パリにあるフランス国立社会科学高等研究院(EHESS)のオフィスでポーズをとるトマ・ピケティ。2014年5月12日撮影。
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- フランス人経済学者のトマ・ピケティは、富の不平等に関する世界的な研究の第一人者だ。
- ニューヨーク・タイムズの最新のインタビューで、彼は富裕税や格差解消に向けた動きについて語った。
- 彼はバイデン大統領が提案する富裕税について、「何もしないよりましだ」と述べた。
フランス人経済学者のトマ・ピケティ(Thomas Piketty)は不平等に関する本を書いた。 ピケティは、フランス革命の時代までさかのぼったデータを用いて、資本主義の下でいかに不平等が広がったかを考察した『21世紀の資本』の著者だ。彼はまもなく、新著を観光する予定で、そこではアメリカの富裕層への税制度について意見を述べている。
最新の著書『A Brief History of Equality』に関するインタビューで、ニューヨーク・タイムズは、ジョー・バイデン大統領が提案した、株式などの資産価値の上昇分を含む富裕層の所得への課税について尋ねた。
ピケティは、バイデン大統領は当選する前にこれを提案したら「良かった」と述べた。もしアメリカ国民に富裕税を訴えていれば、世論調査でとても高い数字が出ていることもあって、彼はもっと簡単に事を運べただろう」と彼はニューヨーク・タイムズに話した。そして議会も「態度を明確にしただろう」と。
ピケティは現在の状況は 「より複雑」 だと述べた。
「だが、もしそれが機能するなら、何もしないよりましだ」
バイデン大統領が提案し、政権が「ビリオネア・インカム・タックス法案」と呼ぶこの法案は、1億ドル(約124億円)以上の収入がある世帯を対象とするものだ。20%の所得税を課し、その課税所得には、いわゆる「含み益」も含まれる。
バイデン政権は所得について、超富裕層が仕事で得る給与だけでなく、株や不動産などの資産が1年間で上昇した価値も含むと定義した。超富裕層は給与より資産から多くの富を築いているため、アメリカの多くの労働者よりもよりも実効税率が低くなっている。
ピケティは『世界不平等リポート2022』の作成に協力し、富裕層への減税が最終的に貧困層に恩恵を与えるという「トリクルダウン」神話を覆し、富裕層と貧困層の格差がいかに極端かを明らかにした。
このレポートでは4年間に渡るデータと調査から、世界の富の約98%を上位半数が保有しており、上位層になるほどその割合はさらに高くなり、上位10%だけで世界の富の76%を保有していることを示した。つまり、下位半数は世界の富の2%しか保持していないことになる。
ピケティと不平等に関する研究家のルーカス・キャンセル(Lucas Chancel)、エマニュエル・サエズ(Emmanuel Saez)、ガブリエル・ザックマン(Gabriel Zucman)はレポートの中で、「不平等は政治的選択肢であり、必然ではない」と論じている。
さらにピケティの最新の著書の説明では「我々は少しずつ平等に向かって動いている」と書かれている。これはピケティの研究に反するように見えるかもしれないが、彼は富裕層への増税の人気が高いことを指摘している。
またアメリカが「最も繁栄した」のは、所得税の最高税率が約80%から90%に達した1950年代から1960年代にかけてのことだったと彼は指摘した。その時代、アメリカは教育水準も高かった(今では学費ローンが問題化し、学費捻出が困難になっている)。
大いなる平等に向けた動きについてピケティが楽観的なのはなぜかを聞かれると、彼はエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員と2014年に億万長者への年5%または10%の累進富裕税について語ったことを思い出すと、ニューヨーク・タイムズに話した。
「その時彼女は、『え、多すぎる』というように、私を見た」とピケティは回想した。ウォーレンは現在、富裕税の支持者であり、富裕層に2%から3%の税金を課すよう提案している。
「1986年の税制改革法(編注:個人所得税の最高税率が50%から28%に下がった)に賛成した民主党中道派、ジョー・バイデンが今日、富裕税を導入しようとしている」とピケティは語った。
「物事はかなり速いスピードで変化するものだ」
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)