Alyssa Powell/Insider
私はアメリカ中西部に住む30歳の白人男性だ。パッケージメーカーでITマネジャーの仕事をしており、年収は6万7000ドル(約840万円、1ドル=126円換算)を稼いでいる。
今の会社に入社したのは2010年で、当時の時給は15.50ドル(約1950円)、年収に換算すると約3万2240ドル(約400万円)だった。仕事には満足しており、責任が重くなった現在もこの会社に留まりたいと思っているが、上層部からは常にこんなふうに言われてきた。
「君は入社時はまだひよっこで、給与は時給15.50ドルから始めた。それが今では年収6万7000ドルだ。十分じゃないか?」と。この対応が私には悩ましい。
自分にはそれ以上の市場価値があることくらい、私にも分かっている。同様の仕事の求人一覧を見れば、本来の年収は8万5000〜9万5000ドル(約1070万〜1200万円)くらいが妥当な水準だと思う。
だから私は常に自分の価値を会社に示し、また、これまで会社に多大な時間を捧げてきたことを理解してもらおうとしている。私はこの会社のことを十分に理解しているし、具体的なシステム全体についての知識もある。取引先との関係も良好だ。入社12年で誰でも私のようになれる訳ではないだろう。
一般的に、収入を増やすには転職が一番手っ取り早いのは分かっているのだが、私は転職に大きな不安を感じている。個人的な事情だが、幼少期、父が多くの職を転々としていた影響で、当時の不安な気持ちを今でも忘れられないからだ。
会社は私の要望をよく聞いてくれているとは思うが、進んで転職しない限り、他の人たちと同等の手当や昇給は必ずしも望めないということも認めざるを得ない。
私が会社でIT関連職を務めてきた12年間の給与の変遷は次のようなものだった。
編集部注:現在または直近の仕事についての書類をもとに、本人の収入と身元を確認済み。
システム管理者:時給15.50ドル
12年生(日本における高校3年生)の時に地元のサービスプロバイダーでインターンシップを経験した後、今の会社の面接を受けた。私は11年生と12年生のときにすでにテクノロジーとキャリアのクラスでいくつかの資格と大学の単位を取得していて、自分の適性も分かっていた。
入社以降、仕事は順調で、会社の業績も伸びていった。上司も私に満足し、評価してくれた。会社が大きくなるにつれて私の責任も重くなり、意思決定力もついていったように思う。
ただ、仕事内容自体は12年前からほとんど変わっていない。コンピュータ機器の購入と保守を担当し、現在はIT部門の予算管理も行っている。
会社は私の住む地域の物価上昇に伴って給与を上げたため、年収は毎年2000ドルから5000ドル増えていった。
ITマネジャー:年収6万7000ドル
私の現在の肩書は「ITマネジャー」だが、部下をマネジメントしている訳ではない。そのため、自分では以前と変わらず「システム管理者」を名乗っている。仕事内容は引き続きIT部門の機器購入や予算管理だ。
経営陣たちと良好な関係を築いてきたこともあり、会社はこれまで通りの雇用と昇給に快く同意してくれている。ただ、他社に行けばもっと稼げることは分かっている。
妻は数年前から転職するよう背中を押してくれているが、次のようないくつかの理由で私が転職に不安を感じていることも理解してくれている。
まず、私の子ども時代、父が半年から1年ほど無職という期間が何度もあった。父の稼ぎ次第で、お腹いっぱい食べられる時期と空腹を抱える時期が常に繰り返され、先がどうなるのか分からない状態で過ごしていた。あんな境遇はもう味わいたくない。
また、妻は健康上の問題を抱えていて今はほぼフリーランスの状態なので、あてにできるような収入は実質ないに等しい。私の稼ぎが我が家の全収入と考えると、今の安定を捨てる気にはなれない。
妻の健康問題といえば、医療費も問題だ。私は子どものころ喘息があり、両親が無職の時期には、母が病院に電話をかけて吸入器のサンプルをもらえないかと頼んでいた記憶がある。だが、妻が飲んでいる月1000ドルの薬ではそんなことはできないし、もし別の会社に転職したとして、今と同等の保険適用を受けられるかは未知数だ。
最後にこんな怖い話を耳にしたことがあるからだ。会社に「昇給してほしいのですが」とか「他の会社もあたってみたのですが」と給与交渉を持ちかけたら、経営側に「あぁそう、じゃあさっさと出て行って。出口でドアに八つ当たりしないように」とすげなく言われるというエピソードだ。
もちろん、私も過去に会社に給与交渉くらいしたことはあるが、ありがたいことに、もう一度言ってみてもそんな扱いを受けることはないと思う。
というのも、最近シニアマネジャーの一人と話した際に、会社が予定している賃上げに先立って、私の居住地域におけるITマネジャーの報酬相場のデータを送っていいか、と訊いてみたのだ。彼はそれを了承し、4月の給料分から昇給を適用すると言ってくれた。
加えて、今年は生活費の上昇分以上の昇給をするとも言ってくれたが、これについてはどうなるかはまだ分からない。
いずれにせよ、私はこの仕事なら上手くこなせることは分かっている。転職すれば大幅な給与アップは見込めるものの、製造業以外の業界で自分のスキルがどれだけ通用するのかは分からない。こんな具合で目下葛藤中だ。
(編集・野田翔)