都会のナイトライフは、Z世代にインスピレーションを与えている。
Mike Harrington/Getty Images
- 「ナイトリュクス」がソーシャルメディアのウェルネス・トレンドに取って代わりつつあるとGlossyが報じている。
- これは、享楽的だった1920年代の現代版ともいえるもので、経済的な苦難を経た今、快楽主義の欲望とノスタルジーを象徴している。
- Z世代は明るい色調のイメージがあるが、ナイトリュクス・ガールは黒が大好きだ。
瞑想とグリーンジュースは去り、夜更かしとマティーニがやってきた。
2010年代のソーシャルメディアに君臨したウェルネスのトレンドに代わって、「ナイトリュクス」が最新の流行として現れたと、Glossyのシニアレポーターであるリズ・フローラ(Liz Flora)が報じている。写真に映し出された洗練されたパーティガールのナイトライフ、薄暗い明かりの下でしなやかなスリップドレスを身に着け、片手にカクテル、もう一方にはオイスター、これが最先端のグラマラスなムードであり、#nightluxeや#darkluxuryaestheticといったハッシュタグとともに投稿されている。
2年にわたる経済的苦境と断続的なロックダウンの間、新たに得た自由な時間を利用して自分自身を向上させなければならないというプレッシャーを感じていた多くの人々が、そろそろ好きなようにしたいと願うようになったことを、このトレンドが象徴している。近年は健康的で幸せに過ごすべきだという教えをインフルエンサーが説いていた。しかし、セルフケアが隔離期間中の趣味になったことが、その教えにとどめを刺したのかもしれない。
Glossyのフローラによると、健康的なウェルネスのトレンドはまだ優勢ではあるが転換期を迎え、パフォーマンスに過ぎないと反発を招くこともあり、これはこのトレンドが衰退しつつあることを示すシグナルだという。
「快楽主義が新たなウェルネスになっている」と彼女は書いている。
彼女はTikTokユーザーの@thedigifairyとして投稿した動画で、ナイトリュクスとは「都会の豪華なナイトライフとそれに似合うファッション」が中心を占めていると説明している。
これは、ミレニアル世代が成人した2010年代の経済状況に対するZ世代の反発として、ロックダウン後に出現した多くのトレンドのひとつに過ぎない。
他にも「オールドマネー(何世代も続く上流階級)」といったトレンドがあり、これは「ダークアカデミア(クラシックでダークな雰囲気を好むサブカルチャー)」にも通じる。これはナイトリュクスのように夜の雰囲気もあるが、東部沿岸部の上流階級のライフスタイルに対する憧れがあることが特徴で、2010年代の億万長者や「カリフォルニアリッチ」のインフルエンサーが好んだ「ニューマネー(新たな富裕層)」「アスレジャー」、とは対照的だ。
また、もうひとつの快楽主義的なパーティーのトレンドである「インディー・スリーズ」も台頭してきた。これは、2000年代初頭のクラブとヒップスター、グランジをミックスしたような雰囲気を好むスタイルで、ミレニアル世代の生産性や影響力を示すクリーンでミニマルなスタイルとは対極にある。
ローラ・ピッチャー(Laura Pitcher)がNylonで指摘したように、パーティーガールのトレンドは、インスタグラム(Instagram)で完璧にキュレートされた美しいスタイルの堅苦しさを拒否することで生まれたものだが、それがまた新たなお手本とされる憧れのスタイルとなったのは皮肉なことだ。
ブラック・イズ・バック
これらのカウンタートレンドの核となっているのはノスタルジーだ。Z世代は就職難で最も打撃を受けた世代であり、リモートでの教育を強いられ、人との交流はほとんどスマートフォンを通して行ってきた。そのため、ソーシャルメディアがまだ存在していなかった時代に思いを巡らせるようになった。
「我々はインターネットが大好きだが、パンデミックによって対面での交流が著しく損なわれたため、基本的にデジタルの世界がすべてになってしまった」とZ世代向けマーケティング・コンサルティング会社Crimson Connectionの創設者、マイケル・パンコフスキー(Michael Pankowski)はInsiderに語っている。
「だから我々は、インターネットがこれほどまでに広がる前の時代にノスタルジーを感じている」
ナイトリュクスが、パンデミック期に現れた他のZ世代のトレンドと異なるのは、2000年代初頭を思い起こさせるのではなく、1920年代のスタイルを現代に蘇らせ、より洗練されたスタイルとなっている点だ。その色使いも異なる。
インディー・スレイズから「Y2K(2000年代初頭に流行したファッションのリバイバル)」のバタフライクリップ(髪飾り)やスパゲッティストラップ(細い肩紐)に至るまで、2020年代の若者の美意識は色彩とマキシマリズムに溢れている。ライムグリーン、ホットピンク、レモンイエローなどの色だ。
繰り返しになるが、どのような色が流行るのかなどは経済で説明できる。不景気の時にはブラウン、ニュートラルカラー、ブラックなど、親しみやすく、安心感のある色が求められると、トレンド予測会社WGSNのカラー部門責任者であるジェニー・クラーク(Jenny Clark)が以前Insiderに語っている。
「逆に、経済が好調で見通しが明るいときは、明るい色やネオンカラーが流行する傾向にある」
2021年の「hot vax summer(ワクチンを終えた暑い夏)」がまさにそうだった。景気が上向きになる中、ワクチン接種を終え、COVID-19の新たな変異種とインフレの恐怖が現れるまでの間、この上ない喜びに浸っていた時期だ。
しかし、ナイトリュクス・ガールが好むのはブラックだ。メインストリームとは驚くほどかけ離れている。彼女たちは2010年代だけでなく、同世代のトレンドさえも拒否しているのだ。あるいは、再び不況に陥る可能性があることを知っているのかもしれない。
[原文:Wellness is out and partying is in as Gen Z takes on a 'night luxe' aesthetic]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)