FG Trade/Getty Images
「大退職(Great Resignation)」によって、職場の力学は雇用される側に有利に働いている。その変化の最前線にいるのがZ世代だ。
パンデミック中の労働体験について、ワシントン州立大学カーソン・ビジネス・カレッジ(Carson College of Business)がワシントン、オレゴン、アイダホの各州に住む150人のZ世代に調査を実施した。
対象は、少なくとも1年の仕事経験を有する18~25歳の社会人。その結果、回答者の半数以上が、職場に9時から17時までいる従来のスタイルが自分にそぐわないと考えていることが判明した。
Z世代の63%が、フルタイムでの勤務を好ましく思わないと回答している。だが彼らは、同僚との交流やプロジェクトでの協力といった面で、フルリモート勤務が不都合となる可能性も認めている。また半数以上が、そうした環境のせいで自分の業種にあまり魅力を感じないと回答している。
「雇用する側は、最若年層の労働者が成長のために必要だと感じているリソースや経験を提供することと、ハイブリッドな働き方とのバランスを見つける必要が生じるでしょう」。カーソン・ビジネス・カレッジのチップ・ハンター(Chip Hunter)学長はInsiderの取材に対してそう語る。
オフィス経験がないことを不利と感じる若手も
パンデミックが始まった当初、新卒のZ世代は、自分たちがフルリモートの労働環境に順応していると考えていた。彼らは家にいながら、上司や同僚のオンラインでの指導のみを頼りに、人間関係の構築や仕事のやり方、キャリアの築き方について学ばなければならなかった。
パンデミックの初期段階では、Z世代の大半はリモートでの仕事を満喫していた。ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)が2020年に実施した調査では、Z世代の69%が在宅での仕事を続けたいと回答している。
アメリカの太平洋岸北西部に住むZ世代は、在宅で働くことで、特有のメリットを享受している。オレゴン州のシアトルやポートランドを行き交う車の台数はアメリカでも有数の部類に入るため、新卒の社員は長時間の通勤を避け、ガソリン代を浮かすことができるのだ。勤務先が東海岸にある企業なら、国内の3時間の時差のおかげで夕方早い時間に退勤できる。
「大学を卒業して初めての社会人経験なので、同僚が周りにいない環境は私たちの成長に大きく影響しています。上司に会ったり、上司の近くで仕事をしたりすることは本当に重要です。対面でないと、学ぶのは難しいですね」。ワシントン州の医療品会社に務めるケイティ・ハウエルズ(23)はそう語る。
企業はZ世代の精神面でのサポートを
今回の調査では、Z世代が心の健康や会社の価値観を重視しており、そうした要素が、今の仕事を続けるか別の機会を探すかの決断を左右していることも分かった。
調査対象となった労働者の8割が、仕事をうまくこなすための環境は整っていると回答している。だが、今の仕事にとどまるべきか、転職すべきかと半数以上が悩んでいることも浮き彫りとなった。企業は最若年層の人材を維持するため、Z世代のニーズに合ったリソースを提供し続けることも必要だ。
今回の調査では、企業が引き続き精神面でのサポートをしてくれることを33%が希望している。また、追加の研修がやる気にプラスの効果をもたらしたと74%が回答。その結果としてつながりが感じられたり、スキルが向上したりするような手段が企業から提供されるとZ世代の離職率が下がる傾向が見られた。彼らの大部分は物理的な職場での経験がないため、こうした点がいっそう重要となる。
前出のハウエルズは、若手社員が勤務時間外に同僚と安全に集まれるようなイベントを会社に開催してほしいと思っている。「プレッシャーを感じず気軽に集まって交流できる環境を、みんな必要としているんです」と彼女は話す。
(編集・常盤亜由子)
[原文:Gen Zers don't regret missing out on the office experience, new study finds]