グーグルのサンダー・ピチャイCEO。
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グーグルが採用方法を大幅に変更しようとしている。これによって採用スピードが上がり、人材獲得競争で不利にならずにすむかもしれない。
Insiderが入手した文書によれば、新たな方法では面接プロセスの早い段階から候補者の配属先を決めることになる。これまでは、配属先は面接プロセスの終盤で決められていた。また、新しいプロセスでは、採用プロセスの一部を省略することも可能になる。
2022年4月に始まったこの新しい採用方法は、世界中のソフトウェア・エンジニアやUXデザイナーなどの技術職に適用される。対象となるのはレベル3からレベル7のポジションで、この変更は数カ月かけて実施されるとグーグルの広報は話している。
グーグルの採用プロセスは、大手テック企業の中でも時間がかかって煩わしいことで有名で、以前から社員の不満の声も多かった。これまで候補者は、何回もの面接に数カ月を費やした挙げ句に配属の段階で不採用となったり、不採用にはならなくても配属が決まるまでに数週間かかることもあった。
求人市場では数百万もの人たちが仕事を辞め、スピーディに動ける企業が有利になっている。グーグルが採用プロセスの効率を高めることで問題を改善すれば、人材獲得競争で優位に立つことができる。
「過去最高の採用数や、面接官による面接キャンセル率の高さ、さらに採用にかかる時間の長さが、よい人材を雇う上で障害になっている。競争力を維持するには私たちも進化することが重要だ」と社内資料に書かれている。
グーグルは過去数年間このような変更を試験的に行っており、新しいプロセスでは採用までの時間が最大5割削減されたという。またこの変更で「面接官のキャンセル率の低下」や「選考通過率の改善」も見られたという。つまり、より多くの候補者が先のプロセスまで進めているということだ。複数の社員によれば、グーグルの採用プロセスは開始から終了まで半年かかっていたという。
また、新しいシステムでは、配属決定の後に通常行われる採用委員会の承認を省略することも可能になり、これも採用のスピードアップにつながる。
この変更でグーグルに就職しやすくなるかどうか、社員の間でも意見は分かれている。
「面接のハードルは最近少しずつ下がってきています。今回の変更は、ずっと宙ぶらりんの状態にされ、採用までにそんなに時間がかかるなら他社に就職する、という人たちに対応するためです」と、匿名を条件に取材に応じた現社員は話す。
テック企業の社員が集まる匿名のフォーラムであるBlindでは、この変更を歓迎する声も挙がっている。「もう潮時だろう。実務に関係する質問をされる。画期的なことじゃないか!」と今回の変更を揶揄するようなコメントもあった。
人材獲得競争が激しくなるなか、大手のテック企業たちは社員を採用し維持するための新しい方法を考えている。アマゾンは最近、アメリカの社員に対して基本給を1~3割上げた。2021年にはグーグルも、社員が会社から付与された株式を現金化できるタイミングを早めている。
最近グーグルは、社員に週3日出社するよう要請したが、この方針について社員たちは懐疑的だ。このことで、より柔軟な就業ルールの企業にグーグルの人材が流出してしまう危険性がある。
(翻訳・田原真梨子、編集・大門小百合)