親ロシア派武装勢力の支配下で集団避難するマリウポリの市民(2022年3月20日、ウクライナ)。
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- ロシアはウクライナの人々を強制的にロシア国内の辺境の地に送っていると、ウクライナ当局が指摘した。
- ロシア大統領府はウクライナ人をシベリアや北極圏にまで送るつもりだと、The iは報じた。
- こうした地域にウクライナ人10万人近くを送り込む予定だと、The iはロシア大統領府の文書を引用し、伝えている。
ロシアは10万人近いウクライナ人をシベリアや北極圏にまで送り込む計画だと、イギリスのThe iが報じた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア側に捕らえられた人々を「特別な選別施設」について警鐘を鳴らしている。
The iが引用したロシア大統領府の文書は、ロシアが3月に9万5739人のウクライナ人をロシア国内の辺境の地に強制的に移動させる緊急命令が下されたことを示している。
この文書は、ウクライナの人々がモスクワやサンクトペテルブルクといった主要都市ではなく、ウクライナから数千キロ離れたへき地に送り込むつもりであることを意味している。
The iによると、具体的にはシベリアのマガダンや北極圏のムルマンスクの他、チェチェン共和国やイングーシ共和国、ダゲスタン共和国のカフカス地方などだという。
中には、日本のすぐ北に位置するサハリンに送られるウクライナ人もいるとThe iは報じている。
こうした地域は毎月、新たに現地に到着した人の数を政府に報告するよう指示されているという。
ウクライナ当局はロシアがマリウポリ —— 激しい爆撃にあっているウクライナ南東部の港湾都市 —— から数千人のウクライナ人を国境沿いのいわゆる「選別施設」に移動させ、その後、ロシア国内の辺境の地に強制的に移住させていると非難している。
4月12日のリトアニア議会でのビデオ演説の中で、ゼレンスキー大統領は「占領地域では集団国外追放が起きている。何十万もの人々がすでに国外追放されている」と語った。
その上で「彼らは特別な選別施設に入れられている」とし、「書類は取り上げられ、尋問され、屈辱を受けている。どれだけの数の人々が殺害されたかは分からない」と話した。
ロシアが用意したロストフ州タガンログにある臨時の宿泊施設に滞在する避難民(2022年3月21日)。
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マリウポリ市は3月、包囲された市の住民2万人をロシア側が拉致したと明かした。
「選別施設」に行くよう強制されたと話す、マリウポリに住んでいた複数の女性たちがガーディアンやワシントン・ポストといったメディアに自身の経験を語っている。
ワシントン・ポストの取材に応じたある女性は、地下壕に避難していたところをロシア兵に見つかり、バスで国境に近いウクライナ南東部の町ノボアゾフスクに連れて来られたと話している。
ノボアゾフスクに到着すると、女性はロシアの情報機関「連邦保安局(FSB)」の職員と見られる男性から尋問を受けたという。写真を撮られ、指紋を取られ、携帯電話とパスワードも渡さなければならなかったと女性は語った。
「道中のあらゆる場面で、わたしたちは捕虜や犯罪者かのように扱われました」とこの女性はワシントン・ポストに話した。
別の女性はガーディアンの取材に対し、自分の他に「200~300人」が一緒に尋問を受け、ノボアゾフスクの「選別施設」で所持品を没収されたと語った。
「あれは本当に屈辱的でした」とこの女性は尋問について話している。
ワシントン・ポストとガーディアンによると、どちらの女性も集団から抜け出し、なんとかヨーロッパへ逃れることができたという。
ロシア側は、ウクライナ人が自らの意思に反して移住させられた事実はないと主張していると、ワシントン・ポストは報じている。
同紙によると、ロシア大統領府は3月、「ウクライナ、ドネツク人民共和国、ルハンスク人民共和国の危険な地域から」42万人を救出し、ロシアへ避難させたと述べた。
(翻訳、編集:山口佳美)