ネットフリックスのテッド・サランドス共同CEO。
Getty Images
- ネットフリックスの加入者数が10年以上ぶりに減少した。
- ストリーミング配信の巨人が最後に加入者の減少を記録したのは2011年だ。
- 同社は、パスワード共有とストリーミングの競争激化などを主な要因として挙げている。
ネットフリックス(Netflix)の決算報告で、10年以上ぶりに加入者数が減少したことが明らかになった。
ネットフリックスが第1四半期に20万人の加入者を失い、第2四半期にはさらなる減少を予測したことにウォール街が反応し、時間外取引で株価が21%も急落した。
このストリーミング大手が最後に加入者減少を報告したのは2011年のことだ。
株主宛の書簡によると、同社は次の四半期に200万人の加入者を失う可能性があると予測している。そこでは「比較的高い世帯普及率」と「競争の激化」という「収益増加の逆風」が吹いていると説明されている。また、同社は最近、アメリカとカナダで値上げを行った。
「COVID-19がストリーミング事業を大きく後押ししたことで、最近までその実態が見えにくくなっていた」と書簡には書かれている。
ネットフリックスは、パンデミック発生当初から「タイガーキング: ブリーダーは虎より強者?!(Tiger King)」などのドキュメンタリーで自宅に隔離されていた視聴者の注目を集めた。しかし、世界中が再び動き始め、Disney+(ディズニー・プラス)やHBOマックス(HBO Max)といったライバルが加入者を奪い続けている中、ネットフリックスは契約者数の増加を圧迫する要因について再検討し始めている。
「COVID-19は、2020年の当社の成長を大幅に増加させることによって我々の視界を曇らせた。2021年の成長鈍化のほとんどは、COVIDによる前倒し効果が要因だと思える」と同社は書簡で述べている。
ネットフリックスは、ストリーミング事業の主な課題を4つ挙げた。それは、コネクテッドTVなどの技術が市場の成長ペースに影響を与えること、大量のパスワード共有、新しいストリーミングサービスとの競争激化、インフレや地政学的紛争などのマクロ経済的要因だ。
加入者数の減少は、ネットフリックスが最近になってパスワード共有の取り締まりをテストし始めた理由を明確に示している。同社は書簡で、アメリカとカナダの3000万世帯を含む1億世帯が同社のサービスに「タダ乗り」していると推定していることを明らかにした。
「パスワード共有は、より多くの人々がネットフリックスを利用し、楽しむことで、当社の成長を後押ししてくれたと思う」と同社は書簡で述べている。ネットフリックスは現在、ラテンアメリカで新しい有料シェアリング機能を試しており、タダで視聴している世帯を収益化する方法の開発に注力するとしている。
現在進行中のウクライナ戦争も、ネットフリックスのビジネスに影響を及ぼした。同社によると、ロシアのウクライナ侵攻と同時にEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)市場が減速し、ロシアでのサービス停止を決定した結果、当四半期の有料加入者数に70万人の影響が出たという。
米Insiderを運営するInsider Incを所有するアクセル・シュプリンガー(Axel Springer)社のマティアス・デップナー(Mathias Döpfner)CEOはネットフリックスの取締役を務めている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)