シリコンバレー発のラーメン自販機が日本に上陸。記者会見で社長のアンディ・リン氏はその特徴を語った。
撮影:小林優多郎
シリコンバレー発、累計20万食を誇る「ラーメン自販機」が日本に上陸した。
空港、駅、パーキングエリアなど交通の要所に展開し、365日24時間働く従業員の需要や、飲食店の人手不足解消を狙う。
ホテル、病院、テスラの工場……アメリカで20万食
ヨーカイエクスプレスが提供するラーメン。生麺タイプで、熱さと味は「一風堂」の河原成美社長も太鼓判を押す。
撮影:小林優多郎
ラーメンの自動販売機を開発したのは、アメリカ・シリコンバレーのフードテックベンチャー「Yo-Kai Express(ヨーカイエクスプレス)」だ。同社の設立は2016年。
これまでアメリカで空港、ホテル、病院、企業、大学、ショッピングモールやスキー場など約50カ所に設置。20万食以上を提供した実績がある。
イーロン・マスク氏の率いるテスラの工場にも導入され、マスク氏は機会を設置した数時間後に「ラーメン最高」とツイート。作業員たちの過酷な就労を支える「癒し」になっているとして話題になった。
「自販機というより調理ロボット」
Yo-Kai Expressの動作の様子はこちらから。
撮影:小林優多郎
日本では3月下旬から羽田空港、芝浦パーキングエリア、東京駅で順次提供を開始する。
4月6日に東京駅で行われた記者会見に登壇したヨーカイエクスプレスCEOのアンディ・リン氏は、
「見た目は自動販売機ですが、調理ロボットだと認識して欲しい」
と強調した。
コロナ禍以降、非接触で人件費も削減できることなどを理由に加速している自販機商戦。サラダや牛肉などの生鮮食品から冷凍食品、デザートまでラインナップは拡大を続けているが、このラーメン自販機はそれらとは一線を画する。まずは上記の動画を見て欲しい。
同社最大の特徴は、自販機内で調理を行うことだ。商品は機内で冷凍状態で保存されており、注文が入ると独自の技術を用いてメニューごとに最適な方法で解凍する。注文から出来上がりまで最短90秒で、熱々の生麺タイプのラーメンが食べられる仕組みだ。1食は790円(税込)から。
ダイナミックプライシングも可能
グローバルスタートアップの新規事業創出などを行う、クラムスタジオの外村仁さん。
撮影:小林優多郎
また売り上げデータを蓄積し、将来の売り上げ予測や需要に応じて価格を変える「ダイナミックプライシング」も可能だ。ヨーカイエクスプレスの開発とマーケティングを支援するスクラムスタジオの外村仁さんは言う。
「通常の自販機は種類ごとに入れられる量や導線が決まっているので、よく売れて早くなくなる物とあまり売れない物とで在庫管理に差をつけられず、無駄ができるという課題がありました。
一方、ヨーカイエクスプレスは売れるメニューだけ多くストックするなど、需要に合わせた在庫管理が可能な構造になっているのも大きな特徴です」(外村さん)
あの一風堂とコラボ!環境への配慮も
あの「一風堂」のラーメンも食べられる。
撮影:小林優多郎
メニューは醤油、味噌、豚骨などの定番ラーメンに加え、有名店「一風堂」の「博多豚骨ラーメン」、動物性食材不使用の「プラントベース豚骨風ラーメン」なども。
先行するアメリカではデザートも含めた30種類のメニューを提供しており、日本でも順次拡大していく。
飲食は商品と同時に自販機から提供される使い捨ての箸やスプーンなどを使うことが想定されているが、アメリカでは環境への配慮から、これらのカトラテリーには土に還る素材を使用しており、日本でも今後は同様の素材を使う予定だ。
低コストでエッセンシャルワーカー支える
撮影:小林優多郎
ヨーカイエクスプレスを導入する各社のコメントからは、365日24時間働く従業員への需要がうかがえる。
羽田空港日本ビルディングの藤野威・上席常務執行役員
「コロナ禍で旅客機を利用する観光客の需要が戻らない中、空港に勤める従業員は温かい食事が取れることを喜んでいます」
首都高速道路サービスの大西英史社長
「物流の中核を担うトラックドライバーの皆さまに美味しくて温かい食事を24時間365日提供するにはどうすればいいのかが長年の課題でした。解決策ができて嬉しいです」
JR東日本の表輝幸・常務執行役員
「列車の運行に合わせて早朝から深夜に飲食店を営業するとなると、従業員をなかなか集められません。その点でもこうしたロボットはこれから非常に有効なサービスになると思います。
アフターコロナの非接触、非対面の需要にも応えていますし、省スペースかつ無人で運営できるので、地方の駅での展開にも可能性を感じています」
台湾、韓国、ヨーロッパ進出も
羽田空港第2ターミナルに設置されたヨーカイエクスプレス。タッチパネルで注文、もちろんキャッシュレス決済だ。
撮影:小林優多郎
ヨーカイエクスプレスの海外進出は日本が初めてだ。
「コロナ禍以降、営業時間の短縮や人手不足により、飲食店は苦境に陥っています。これは日本も共通のはず。こうした課題をヨーカイエクスプレスは解決できると考えています。
まずは空港、駅、パーキングエリアと交通の要所で挑戦しますが、今後はアメリカ同様、病院など、24時間エッセンシャルワーカーが働いているにもかかわらず温かい食事の提供が難しい場所への展開を進めていきたいです」
とCEOのアンディ・リン氏は語る。他にも大学の寮やホテル、スキーなどリゾート地への展開を考えているという。
さらに今年中に台湾、韓国、ヨーロッパへも進出する予定だ。
コストの削減があらゆる場面で迫られる中、新世代のラーメン自販機、いやラーメンロボットは飲食業の人手不足を救い、エッセンシャルワーカーの支えになるか。