Mike Blake/Reuters
- リヴィアンCEOのロバート・ジョセフ・スカリンジは、近いうちに電気自動車用バッテリー不足がチップ不足よりも大きな問題になる可能性があると述べている。
- アリックスパートナーズは、コンピューターチップの不足で自動車メーカーが2021年に2100億ドルの損失を被ったと試算している。
- テスラのイーロン・マスクは、バッテリーの供給は電気自動車の生産に影響を与える可能性があると繰り返し警告してきた。
リヴィアン(Rivian)の創業者でCEOのロバート・ジョセフ・スカリンジ(RJ Scaringe)は、電気自動車のバッテリー不足は、自動車業界が直面したコンピューターチップ不足を上回る可能性があると警告した。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると「半導体不足は今後20年間にバッテリーで感じるであろうことの小さな前菜に過ぎない」とスカリンジは述べている。リヴィアンのCEOは、イリノイ州ノーマルにある同社の工場を記者団に案内しているときにそうコメントしたという。
過去2年間、チップ不足のために企業は生産を削減し、タッチスクリーンやシートヒーターなどの電子機能をカットしてきた。2021年9月に経営コンサルティング企業のアリックスパートナーズ(AlixPartners)は、チップ不足によって、2021年は自動車メーカーに2100億ドル(約26兆7780億円)以上の追加コストがかかると試算している。
現在、電気自動車への参入を検討している自動車メーカーは、電気自動車用バッテリーの重量約1000ポンド(約453キログラム)のリチウムイオン電池の製造に必要な金属が不足するという危機的な状況に直面している。
WSJによると「ごく簡単に言うと、世界中のバッテリーセル生産量を合計しても、10年後に必要とされる量の10%にも満たない。つまり、90%から95%はサプライチェーンに存在しないのだ」とスカリンジは話したという。
スカリンジは、リヴィアンのバッテリー確保の戦略はサプライヤーを多様化することと自社製造能力を強化することだと記者団に語った。
将来の電気自動車用バッテリーの供給について懸念を表したのはリヴィアンのCEOが初めてではない。テスラ(Tesla)のCEOイーロン・マスク(Elon Musk)は、「バッテリーの供給は大きな問題になる可能性がある」と繰り返し警告している。
2022年4月初め、テスラはリチウムの採掘と精製に乗り出すことを検討しているとマスクは述べた。フォーチュン(Fortune)によると、テスラは2020年にリチウム鉱山会社の買収契約交渉が決裂した後、ネバダ州でリチウムを採掘する権利を自社で確保した。
ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス(Benchmark Mineral Intelligence)のデータによると、リチウムの採掘ペースが電気自動車の需要に遅れているため、過去1年間で、この金属の価格は4倍以上に上昇した。2022年3月には、ニッケルの価格が20年以上ぶりの高値を記録している。
2021年、センター・フォー・オートモーティブ・リサーチ(Center for Automotive Research:CAR)が発表したレポートによると、バッテリーの生産は2030年まで需要を満たせず、2022年から2029年の間に1870万台以上の電気自動車が生産できな状態になると推定されている。
同レポートによると「リチウムイオン電池の生産能力は、アメリカ、ヨーロッパ、中国でかなり増強されているが、バッテリー工場の建設と同様に、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガンなどの電極材料のサプライチェーン構築にも時間がかかる」という。
スカリンジは、自動車産業の新しいプレーヤーとして、コンピューターチップの確保に苦労していることを認めている。その結果、リヴィアンは2022年の生産目標を半減させた。
アクシオス(Axios)の報道によると、「私は毎日、半導体サプライヤーのCEOと電話をしている。これは昼夜を問わず割り当てをめぐる戦いであり、獲得できる個数は我々が製造する車の台数と正確に一致する」 とスカリンジは話したという。
リヴィアンは2021年秋、最初のモデルであるトラックのR1TとSUVのR1Sの販売を開始した。2021年にリヴィアンは超大型の新規株式公開を果たし、一時はフォード(Ford)やゼネラルモーターズ(General Motors)といったトップ自動車メーカーを上回る評価を得たこともあったが、その後、リヴィアンの株価は下落している。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)