ドイツで行われたウクライナ戦争に対する抗議活動。
Ying Tang/NurPhoto/Getty Imags
- ドイツ国内では、ウクライナ戦争をめぐって、ロシア産化石燃料の輸入を禁止すべきだという声が高まっている。
- ドイツ政府に助言する経済機関の報告書によると、ロシア産化石燃料の輸入を直ちに禁止すると、ドイツは「深刻な景気後退」に陥るという。
- ドイツはロシア産天然ガスの輸入を停止した場合、2年間で国内総生産の6.5%にあたる2200億ユーロ(約30兆円)を失う可能性がある。
ドイツ政府に政策提言のアドバイスを行う同国の主要な経済研究機関は、2022年4月13日に「共同経済予測(Gemeinschaftsdiagnose)」の報告書を発表した。それによると、ドイツがロシア産天然ガスの輸入を直ちに停止した場合、今後2年間で2200億ユーロ(約30兆円)の国内総生産(GDP)を失う可能性があるという。
ロシアによるウクライナでの残虐行為が報道される中、ヨーロッパ最大の経済大国であるドイツでは、ロシア産化石燃料の輸入を直ちに禁止すべきだという声が高まっている。しかし、ドイツはロシアの天然ガスに大きく依存しており、天然ガス輸入量のうち、2021年は55%、2022年の第1四半期は40%をロシア産が占めているとロイター通信が報じている。
報告書によると、ロシア産化石燃料の輸入を直ちに禁止すると、GDPが6.5%減少し、ドイツは「深刻な景気後退」に陥るという。
報告書には「ロシアからの原材料の供給に依存しないという決定は、軍事的・政治的状況が再び落ち着いたときでも有効だろう」と記載されているとブルームバーグが報じている。
「それは、エネルギー供給とエネルギー多消費型産業を、部分的に再構成しなくてはならないことを意味する」
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は3月31日、ロシア産天然ガスを輸入する国々に対してルーブルでの支払いを義務付ける法令に署名し、これに従わない国とは既存の契約を取り消すと強気の姿勢で迫っていると、ロイター通信が報じている。
ドイツでは天然ガスを調達できないというリスクに直面し、経済省が3段階のエネルギー緊急対策計画を発動した。現在、「早期警戒段階」にあり、産業界と一般家庭を含むすべてのエネルギー消費者に対して、省エネと消費量の削減を呼びかけている。状況が悪化した場合、計画の最終段階として天然ガスが配給制となり、まず産業界から電力削減の対象となる。この動きは、経済を荒廃させ、雇用の喪失につながる可能性がある。
ドイツの銀行団体は、ウクライナでの戦争の影響でGDP成長率が2021年の2.7%から2022年には2%に鈍化すると予測しているとドイツ銀行協会(BDB)CEOで、ロビー団体会長でもあるクリスチャン・ゼービング(Christian Sewing)が述べたと、ロイター通信が4月4日に報じている。
ドイツ経済のロベルト・ハーベック(Robert Habeck)大臣は3月25日のプレスリリースで、2024年までにはロシア産天然ガスの輸入を停止すると述べている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)