TED2022で週4日勤務制について語る経済学者のジュリエット・ショア。
Stacie McChesney / TED
- 経済学者のジュリエット・ショアは、非営利団体のヘルスワイズが2021年に週4日勤務制を導入した際に相談を受けていた。
- ヘルスワイズでは従業員の生産性が高まり、さらに多くの従業員を確保することができたと、ショアはTED2022で報告している。
- 多くの企業が短時間勤務を導入するようになっている。パンデミックによって燃え尽き症候群が増えている中、それは必要なことだとショアは述べた。
ある教育系非営利団体で、従業員が「大量に辞めていく」ようになったため、CEOが週4日勤務制を導入したところ、従業員の生産性はかつてないほど向上した。
そう述べているのは、1980年代から仕事の本質について研究してきた経済学者のジュリエット・ショア(Juliet Schor)だ。彼女はアイダホ州ボイシを拠点とする非営利団体ヘルスワイズ(Healthwise)が2021年8月から週4日勤務制試験を導入する際に、相談を受けていた。
COVID-19のパンデミックによる燃え尽き症候群や経済的ストレスと戦う多くの企業と同様に、ヘルスワイズも2021年は苦戦していたとショアは述べている。ところが週5日分の給与で4日だけ出勤するという新たなシステムの試行を始めて6カ月が経過すると、従業員は「とても幸せ」になり、売上は増加し、顧客満足度は「抜群」になったという。
カナダのバンクーバーで2022年4月14日に開催されたカンファレンス「TED2022」で、ショアは「ヘルスワイズの従業員は、休みになった金曜日を、スポーツや家事などの家族との活動に費やしている」と述べている。
「幼い子どもを持つある母親は、罪悪感なくペディキュアをできるようになったと話してくれた」
従業員を引き留めておくために労働時間を短縮する企業が増えつつあり、ヘルスワイズもその1つだ。アメリカでは2021年に3800万人以上の労働者が仕事を辞めた。この傾向は一向に衰える気配がなく、2022年2月には過去最高に近い440万人のアメリカ人が仕事を辞めている。
パンデミックの影響は非常に大きく、多くの労働者は働くことが自分のためになっているのかを考え直すようになり、それが大規模な退職につながったと組織心理学者のアンソニー・クロッツ(Anthony Klotz)が述べている。彼はこの現象を「大退職(Great Resignation)」と名付けた。
ショアによると、短い勤務時間が精神的ストレスを軽減し、仕事の満足度や生産性を向上させるという研究結果があるという。フランスやドイツなど平均労働日数が少ない国では、イギリスやイタリアなど労働時間が長い国々よりも、高い生産性を示している。
ヘルスワイズのアダム・ハスニー(Adam Husney)CEOがIdaho Statesmanに語ったところによると、週4日勤務制に移行してから「(従業員は)ほとんど消耗していない」という。ハスニーは、1週間にこなさなければならない仕事の量を変えたわけではない。従業員が少ない労働時間を最大限に活用するようになったのだ。
ショアによると、ヘルスワイズの従業員は、同僚などへの連絡に、電話ではなくメッセンジャーを使うことで雑談を減らし、時間短縮につなげているという。
「彼らは病院の予約といった個人的な用事を休日に行うようになった。そうすると、オフィスでの仕事の効率が明らかに向上する」とショアは言う。
「彼らはこれに適応し、休息時間を断片的にではなく、丸1日のオフとして取ることを好むようになった」