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今「海外流出」する若手社員たちに聞く。コロナで気付いた、日本の限界

上を見上げる女性

「コロナ禍で日本にいざるを得なくなったことで、逆に日本の限界がわかってきた」。20代〜30代の若者たちの本音を聞いた。

撮影:今村拓馬

コロナによる入国制限の影響はまだまだ大きいが、欧米各国では、徐々に入国規制を緩和し始めている。日本でも4月10日から、1日あたり7000人程度だった入国者数の上限を1万人に引き上げた

そんな中、20代の筆者(私)の周りでも、少しずつ海外へ飛び出す人が出てきた。2年以上に渡って続いてきた渡航規制の自由化が進めば、この動きはさらに活発になるだろう。

今、若い世代は何を思って日本を出るのだろうか。

時差16時間のカナダで海外リモートワークに挑戦

空港ターミナルの写真

2年以上に渡り続いてきた渡航規制が自由化されつつある今、出入国はさらに活発化することが予想されます。

Shutterstock/Shine Nucha

海外に渡航する人の数が、増えている。

法務省の出入国管理統計によれば、2022年1月の日本人出国者数は約7.5万人で、2020年4月以来最多となった。2月は約4.7万人とやや落ち込んだものの、3月にはこの数字が7.1万人にまで戻った。

さまざまな働き方に(いつのまにか)挑戦している私も、副業会社員を卒業し、独立してはや1年。2022年は海外リモートワークに挑戦してみることにした。

行き先はカナダ。叔母が住んでいるバンクーバーに数カ月行くつもりで、期間は決めていない。世界の状況がどうなるかもわからない今、いつまでどこに住むことができるかといった自分の未来も確定しようがないと開き直った。

加えて渡航理由も、進学や海外就職といった明確な目的があるわけではない。

学生時代に貧乏で行けなかった海外滞在の夢を大人になった自分が叶えてあげようという気持ちがあったことに加えて、フリーランスになって勤務環境も自由になったことで、「いつかカナダに遊びにおいで」という、ひとり暮らしのおばの誘いを受けるなら今だと考えたのだ。

それに乗っかって、時差がマイナス16時間であるカナダで海外リモートワークに挑戦してみようと考えている。

これを機会に、海外への長期滞在についても知ろうと調べてみると、周りでも留学や移住など海外で1カ月以上滞在する生活を始めようとしている人を見つけることができた。

“不要不急”と趣味奪われ、考え直した「幸せな生活」

空港出国ゲート前の写真

閑散としていた出国ゲートにも、徐々に人が戻りつつある。

Shutterstock/indukas

海外旅行に行くことが趣味だった友人で29歳のアイさん(仮名・女性)は、 "不要不急" だとして、旅行を制限されている間に価値観が変わってしまったという。

元々、長期休暇を取って海外へ旅行することが自分のエネルギーになっていたアイさん。アイさんにとって海外に行くことは"不要不急"ではなく必要不可欠だとこの2年で改めて気づいた。これまで外国語を学んでいたこともあって、どうにかその機会を作るべく、ヨーロッパのMBA進学を決めたというのだ。

実は、コロナ以前から、海外へ活動を移す社会人は増加している傾向がある。

バイリンガル向け就職・転職サービス「CFN」を運営する株式会社ディスコに聞いてみると、コロナ前までは、「CFN」の社会人による登録が増加し続けており、2018年に対して2019年は28%増の登録があったという。

海外移住に関しても、外務省の海外在留邦人数調査統計(2021年版)によると、永住を選ぶ人は継続的に増加し続けている傾向にある。

コロナ以前から、海外で働きたいと考える人や、海外に住み続けたいという人はじわりと増え続けている現状が伺える。

今回アイさんの海外留学は数年間の滞在を予定している。今後海外に永住する可能性があるのかと聞いたところ、

「コロナ禍で、心身のバランスが崩れてしまって、『自分にとって幸せな生活』とは何なのかを見失い、コロナ前と同じようには働けないと思ってしまった。海外でこれまでとは全く違う生活をして、様々な刺激を受けながら、自分の求める生活について改めて考えたい」

と答えてくれた。

身動きできず「日本の限界わかった」

上を見上げる女性

コロナ禍で、日本から出国する理由をより強く感じたという人もいる。(写真はイメージです)。

撮影:今村拓真

友人である30歳のミユキ(仮名・女性)さんも、2022年中にヨーロッパでの海外留学を考えているという。

きっかけは、この2年間リモートワークを続けて自分のスキルに自信を持てたことだった。副業に挑戦したり、その中で自ら国内外の優秀な人材と交流しながらオンラインでプロジェクトを進める経験を得たりしたことで、「会社を卒業しても生きていける」と思えたという。

一方、コロナによって刻々と変わっていく世の中に対して、一向に変化しない会社の文化や、以前から疑問をいだいていた仕事内容への不満がより一層高まった。

さらに、コロナ禍で度々報道された日本のジェンダー問題にも辟易したという。

選択的夫婦別姓の導入が一向に進まないことや、女性の活躍の幅が狭くロールモデルにできるような人が社内に見当たらないこと、エイジズム(年齢に対する差別や偏見)など、日本社会にはまだまだ女性の生きづらさが存在していると感じるそうだ。

この指摘には、30代になろうとする私も強く同感した。

「海外では、30代で結婚していなくても誰も何も言わないし、そもそも年齢を聞く文化がない。事実婚のまま子どもを持つことができる制度を使って子どもを育てている女性もいる」

とミユキさんは語る。

そもそもは、数年前から海外留学への希望を持っていたミユキさんだが、さまざまな制約によって渡航を数年遅らせていた。コロナが落ち着きを見せはじめている今のタイミングだからこそ、思い切った決断ができたのだという。

「日本は、選択肢をそれなりに持っている女性にとってはあまりにも息苦しくて機会損失の大きい国。今はさまざまな国が高度人材を獲得しようと切磋琢磨しているのに、日本は既存の概念に縛られて変化もしない。経済に関しても、世界の先進国の中で存在感が薄れていっている」

ミユキさんは、コロナ禍を体験し、よくわかったそうだ。

「会社と同じで、有能なリーダーのいる国にいなければ、自分の人生は損を被ってしまう」

「なぜ、日本で生きるのか」問われる時代

パソコンで作業する人

撮影:今村拓真

「東京じゃなくても良くなった」

コロナ禍でリモートワークが進み、地方移住した人はそう語った。

今回話を聞いた人々の全員が日本の未来を憂いて移住や留学を決めたわけではない。自分なりの心地よさを求めて、一時的に海外に居場所を移した人もいる。

しかし、そういった人たちも含めて、生きる場所が「日本じゃなくても良くなった」のは変わりない。私もまたその一人で、働きながら暮らす場所が「日本じゃなくても良くなった」から今回出発することができる。

働き方はどんどん自由になっている。どこの会社に、どんな雇用形態で所属して、そしてどこで働きどんな人生を送るのか。さまざまな人生の裁量権が自分の手元にあると感じられる時代だ。

「日本じゃなくても良くなった」今、日本で生きることを選ぶ理由とは一体何なのか。

その問いはもちろん、日本だけではなく、世界のあらゆる国に対して投げかけられている。だからこそ前述の通り、先進国では優秀な人材を自国に引き寄せるための政策が多数生まれているのだ。

2021年は「東京にいる意味とは?」と考えた人たちが、次は「日本にいる意味とは?」を考える時代がもうすぐくるかもしれない。

(文・りょかち、編集・西山里緒

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