タコベルのメキシカンピザ。
Taco Bell
- タコベルは常にメニューを入れ替え、時には長年人気のメニューが消えてしまうこともある。
- そのタコベルが、2年ぶりにメキシカンピザを復活させてファンを喜ばせている。
- 人気メニューがなくなると、話題性が生まれ、復活を期待する声が高まるという。
タコベル(Taco Bell)はメキシカンピザ(Mexican pizza)を2022年5月19日にメニューに復活させると発表した。これは、ファンの多い人気商品に対しての賢明な販売戦略の一例だ。
メキシカンピザは、タコベルの常連客に長く愛されてきたが、2020年に7レイヤーブリトー(seven-layer burrito)、チージーフィエスタポテト(cheesy fiesta potatoes)といった他の10数個の人気商品とともにメニューから消えた。メキシカンピザは、小麦粉で作ったトルティーヤに2度揚げした豆、味付した牛ひき肉、メキシカンソースをトッピングし、さらにその上にトルティーヤを乗せてメキシカンソース、チーズ、刻んだトマトをトッピングしたメニューだ。
カリノフスキー・エクイティ・リサーチ(Karinowski Equity Research)のマーク・カリノフスキー(Mark Kalinowski)CEOによれば、メキシカンピザをいったんメニューからなくして再登場させたのは、客がどれだけこのメニューに関心を持っているかを知るための手段だった可能性が高いという。おそらく、以前ほど売れ行きが振るわなくなったため、顧客が復活を望んでいるかどうかを確認するために販売を停止したのだろうと彼はInsiderに語った。話題性とプロモーションのおかげで今回は売り上げがもっと伸びるとカリノフスキーは予想している。
タコベルは2022年4月18日の発表で、ファンがメキシカンピザの復活を求めていたことを強調した。タコベルによると一部のファンはこの商品復活の嘆願書や記念品、グッズまで作ったという。「スーパーファン」 であるクリシュ・ジャギルダー(Krish Jagirdar)が「メキシカンピザは南アジア系のコミュニティーにとって重要である」として「Change.org」で行った、タコベルにメキシカンピザの販売を求めるオンライン署名活動では17万人以上もの署名が集まった。
愛着のあるメニューをなくしてしまうことは、客の怒りを買うような気がするが、タコベルはそれを成功させる方法を考え出したのだ。
タコベルは頻繁にメニューの変更をしているが、新型コロナウイルスのパンデミックの期間中は新商品の展開が若干遅くなった。シンプルなメニュー構成にしたことは2020年にはファンからの批判はあったものの、ドライブスルーでの注文を増やし、メニュー変更後の四半期には売上高が5%増加したことからも賢明な選択だったことが証明された。これは標準的なメニュー変更のやり方で、利益率の低いメニューを利益率の高いものに入れ替えたものだとカリノフスキーは以前Insiderに語っている。UBSのデニス・ガイガー(Dennis Geiger)をはじめとするアナリストたちも、この動きを高く評価していた。
愛着のある料理が手に入らない時期に、SNSで復活をアピールするファンもいる。特に熱心なファンはさまざまな商品が復活する時期を予想するウェブサイトやフォーラムを立ち上げ、メディア各社もその予想に参加している。メニューの周期性を理解していて、その予測を一種のゲームのように楽しんでいる客もいる。これにより、タコベルは商品発売の際に無料の宣伝ができているのだ。
メキシカンピザやポテトのようなメニューが復活したときに、すでに購買層ができあがっていることがこのチェーン店にとって何よりの強みだ。客を説得し、新しい商品を試してもらう必要はない。それどころか、彼らはすでに何カ月も、この場合は何年も前から、その商品の復活を期待しているのだから。
[原文:Taco Bell uses a counterintuitive strategy to keep customers coming back — here's how it works]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)