「大退職」の波に乗ったことを後悔している労働者もいる。
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- 「大退職」に加わった5人に1人が後悔しているというハリス・ポールによる調査結果がUSA Todayで公開された。
- 多くの人は、転職のメリットとデメリットについて深く考えることなく、金銭的な理由で新しい仕事に乗り換えていった。
- 大退職は、新入社員と中堅社員が中心となって進行した。
お金がすべてではないことが判明した。
「大退職」に加わった20%の人たちに聞いてみると分かる。世論調査会社のハリス・ポール(Harris Poll)がアメリカの成人2000人を対象に行った調査の結果が、USA Todayで公開された。それによると過去2年の間に退職した人のうち、5人に1人が後悔しているという。2021年だけでも4700万人以上のアメリカ人労働者が大退職の波に乗った。その多くが新しい仕事に就いたが、中には給与が高くなる見込みに引かれて、それ以外のことはよく考えなかった者もいることが、調査で明らかとなった。
転職を後悔している人の多く(36%)が「ワークライフバランスが崩れたと感じている」と答えた。また「新しい仕事が予想と違った」(30%)、「以前の職場のカルチャーが恋しい」(24%)、「辞めることのメリットとデメリットをきちんと検討していなかった」(24%)という意見もあった。
また、転職をそこまで後悔していない人でも不満は感じているようだ。調査対象者の約33%はすでに、よりよい職場環境や給与の仕事を求めて、再び転職することを検討していた。新しい仕事が気に入っていて、そこに留まると答えたのは、わずか26%だった。
専門家がUSA Todayに語ったところによると、Zoomによる面接は、求職者にとって質問がしづらく、企業カルチャーを感じ取るのも難しいという。また、より柔軟な働き方を求めて、それ以外のことをよく検討しなかったり、過労や低賃金に対する怒りから転職をした人もいるようだ。
だが、退職を後悔している人々の多くは、高い給与に釣られていた。歴史的な人手不足の中、労働者を集めようと必死になった多くの企業が「給料でひきつけようとしたのだ」と、人材サービス企業、ManpowerGroupの人材ソリューション担当シニアバイスプレジデントのジム・マッコイ(Jim McCoy)がUSA Todayに述べている。また、このような焦る気持ちから、企業が労働条件を偽って伝えることにつながった可能性もあると指摘する。
リンクトイン(LinkedIn)のキャリア専門家であるキャサリン・フィッシャー(Catherine Fisher)は「何が起こったかというと、これらの企業は長い間空いていた席を埋めようとして、システムをショートカットしたということだ」とCBS Morningsに語っており、求職者と雇用者の両方が雇用プロセスを急いだ可能性があると付け加えた。
仕事を探すミレニアル世代とZ世代
大退職をしているのは、主に中堅社員と新入社員だ。Harvard Business Review(HBR)が2021年に行った分析によると、退職率は30歳から45歳の従業員で最も高く、過去1年間で平均20%以上増加している。
HBRによると、ミレニアル世代(おおよそ1981年から1996年生まれ)とZ世代(おおよそ1997年から2012年生まれ)が退職するのにはさまざまな理由がある。例えば中堅社員へのプレッシャーの高まり、労働者が仕事と人生に何を求めるのかを考え直すようになったこと、パンデミックの経済的影響が一段落し、延期されていた転職活動が再開されるようになったことなどだ。
Z世代も、よりよいキャリアを求めてつまらない仕事を辞めている。人材獲得プラットフォームのLeverが1200人の正社員を対象に行った調査によると、2022年中に仕事を辞める予定だとしているのがZ世代では65%で、調査対象者全体の40%と比較すると、はるかに高い割合になっている。
これは、Z世代が仕事に対して他の世代と異なる価値観を優先しているからかもしれない。Leverの同調査によると、Z世代の42%が「給料の高い会社よりも目的意識を持てる会社で働きたい」と回答しているのに対し、ミレニアル世代の49%とX世代の56%が「給料の高い会社で働きたい」と回答していた。
これが後悔の理由だろう。Z世代が給料に関係なく自分の価値観に合った会社で働いた方がいいと気づくには、転職する必要があったのかもしれない。そして、給料を優先して転職したミレニアル世代やX世代は、その転職が割に合わないと後で気付くことになった。
大退職は期待されていたほどのものではなかったようだ。しかし、労働者が転職した先からさらに新たな仕事を求めて転職を考えているとしたら、大退職はさらに長く続くことになるだろう。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)