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「管理職不足で上場延期」の悲劇…3年で400人増のスピード成長も実現できる「未来の組織図」作成のすすめ

自律思考を鍛える

hamzaturkkol/Shutterstock

管理職不足が招いたA社の悲劇

今回は、私の友人がかつて在籍していたA社で起こった“悲劇”からご紹介したいと思います。

ベンチャー企業であるA社は、上場の準備段階にありました。上場の審査に耐えうる組織体制を整えなければならないのですが、ここで最大のボトルネックになったのが「中間管理職不足」でした。

人もカネも足りないという“ないない尽くし”だった創業期の名残で、A社ではこれまで、1人の管理職が複数の部署の責任者を兼務するケースが常態化していました。積極的に採用活動をして人員を増やしたおかげで組織は急拡大中ですが、それに比して管理職の数は増えていません。

しかし、さすがにこのままでは上場審査に支障が出てしまいます。中間管理職の確保は急務。背に腹は代えられないと、数合わせのためにマネジメントスキルがない複数のメンバーを昇格させる人事を行いました。

しかし、結果は惨憺たるものでした。マネジメントスキルを習得していない人がマネジメントをするのは、外科としてのスキルがない医者が外科手術をするようなもの。あちこちの部署でメンバーが混乱、疲弊しただけでなく、納得のいかない人事に離反者が出たり、ギスギスした職場に嫌気が差して離職する人も出る始末。当然ながら業績は伸びず、上場も延期になってしまいました。

A社の例は、急拡大中の組織で起こりがちな“あるある”です。みなさんの周りでも、これほど極端な事例でなくても、似た話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

「中間管理職が必要なら、マネジメント経験のある即戦力を採用すればいいじゃないか」——そう考える企業も少なくありません。しかしそれは机上の空論です。

そもそも、そのような人材は転職市場には多く存在しません。加えて、一口に中間管理職といっても、求められるマネジメントの仕方や役割は会社によって異なります。他社で中間管理職を経験した人が別の会社に移って、即戦力として活躍できる確率は、みなさんが思っているほど高くはないのです。

ではどうしたらよいのか。今回はこの課題を解決するのに有効な考え方をご紹介していきます。

ひとたび知れば「なんだそんなこと」と拍子抜けするほどシンプルでとても役立つ優れモノなのに、なぜかほとんどの人が気づいていない、まさに“コロンブスの卵”のような考え方です。みなさんもぜひ、ご自身の組織を頭に思い描きながら読み進めてください。

3年で400人増員しても組織が破綻しなかった秘訣

私はかつてリクルート子会社の社長をしていた経験があります。

従業員は当初150名でしたが、3年間で550名にまで増員しました。採用した400名の中には、上場企業の役員や事業部長などさまざまな役職経験者も多数いましたが、「管理職」という肩書で採用したのはただの一人もいませんでした(もちろん、その方々の役割に合わせた処遇は提示しました)。管理職経験者を肩書なしで採用したのは、上述のように、会社によって管理職として求めることが違うからです。

入社後、マネジメントスキルがあることを確認した後で、その実力にふさわしい管理職や役員のタイトルとして任用したおかげもあり、組織は混乱することなく順調に成長し、かつ当時の離職率は1ケタ台前半でした。この子会社はエンジニア中心の組織だったのです。そう考えるとこの離職率の数字、かなり少ないと思いませんか?

ではどうやってこの急成長を実現したのかというと、その秘密は「組織図」にあります。でもただの組織図ではありません。「未来の組織図」を活用していたのです。

あなたの会社にも組織図がありますよね。「未来の組織図」とはその名のとおり、その組織図の未来版のこと。3カ月後、6カ月後、9カ月後、1年後など、近未来にこうするという組織図のことです。

どこの会社でも、来年度の新人採用や期中の中途採用など、「採用計画」は準備しているでしょう。また、それとは別に人材の「育成計画」を作成している会社も多いと思います。

しかしここに問題が潜んでいます。ほとんどの企業が、採用計画と育成計画とを別々に作成しているのです。特に大組織にもなると、人事部門の中で採用部門と育成部門が分かれていることも多く、それぞれが「部分最適」の計画を立てています。

採用計画と育成計画が連動していないと何が問題なのか。端的に言うと、先のA社のような悲劇が起こります。必要なときに適性を持った人材が社内にいない。慌てて採用しようとするがすぐに見つからない。付け焼き刃の昇格人事が行われた結果、組織が健全に回らなくなる……私が見るところ、これに類する課題を抱えている企業は驚くほどたくさんあります。

この悲劇を避けるにはどうしたらよいのでしょうか?

A社の例からお気づきの読者もいると思いますが、実は、良い組織をつくる際のボトルネック(制約条件)になるのは、中間管理職の量とスキルであることが多いのです。

そこで「未来の組織図」の出番です。現在の組織図と1年後の組織図を比べれば、どの部署で何名の増員になっているか、中間管理職や専門職を何名増員する必要があるのかが分かります。それに沿った採用活動と管理職育成を実践することで、組織に混乱を招くことなく成長させることができるのです。

何人採用すべきかは未来の組織図が教えてくれる

では、具体的な活用方法を説明しましょう。

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