ウォーレン・バフェット。
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- ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは今週、HPへの巨額の出資を明らかにした。
- 1998年、この億万長者はHPやその他のテクノロジー関連株の保有を止めた。
- バフェットがアップルで成功し、HPがより成熟してきたことが、今回の投資の背景にある。
ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)が率いるバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)は2022年4月6日、HP社への42億ドル(約5200億円)出資したことを明らかにした。
バフェットはかつて、パソコンやプリンターのメーカーへの出資を否定していた。1998年の株主総会で、IBM、マイクロソフト、HP、インテルなどのテクノロジー企業への投資を検討するかと聞かれたバフェットは、次のように答えた。
「そうだね、答えはノーだ。かなり残念なことだが」と述べた。
バフェットは、マイクロソフト(Microsoft)の共同設立者ビル・ゲイツ(Bill Gates)やインテルのアンドリュー・グローブ(Andrew Grove)CEO(当時)のような技術界の大物をリスペクトしていながら、彼らに投資したことがないのを嘆いた。
バークシャーのCEOは、テクノロジー企業についての知識がほとんどなく、10年後にどの企業が勝ち組になるかを自信を持って予測することはできない、ライバルよりも自分が優位に立っている産業に投資する方がよいと説明している。
「他の人が自分よりも有利だと思うようなゲームには参加したくない」と彼は言った。「私がこの先1年間、技術について考えることに時間を費やしても、それらのビジネスについて、この国で100番目、1000番目、1万番目の知識を持った人間になることはできないだろう」
そして「簡単なボールを打ちにいく方がよっぽどいいんだ」と彼は付け加えた。
なぜバフェットは考えを変えたのか
バフェットは、1998年にHPを見限ったとき、特にハイテク株に対して慎重な姿勢だった。当時はドットコムバブルの最中で、多くの成長企業が将来の利益を約束しただけで、目を見張るような価格で取り引きされていた。
しかし、この10年ほどの間に、彼はハイテク企業に対して好意的になっている。彼は2011年にIBMの株式を約120億ドル分購入し、その後、2016年から2018年にかけてアップル(Apple)に約360億ドルを投資した。IBMへの投資はうまくいかなかったが、バークシャーのアップル保有額は今では1500億ドル以上に膨らみ、同社の株式ポートフォリオ全体の40%以上になっている。
また、バフェットの2人の投資マネージャー、トッド・コムズ(Todd Combs)とテッド・ウェシュラー(Ted Weschler)のどちらかがHP株の購入を主導した可能性もある。しかし、バークシャーのポジションの大きさから、彼らの上司の決断があったことがうかがえる、とメリーランド大学の財政学教授であるデイビッド・カシュ(David Kass)は4月7日にツイートしている。
バフェットは80年以上の歴史を持つHPの事業に精通しているため、同社の株を所有することに安心感を抱いているのかもしれない。同社は2015年に企業部門を分離し、パソコンとプリンター事業をHP社内に残した。
バークシャーの社長はおそらく、HPを成長を追い求めるリスクの高い新興企業ではなく、成熟した、控えめな評価の現金収入源と見ているのだろう。それは、彼がアップルをハイテク企業としてではなく、必要不可欠な製品を作る消費者ブランドとして捉えているのと同じ考え方だ。
バフェットとバークシャー社に関するいくつかの著書を持つローレンス・カニンガム(Lawrence Cunningham)はInsiderに「それはまさに私がアップルについて言ったことであり、HPについても同じだ」と語った。
バフェットが、バークシャーが保有する約1500億ドル(18兆6000億円)の現金を活用しようとしていることも事実だ。彼は最近の11日間の取引でオクシデンタル・ペトロリウム(Occidental Petroleum)株に70億ドル(約8680億円)を投入し、保険会社のアレゲーニー(Alleghany)を約120億ドル(1兆4900億円)で買収することに合意した。
バフェットは、HPが魅力的な価格で取引されている堅実な事業体であると判断し、その大部分を所有することを選択したのだろう。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)