若い世代が大型書店の再起に貢献している。
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- 若い世代が書店チェーンを復活させているとブルームバーグが報じている。
- ミレニアル世代は、子ども時代に親しんだバーンズ・アンド・ノーブルなどの書店チェーンのにノスタルジーを感じている。
- 一方、Z世代は90年代の大型書店のようなソーシャルメディア以前のシンプルさを求め、TikTokで本のトレンドを共有している。
書店チェーンが今、若い世代のおかげで再び脚光を浴びている。
アメリカでは2021年、書籍の売り上げが前年比13%増し、172以上の独立した書店がオープンし、バーンズ・アンド・ノーブル(Barnes & Noble)が急速に拡大しているなど、アレクサンドラ・ランジ(Alexandra Lange)は多くの統計を引用しながら、書店がパンデミックの間に回復してきていると最近のブルームバーグ(Bloomberg)の記事で報じている。書店ビジネスにこうした新たなページを切り拓く手助けをしているのは、TikTokで本のトレンドについて議論するZ世代や、大型書店を懐かしむミレニアル世代だとランジは言う。
ランジによると、チェーン書店は、「アクセスと自由」を提供し、アメリカの田舎に本を届け、10代の若者のたまり場としての役割を果たし、若者が自分が何者であるかを発見する手助けをしたという。「これらの民間企業は、幅広い階級、人種、年齢の人々に居場所を提供してきた」と彼女は書いている。
パンデミックの世界の中で、若い世代がこうした快適さを求めてしまうのは当然のことだ。特に困難な経済の状況下では、ノスタルジーは強い力を持っている。
「多くの人々、特に若い層や経済的セーフティネットを持たない人々にとって、経済状況の悪化は、家賃や学生ローンの支払いなどの経済的義務を果たせないのでは、と不安を抱かせる」とル・モイン大学(Le Moyne College)教授の心理学者でノスタルジーの研究者であるクリスティン・バッチョ(Krystine Batcho)が2022年1月にInsiderに語っている。
「ノスタルジーは避難所であり、人々は過去に享受した快適さ、安心感、愛情などの感情に目を向けるものだ」
不景気な時代には誰でもノスタルジーに浸るものだが、思春期と成人の間の不安定な状態にある「新しい大人」であるの20代にとって、それはより強く感じられるものなのかもしれない。
「子ども時代の無邪気さを捨てて大人としての自立を目指す一方、社会の残念な側面を体験していない、ほろ苦い時期でもある」とバッチョは言う。
ミレニアル世代の多くはこのライフステージを卒業しているが、金融危機とその余波の中で成人してきた世代にとっては、ノスタルジーは古くからある対処法だ。彼らは子ども時代のシンプルさに傾倒しており、若さと無邪気さを連想させるミレニアルピンクがこれほどまでに人気を博したことや、ミレニアル世代がハリー・ポッター(Harry Potter)の本に固執していることなどすべてがこれで説明できる。バーンズ・アンド・ノーブルのような書店チェーンは、彼らのノスタルジックな思い出リストでは最新のものなのだ。
Z世代にとっては、90年代の書店は彼らが経験することができなかった、哀愁を帯びた前ソーシャルメディア時代の象徴だ。「パンデミックの影響で対面がなくなり、Z世代はデジタル世界しか手に入らなくなった」とZ世代向けマーケティングコンサルティング会社、クリムゾン・コネクション(Crimson Connection)の創業者マイケル・パンコフスキー(Michael Pankowski)は以前Insiderに語っている。
「だから、我々はインターネットがこれほどまでに普及する前の時代を懐かしく感じてしまう」
Z世代は隔離期間にデジタルで結びつき、TikTokで懐かしい流行を復活させたり、好きな本について語り合ったりしていた。
しかし、若者のノスタルジーに共通するのは、帰属意識を育むということだ。そしてその帰属意識こそ、書店チェーンがミレニアル世代やZ世代に提供しているものなのだ。
[原文:Millennial and Gen Z nostalgia is bringing back book sales, indie bookstores, and Barnes & Noble]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)