フードデリバリーサービスで知られる「Wolt」だが、近年は日用品の即時配達に力を入れている。
撮影:小林優多郎
フィンランドのデリバリーサービスWolt(ウォルト)は4月14日、クイックコマース(即時配達)サービスに関する説明会を実施した。
Wolt Japanのリテール事業本部長を務める髙木慶太氏は説明会で「2022年がクイックコマースの元年になる」と発言。
具体的な数値は示さなかったものの、Wolt Japanにおけるリテール事業(フード以外のデリバリー)について「流通取引総額(GMV)ベースで、2021年比で15倍にしていく」と目標を語った。
フードメニュー以外の配送を促進、ダークストアも全国へ
エリア限定ではあるが、日用品として「コストコの非会員」でもコストコの製品が買える。
撮影:小林優多郎
では、その成長をけん引する要素は何か。Woltはまず2つのサービスに関する発表をした。
1つはリテールデリバリーサービスの拡大だ。Woltは医薬品や化粧品、食料品などの日用品の即時配達サービスを各サービス地域で提供している。
今回は、東京と東北エリアにおいて、百貨店やスーパーマーケットなどのパートナー企業が増えたことが発表された。東京では文化堂豊洲店やPicard武蔵小山店など、東北では仙台三越やイオン仙台一番町店などを利用できるようになる。
また、自社の拠点から配達する「Wolt Market」(いわゆる「ダークストア」)の拡大についても触れられた。Wolt Marketは札幌の4拠点に加えて、函館、旭川、広島、呉の計8拠点あるが、2022年初夏までに東北、2022年後半には日本全国に拡大していく方針だ。
配送ネットワーク外販で処方薬の即時配達ニーズを探る
Wolt Driveの特徴。写真左の女性は、Wolt Japan代表の野地春菜氏。
撮影:小林優多郎
2つ目の成長の鍵は、新サービスとなる「Wolt Drive」だ。
フードデリバリーおよびクイックコマースは一般顧客向け(toC)のサービスだが、Wolt Driveは法人向け(toB)のサービスとなる。
いわゆる「Delivery as a Service」と分類されるもので、Woltの即時配達ネットワークを他の企業に提供するというものだ。
企業側は自社サービスへの組み込みに使えるAPI連携の「Drive API」と、Woltの専用ウェブポータルから直接配送を依頼する「Drive UI」の2種類から連携方法を選べる。
メディカルノートのオンライン診療プラットフォームを使ったクリニックで、院内処方薬の即時配送サービスの実証実験を行う。
撮影:小林優多郎
説明会では医療ベンチャーのメディカルノートとの実証実験も合わせて発表された。同実験は4月14日から開始した。
メディカルノートが提供するオンライン診療プラットフォームを使う一部のクリニックにおいて、そのクリニックをオンライン受診した患者が半径3キロ以内の場所に薬の配送を希望した場合、院内で調剤した薬をWolt経由で配送する。
この実験でも通常のWoltの配送と同様に、30分以内での配達、発出されるトラッキングリンクでの配達パートナーのリアルタイム位置情報の取得が可能になっている。
Woltはこの実験を通して「オンライン診療を受ける患者の利便性向上と、院内処方薬の即時配達ニーズとオンライン診療ニーズの相関性を検証する」(リリースより)としている。
「30分」にこだわるWolt、DoorDashへの売却も間近
写真左からWoltの配達員、Wolt Japan リテール事業本部長の髙木慶太氏、同社 エクスパンションマネ ージャーの福井優貴氏。
撮影:小林優多郎
クイックコマースの分野は、当然競合他社も力を入れている分野だ。
例えば、Zホールディングスは1月27日に「Yahoo! マート」を発表。傘下の出前館(配達)やアスクル(仕入れ)を活用し、注文から最短15分での提供をうたっている。
Woltのリテールデリバリーの場合、配達時間はコストコなど一部店舗を除き、店舗から6キロ圏内であれば30分程度としている。
Woltとしては、あえて他社より時間に余裕を持つことで、比較的安価な配送手数料の実現や配達パートナーの安全性・サービスの安定性の確保を狙っている。
なお、Woltの本社(Wolt Enterprises)は、同業であるアメリカ・DoorDashに買収される見込みだ(2021年11月9日発表)。
Business Insider JapanはWoltに対し、今回発表された内容はDoorDashへの売却後、グループとしてのシナジーを見越したものか質問したが、髙木氏は「(買収が)クローズするまでコメントできない」としている。
(文、撮影・小林優多郎)