メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)。2020年11月の米上院司法委員会でオンライン証言した際のもの。
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米メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)株を保有する投資家およびアドバイザーから成るグループが、年次株主総会(5月25日開催予定)を前に、取締役会メンバーの入れ替えを要求する声を強めている。
ノルウェーのストアブランド・アセット・マネジメント、米マーシー・インベストメント、米アルジュナ・キャピタル、米イリノイ州財務官、米ノースウェスト・コーリション・フォー・レスポンシブル・インベストメント、カナダの非営利組織シェアホルダー・アソシエーション・フォー・リサーチ・アンド・エデュケーション(SHARE)らがグループに名を連ねる。
同グループは、マーク・アンドリーセンとペギー・アルフォードの2人が独立社外取締役に留任することは株主利益と矛盾あるいは相反すると主張している。
米証券取引委員会(SEC)の開示資料によれば、同グループはメタの取締役会に直接の対話を求める書簡を送付したものの、無視されたという。
「同社が現在直面しているリスクと課題を考えれば、メタ・プラットフォームズの取締役会に対し、取締役会の完全な独立性を担保できていないこと、および株主の権利を強化して企業の長期的価値(LTV)を保護するためのガバナンス改革を行っていないことの責任を問うのは、株主にとってきわめて重要なことです」
こうした株主提案は上場企業の場合、あえなく退けられることが多い。
しかし、本件の投資家グループは上記とは別の株主提案も行っており、そちらはメタ側の反対にもかかわらず採決に持ち込むことに成功した。
別の提案とは、同社が2021年10月に大々的に発表したメタバースプロジェクトについて、今後想定されるポジティブ面とネガティブ面の調査・報告を第三者に委託するよう求めるものだ。
SECはこの株主提案を受け、4月2日にメタに書簡を送付。来たるべき年次株主総会のプロキシーマテリアル(=株主向けの委任状勧誘書類)に、メタバースプロジェクトに関する調査・報告の第三者委託と可否を問う採決を含めるべきとの裁定を伝えた。
アンドリーセンをめぐる問題としては、すでに取締役を13年間にわたって務めていることや、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)との深すぎる関係が「危険信号」の域に達していることが挙げられる。
株主提案を行った投資家グループは、CEOに強大な支配権を与え解任をほぼ不可能にしているデュアルクラス株式(=クラスAの10倍の議決権を持つクラスBが存在する二重構造、ザッカーバーグCEOは後者を75%保有)の導入に際し、アンドリーセンがザッカーバーグに助言する役割を果たしたことを問題視。
また、2018年3月に発覚したケンブリッジ・アナリティカ事件をめぐり、米連邦取引委員会(FTC)から個人情報の管理不備を問われた際、和解のための制裁金として当初1億600万ドルが予定されていたのに対し、ザッカーバーグCEOの個人的責任を問わないことを条件に50億ドルもの大金を支払う交渉に関与した可能性も指摘している。
アメリカを代表するベンチャーキャピタル(VC)アンドリーセン・ホロヴィッツの共同創業者として知られるアンドリーセンは、Web3(=ブロックチェーン技術を活用した非中央集権型の次世代インターネット)やメタバース関連のスタートアップやプロジェクトに大きな投資を行っている。
メタ・プラットフォームズの内部では、この投資が同分野での投資計画を進める同社の利益と相反するおそれがあることから、アンドリーセンが取締役を辞任するとの見方が出ている。
メタがSECに最近提出した委任状勧誘書類によれば、アンドリーセンの保有する(取締役報酬としての)譲渡制限付株式は5月15日に権利確定する予定だが、現在保有する以上の株式報酬については受け取りを辞退するという。
なお、米決済大手ペイパルの創業者でメタの取締役を17年間務めたピーター・ティールもすでに2月、(トランプ支持の共和党大統領候補支援に注力することを理由に)今回の年次株主総会を限りとする退任を表明している。
また、2019年にメタの取締役に就任したアルフォードについて、先の株主提案を行った投資家グループは、ザッカーバーグCEOと妻のプリシラ・チャンが運営する慈善団体チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブを通じた深い関係を問題視している。
アルフォードは現在の肩書きこそペイパルのエグゼクティブバイスプレジデントだが、メタの取締役に就任した当時はチャン・ザッカーバーグ・イニシアティブの最高技術責任者(CTO)だった。
投資家グループはこの(ザッカーバーグ夫婦との)関係性を理由に、アルフォードが「独立」社外取締役としての適格性を欠くと指摘する。
「メタが現在直面する法律や規制、人権問題などさまざまなリスクと、ザッカーバーグ氏が取締役会に対して持つ過剰な影響力を考えたとき、アルフォード氏がメタの監査・リスク監視委員会に発言力を有していることはとくに懸念される問題です」
メタの広報担当にコメントを求めたが回答を拒否された。
(翻訳・編集:川村力)