ミレニアル・Z世代の職業観は、上の世代とは大きく違う。
Luis Alvarez
従業員より経営者のほうが力を持っていたのは過去の話。昨今の労働環境では、この力関係は変わった。
人材派遣のランスタッドが行った最新のワークモニター調査によれば、今や労働環境ではZ世代やミレニアル世代のほうが優位に立っており、企業は労働者のニーズを再考せざるをえなくなっていることうかがえる。
世界34地域の労働者3万5000人を対象に行われたこの調査では、若い世代のおよそ2人に1人が「満足できない職にとどまるくらいなら無職でいたほうがよい」と考えていることが明らかになった。
ミレニアル・Z世代は、キャリアより幸せを優先し、使命感を持って働ける仕事を重視している。Z世代の56%、ミレニアル世代の55%にものぼる若者たちが「私生活が犠牲になるような仕事なら辞める」と回答し、彼らの半数近くが「社会問題・環境問題に対する考えが自分と合わない企業には就職しない」と答えている。
若い世代は自分の価値観を犠牲にしない
この結果を見れば、なぜ求職者が優位に立ち、企業が若い人材の採用で苦戦しているのか納得がいく。「企業もこの調査結果を見れば目が覚めるだろう。働き手の優先順位が変わるなかで、力関係も明らかに変化している」と、ランスタッドのグローバルCEO、サンダー・ヴァント・ノールデンデ(Sander van 't Noordende)は声明の中で述べている。
今回の調査では、全回答者の70%が転職の機会に対して前向きであることも明らかになった。このうち、Z世代の32%、ミレニアル世代の28%は実際に求職中と回答している。彼らの49%は解雇または辞職をしてもすぐに新しい仕事が見つかると考と答えていることから、若い世代は転職にあまり不安を抱いていないことが伺える。
ノールデンデは言う。「若い人は仕事に打ち込みたいと思っています。だからこそ、彼らは求職の際、自分の価値観の面で妥協はできないなと強く思うわけです」
働き手の要求に応えないかぎり他社に奪われてしまう——企業は今、ますます危機感を強めている。
企業は損な役回り
労働市場で若い世代が優位に立っている今、企業は人材獲得の方法をどう見直せばよいのだろうか。この点はまさに経営者にかかっている。「企業は人材の獲得と維持のアプローチを再考する必要があります。さもなければ熾烈な競争に直面することになるでしょう」とノールデンデは語る。
柔軟な働き方、ヘルスケアのサポート制度、専門能力開発といった福利厚生を用意するのも一つの方法だろう。今回の調査では、回答者の22%がヘルスケアサポートや年金など受けられる福利厚生が増えたと答え、専門能力訓練が以前より充実したとの回答も25%あった。
また、「どこからでも仕事できることが重要」と回答した人が71%にのぼる一方、現在の仕事ではそのような柔軟性はないと感じている人が53%いた。パンデミック後のニューノーマルのあり方をめぐっては世界中で模索が続いているが、コロナ禍でリモートワークを強いられた働き手の大多数が、引き続き自宅で仕事したいと考えていることが分かる。
企業の間では従業員をオフィス勤務へ戻す動きが増えており、今後も柔軟な働き方をしたいという働き手の希望がないがしろにされるケースもある。
またこの調査では、若い世代の大多数が自分と価値観が合致する企業で働きたいと思っていることも示された。Z世代やミレニアル世代の5人に2人が「社会的に意義のある貢献ができるなら給与が下がってもかまわない」と回答していることからも、このことが応募職種にも影響を及ぼしていることが見てとれる。
ダイバーシティとインクルージョンも若い世代の間では関心の高い事柄のようだ。Z世代では49%、ミレニアル世代でも46%が「この分野に注力していない企業では働きたくない」と回答している。
今回の調査は、企業と働き手の間で新たに起きているこうした力関係の変化に経営者がどう対処するかを問う結果となったが、確かに言える点がひとつある。それは、若い世代は自らの選択肢をオープンに保ち、自分のニーズが満たされなければ仕事を辞めることも意に介さないということだ。
(編集・常盤亜由子)