の服のあり方」にフォーカスし、回収・分別して「リユースする」「再び服にリサイクルする」「資源としてリサイクルする」としている。
柳井取締役はこの概念図を提示して、「LifeWearを活かし続け、『地球規模で価値を循環させる』バリューチェーンの構築を目指す」と説明した。長く安心してLifeWearを着続け、最後は捨てずにリサイクルする循環型社会の実現を目指す。
2021年12月2日に「LifeWear=サステナビリティ」説明会を東京都内で開催。柳井康治ファーストリテイリング取締役(左から4人目)が、持続可能性と事業の成長を両立する新ビジネスモデルへの転換と、2050年のカーボンニュートラル実現を宣言。温室効果ガス排出量の90%削減(2019年度比)など2030年度の目標も発表した。
撮影:松下久美
さらに、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロの「カーボンニュートラル」を目指すことも明言している。削減目標はさまざまあるが、スコープ3(事業者の活動に関連する他社の排出)のサプライチェーンでは、ユニクロ、ジーユーの商品の原材料、素材生産、縫製で20%削減を目標に掲げている。あわせて、原材料の50%をリサイクル素材などへと切り替える。
この目標が、2015年に国連気候変動枠組条約として策定された「パリ協定」に準じて「世界の気温上昇を産業革命前より2度を十分下回る水準に抑え、また、1.5度に抑えることを目指す」ための科学的な根拠に基づくものであるとして、2021年9月に国際機関SBTイニシアティブによる「SBT(Science-Based Targets)」認定を取得している。
ファーストリテイリングでは、古着回収として16年前(2006年)から「全商品リサイクル活動」を行ってきたが、これを2020年から「RE.UNIQLO」へと活動をアップグレード。服のリユースに加え、「服から服へのリサイクル」にも着手した。
ここでは、まずはリユースでそのまま活用するものと、リサイクルで新たに生まれ変わらせるものとに仕分ける。リユースでは、季節、男女、サイズ、気候、文化、宗教など、届け先のニーズにきめ細かく対応できるよう18種類に分類し、難民や被災者などに提供する。
リサイクルダウンの取り組みについて綾瀬はるかさんが開設する公式コンテンツも。
ユニクロ公式チャンネル
一方、リサイクルでは「服から服へのリサイクルの第1弾」として、ダウンジャケットを店頭で回収し、ダウンとフェザーを100%再利用したリサイクルダウンジャケットを販売している。表生地には再生ポリエステルを使用し、リサイクルできない素材の場合、自動車の防音材や、CO2 削減に貢献する代替燃料などへの加工を行っている。
ユニクロの「脱プラ」取り組み
ファーストリテイリングは、肝心の脱プラスチックにおいても、マイクロプラスチックへの取り組みとして国際NPO「マイクロファイバーコンソーシアム」が提唱するマイクロファイバーによる自然環境への影響を最小化する国際的取り組み(Microfibre 2030 Commitment)にも署名している。
使い捨てプラスチック使用削減に向けたグループ方針として、2019年7月に「サプライチェーン全体で不要な使い捨てプラスチックを原則として撤廃、使わざるを得ないものについては環境配慮型素材に切り替える」というグループ方針も策定している。
ショッパー(買い物袋)と商品パッケージは、2019年から素材使用量の削減や環境配慮型素材への切り替えに着手している。約85%に当たる約7800トン分の廃止・切り替えを達成した。
ユニクロの高機能速乾ウェア「ドライEX」は、再生ペットボトルからつくられている。素材を循環させるマテリアルリサイクルではないものの、リサイクル素材から新しい価値を生み出す取り組みと言える。
撮影:松下久美
商品面での最大の取り組みは、循環型社会の実現の一環として資源を有効活用するため、回収ペットボトルからできた再生ポリエステルを使ったアイテムを開発・販売することだ。
戦略的パートナーである東レと組み、2019年から再生ポリエステルを一部に使用した高機能速乾ウエア「ドライEX」のポロシャツを発売した。再生ポリエステルの使用比率は当初の32~75%から、40~80%へと向上させている。
2020年秋冬には生地の30%に再生ポリを使用した「ファーリーフリースフルジップジャケット」と「ファーリーフリースプルオーバー」を発売するなど、アイテムを拡大している。
このポロシャツは、グローバルブランドアンバサダーでプロテニスプレーヤーの錦織圭選手やロジャー・フェデラー選手、車いすテニスの国枝慎吾選手らが試合でも実際に着用。東京オリンピック・北京オリンピックでスウェーデンチームに提供したユニフォームにも採用されるなど、強度の問題もクリアしている。
2020年春夏シーズンには、500mlペットボトル約4800万本分を再資源化した。再生されたポリエステルチップを使うことで、原油を使った場合に比べてCO2排出量を3分の1に削減しているという。
これらにより、ユニクロでは2022年春夏シーズン商品で、全ポリエステル素材の約15%が回収ペットボトルから再生されたリサイクル素材に切り替え済みだ。
今後も、レーヨン、ナイロンなど化学繊維から段階的に低環境負荷素材の導入を拡大していく。2030年度までに全使用素材の約50%をリサイクル素材などに切り替え、循環型社会の実現を加速する。
(文・松下久美)
松下久美:ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表。「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。2017年に独立。著書に『ユニクロ進化論』。