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- クロックス(Crocs)が2021年12月にシューズブランド「ヘイデュード(Hey Dude)」の買収を発表した時、同社の株価は12%下落した。
- しかし、軽くて履き心地の良い靴で知られるヘイデュードには、熱狂的なファンが多くいる。
- Z世代を対象にしたパイパー・サンドラー(Piper Sandler)の最新調査でも、10代が好きなシューズ会社ランキングでトップ10に入っている。
2021年12月にクロックスがヘイデュードの買収を発表した時、金融街は懐疑的だった。
あまり知られていないイタリアのシューズ会社になぜ25億ドル(約3100億円)もつぎ込むのか、投資家は疑問に思い、クロックスの株価は12%急落した。
だが、クロックスは投資家が知らない"何か"を知っていたのだろう。軽くて履き心地の良い靴が生物分解可能な梱包で届くことで知られるヘイデュードは、Z世代の間で静かにファンを増やしてきた。
アメリカの10代を対象に半年に一度実施しているパイパー・サンドラーの最新調査によると、ヘイデュードは2回連続で"10代が好きなシューズブランド トップ10"に入った。2019年の調査では54位、2020年の調査では17位だった。CNBCによると、パイパー・サンドラーは2021年12月、ヘイデュードを同社が注目している、急速に台頭しているブランドの1つと呼んだ。
クロックスのCEOアンドリュー・リース(Andrew Rees)氏は当時、ヘイデュードの買収はクロックスの普遍的なサンダルから脱却し多角化を図るというより、「象徴となる独自の商品がある別のブランドを加える」ものだとCNBCに語っていた。
ヘイデュードの買収は2月に完了し、クロックスはヘイデュードが2022年に7億5000万ドルほどの収益をもたらすと見ていると明かした。クロックスはアメリカでの販売を拡大し、世界で顧客基盤を広げ、新たな商品をラインナップに追加することで、ヘイデュードを2024年までに10億ドルのブランドに育てる計画だと、投資家向けの説明の中で述べた。
UBSのアナリストは1月、「クロックスは主要事業が不振だからヘイデュードを買収したのではないと示さなければならず」、クロックスの2022年の見通しは投資家心理を押し上げるものでなければならないと書いている。
ヘイデュードはどうしてそれほど人気なのか?
2008年にアレッサンドロ・ロサーノ(Alessandro Rosano)氏が立ち上げたヘイデュードは、「ウォーリー(Wally)」というスリッポンから始まった。
ブランドのファンはヘイデュードの靴は軽くて、足をしっかりと支えてくれ、履き心地が良く —— クロックスとよく似ている —— 、サステナビリティ(持続可能性)を重視して作られていると言う。リサイクルされたコルク、プラスチック、レザーを使って作られたその靴は、コーンスターチでできた梱包で客のもとに届けられる。
ヘイデュードの靴はオンラインの他、アメリカではジャーニーズ(Journey's)やバックル(Buckle)といったチェーン店でも売られている。価格はウォーリーや女性向けの「ウェンディ(Wendy)」が60ドル、ブーツは80~90ドルだ。
ヘイデュードの人気の高さには、TikTokも貢献しているようだ。TikTokには、自身のコレクションを自慢する何百という動画が投稿されている。
「@sttepphhyy」というハンドルネームのユーザーは、購入したばかりのヘイデュードの商品について「気に入った! 10点満点でお薦め」とコメントしている。「@naidelyy09」というユーザーは、ヘイデュードを「これまで履いた靴の中で一番履き心地がいい」と言っている。
中には、ヘイデュードの靴を自身の結婚式の披露宴で履いたという動画や、靴の上の部分を自分でカスタマイズした動画をシェアするファンもいる。
多くの動画にフロリダやテキサスといったアメリカの州がタグ付けされているのも納得だ。クロックスのリースCEOは2021年12月、ヘイデュードの売り上げの95%はアメリカ国内で、その人気の「中心」は中西部と南部だとCNBCに語っていた。
「(ヘイデュードは)他の企業ほどには東海岸や西海岸に広がっておらず、それはわたしたちにとってチャンスだ」とリース氏は話した。
「アメリカと世界の両方で、まだまだポテンシャルがあると考えている」
(翻訳、編集:山口佳美)