Andrew Fox/Getty Images
- プラスチックは至るところに存在する。食べ物、水、空気、時には臓器や血液の中に入っていることもある。
- リサイクルでは、人体を汚染するマイクロプラスチックが製品から脱落することを防げない。
- 研究者らは、健康のためにはプラスチックの使用をやめ、毒性の低い素材へと切り替えていくべきだと述べている。
プラスチックは、おそらくあなたの食事や飲み水に入っているだろう。そして科学者らは今や、血液中にも含まれているのではないかと懸念している。
2022年3月に発表された小規模の調査では、22人中17人の血液にマイクロプラスチック(微小なプラスチック片)が含まれていることが分かった。人間の血液からこうした化石燃料物質が検出されるのは初めてのことだが、プラスチックの研究者にとっては驚くべき発見ではない。
「プラスチックは至るところに存在する」とアリゾナ州立大学の環境衛生工学バイオデザイン・センターの所長、ロルフ・ハルデン(Rolf Halden)はInsiderに語った。
以前行われた研究では人間の食べ物、飲み水、便、胎盤、さらには肺からもマイクロプラスチックが見つかっており、空気中を漂っていることが分かっている。2019年の調査では、アメリカ人は平均して、毎年約5万粒のマイクロプラスチック片を体内に取り込んでいると推定された。さらに2021年の調査では、人間は平均して、毎週クレジットカード1枚分のプラスチックを体内に取り込んでいると推定されている。
「結局、我々全員が影響を受けているのだろう」とアムステルダム自由大学の化学者で、血液中にマイクロプラスチックを発見した研究の共同著者、マルジャ・ラモリー(Marja Lamoree)はInsiderに語った。
健康への影響ははっきりしていない。研究では、プラスチックによく使われる化学物質のビスフェノールA(BPA)、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)などを、がんのリスク増加 、不妊や発達に関する問題、ホルモンの乱れと関連付けている。また、ある研究では、人間の腸内に入ったマイクロプラスチックが危険な炎症を引き起こし、がんに関係のあるプロセスを引き起こすことが示唆されている。さらに別の研究では、プラスチック粒子が人間の肺細胞の機能を変化させることが分かった。
リサイクルに代わる持続可能な解決策はあるのか
リサイクルは、長らくプラスチック汚染の解決策として一般的だったが、我々を守ってくれてはいない。実際、気晴らしにしかならないと言う研究者もいる。
「私は誕生パーティーではたいてい、リサイクルしない派だ」とラモリーは述べた。
「プラスチック類をもっと持続可能な何かに置き換える方が、よほどいいと思う」
国際連合環境計画(UN Environment Programme)で引用された、2020年の研究では、世界中の70億トンのプラスチックごみのうち、リサイクルされているのは10%に満たないことが分かった。
石油やガスから新しいプラスチックを作る方が安いということも理由の1つだ、とNPRと公共放送サービス(PBS)による調査は示唆している。さらに、プラスチックはリサイクルの度に劣化する。再利用されるとしても、通常は1度か2度だ。数十年のテクノロジーの進歩もこの問題を解決できていない。
「リサイクルのほとんどは、失敗に終わっている」とハルデンは述べた。
仮にプラスチックがもっとリサイクルされるとしても、人体への蓄積は免れないだろう。過去数年の研究は、我々が日々使うプラスチックが、微細な小片や目には見えない化学物質を、食べ物や水、空気中にまき散らしていることを示している。こうした隠れプラスチックは、リサイクルすることができない。
「それは我々の食物連鎖の中に、衣類の中に、家庭の繊維製品の中に入り込んでいる。我々はその上を歩き、それで遊び、その上で眠り、それを身に着けている」と、血液中のマイクロプラスチックを発見した今回の研究を主導した化学者で生態毒性学者のヘザー・レズリー(Heather Leslie)はInsiderに語った。
「我々がこれらを使っている限り、その破片が出ていくことになる」
だから、産業界はプラスチックを環境中に何十年、何世紀と残ることのない、毒性の低い素材に置き換えるべきだとレズリーとハルデンは述べている。建設業者はビニールの床材でなく木やタイルを使えばいいし、ほうきはポリプロピレンでなく小枝で作ればいい。しかし、医療機器や乗り物、電子機器、食品安全包装、その他プラスチックのパーツが必須な日用品の代用は難しいかもしれない。
大規模な置き換えにはほど遠いが、研究者らはキノコ類や竹、砂糖、魚廃棄物など、より生分解性の高い代替物質を開発中だ。
「解決策はあると思う。兆しは見えている」とレズリーは述べた。
「人間の知恵は本当にすごいから、きっと解決できる」
[原文:Recycling doesn't keep plastic out of our stomachs, lungs, or blood, experts say]
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)