新会社パナソニックコネクト「高すぎる買収」懸念打ち消す成長戦略とは? マイクロソフトの事業モデルを意識

Panasonic Connect Blue Yonder Strategy 2022

リカーリング(継続課金)ビジネスに転換し、復活したマイクロソフトのようにパナソニックが成長できるかは、パナソニックコネクトの今後にかかっている。左から、パナソニックコネクトの原田秀昭上席副社長、樋口泰行社長、榊原彰常務。

画像提供:パナソニックコネクト

「電気やガス、水道のように、月額課金で蛇口をひねったらソフトを使えるというクラウドベース(のサービス)の顧客基盤を早くつくり上げる。それが経営の安定化をもたらす。戦い方という意味で、マイクロソフトのAzureやOffice365(現在はMicrosoft 365)のビジネスモデルを意識している」

4月4日、企業向けシステム大手「パナソニックコネクト」が開催した発足会見で、樋口泰行社長は成長戦略のカギとなるビジネスモデルについてこう語った。

パナソニックは4月1日、持ち株会社パナソニックホールディングスに移行。それにともない、パナソニックグループの旧コネクティッドソリューションズの事業を引き継ぐ形で発足したのがパナソニックコネクトだ。

ハードだけではジリ貧になる

パナソニックコネクトは今回、競争力強化戦略として、成長事業、コア事業の2軸で企業価値の向上を目指す方針を打ち出している。

うち、経営資源を集中投下する成長事業と位置づけたのがソフトウェアベース事業。その核となるのが、8600億円超の大型買収で話題となったアメリカのサプライチェーン・ソフトウェア大手、Blue Yonder(ブルーヨンダー)のソリューションだ。

Panasonic Connect Blue Yonder Strategy 2022

【図1】成長事業のサプライチェーン領域おけるビジネスイメージ。ブルーヨンダーだけでなく、パナソニックとのシナジー創出も重視。

出所:パナソニックコネクト発表資料

ブルーヨンダーは、機械学習を駆使し、部品製造から輸送、販売まで、製品のサプライチェーン全般を管理・最適化するクラウド型ソフトウェア(SaaS)を欧米の約3000社に提供している。

導入例として、コカ・コーラ、DHL、メルセデス・ベンツ、ユニリーバ、スターバックス、ウォルマートなど、そうそうたる企業が名を連ねている

Panasonic Connect Blue Yonder Strategy 2022

【図2】ブルーヨンダーの概要。96%というSaaS顧客維持率について、樋口社長は「解約率が低いという大変盤石なビジネスモデル。買収価格は高かったが、この収益エンジンによって経営の安定性が非常に高まる」と語った。

出所:パナソニックコネクト発表資料

パナソニックは2020年7月にブルーヨンダーの株式を20%、2021年9月には残りの80%も取得。株式取得総額は78.9億ドル(約8633億円)に上った。

この買収を巡ってはパナソニック経営陣の中でも慎重論があり、また過去に行ったアメリカの映画大手MCAやプラズマテレビといった大型買収・投資の失敗が繰り返されるのではないかと懸念する市場関係者の声もあった。

そうした声を跳ね除け、ブルーヨンダーの100%子会社化に踏み切った理由は、これまでのように「ハードウェアを売っているだけではジリ貧になる」(樋口社長)という強い危機感だった。

Panasonic Connect Blue Yonder Strategy 2022

【図3】ブルーヨンダー単体の成長戦略。SaaSの年間経常収益を2024年までに10億ドル超えを目指す。

出所:パナソニックコネクト発表資料

日本では、ブルーヨンダーのようなサプライチェーンに関するSaaS型契約が浸透しておらず、入り込む余地は大きい。

パナソニックコネクトは、パナソニックが有する顔認証やセンサーなどの技術とブルーヨンダーの技術を組み合わせたシナジー効果にも期待する。

「(顔認証や画像解析といった)当社のテクノロジーを使って収集した現場のIoTデータを、ブルーヨンダーのAIで解析し、適切なアクションプランに落とし込み、現場にフィードバックすることが可能になる」(樋口社長)

まずはパナソニック全社が導入

それを牽引するために、まずは自らがブルーヨンダーのサービスを導入する。

「パナソニックグループ全社で、ブルーヨンダーのソリューションの導入を加速する。我々がブルーヨンダーのショーケースになる」(樋口社長)

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