メタバースとNFTが軸となるWeb3時代。取り残されないようにするためには

新たなビジネス創出のチャンスとして注目されているメタバース、NFT、そしてWeb3。しかし言葉のイメージだけが先行しすぎているようで、メタバースはNFTで儲けるマネーゲーム、といった一側面だけが伝わっている印象が否めない。

結局インターネットの未来はどうなるのかというビジョンが見えにくくなっている。

そこでHEART CATCHとIBMがタッグを組んで開催している「西村真里子のオニワラ!「鬼と笑おう」〜未来をつくる座談会 powered by IBM Future Design Lab.(以下、オニワラ)」の第8回「メタバースは生活を変えるのか? 〜圧倒的デジタルツインと新たなクリエイターズエコノミーから探る」を企画・登壇したHEART CATCH代表の西村真里子氏と、IBM Future Design Lab. チーフプロデューサーの岸本拓磨氏に、イベントを振り返ってもらった。

登壇者は西村氏(上段左)、岸本氏(下段真ん中)のほか、静岡県交通基盤部政策管理局 建設政策課 イノベーション推進班 班長の杉本直也氏(上段右)、VR/NFTアーティストのせきぐちあいみ氏(上段真ん中)、日本IBM 執行役員の藤森慶太氏(下段右)、日本IBM UI/UXデザイナーの山田龍平氏(下段左)。

なぜ今、メタバースを題材にしたのか

コロナでリアルな行動が制限されたことにより、一気にメタバースの世界が身近なものになりました。Fortnite上でのライブ、Robloxでのファッションショー、そしてCES 2022年のSamsungのように企業も仮想空間に土地を買ってプロモーションを始めています。

フィジカルな世界でのコミュニケーションはもちろん大切ですが、3D仮想空間を2003年に正式公開した『セカンドライフ』という大きなコミュニケーションインパクトを経て、デバイスやネットワーク環境も整いつつあり、MetaのHorizon Workroomsのようにオンラインでも相手を感じながらコミュニケーションができるようになった今だからこそ、メタバースを題材としました」(西村氏)


「IBMはAI、ブロックチェーン、量子コンピューターなど、さまざまな次世代テクノロジーを扱っている企業です。

またIBMの中で、『インタラクティブエクスペリエンス(=面白い体験)』をデザインする組織がありまして、その体験の次世代におけるデザインはなんたるかを考えると、今、メタバースでの体験設計はど真ん中だと考えています。」(岸本氏)

デジタルツインとメタバースはどのように関係するか

一方で今回のタイトルには「デジタルツイン」の文字が入っている。

測量・設計のデータ活用や、災害時の状況確認、自動運転などさまざまな分野で活用が期待されているデジタルツインだが、メタバースとはどのように関わってくるのだろうか。

ひとつの試みが、静岡県が推進する「VIRTUAL SHIZUOKA構想」だ。

これは点群データ(三次元の座標値と色から構成される情報)を用いたデジタルツインで、災害状況の把握や文化財保護、森林管理、観光分野などでの活用を模索している。

熱海・伊豆山の土石流災害では、静岡県が翌日にドローンで撮影したデータを公開、その次の日には誰でも自宅にいながら3D CGの崩壊地を見ることができた。データを正しく扱える技術を持ったクリエイターが協力しあうことで正しい情報を共有できる。これはまさにWeb3の理念そのものだ。

個人で取り組むNFT×メタバースの可能性

せきぐちあいみ氏は、2021年に販売した自分のVR作品のNFTが1300万円の値をつけたことでも有名な、実力あるアーティスト。今回のイベントへの登壇を呼びかけた理由を西村氏はこう語る。

「せきぐちあいみさんはNFTアートを販売するにあたって、まずクリエイターご自身で挑戦し、どう価値を高めていくかを実践したことが何よりも凄いと尊敬しています。

今まではギャラリーを介さないと売れなかった作品が、アーティストの力だけで売れる世界を実現させたNFTという仕組みも素晴らしい。またメタバースは、日本がもっと世界に対して新しいプレゼンスを出せるものとして期待しています」(西村氏)

2021年夏にリリースされた日本の小学3年生が夏休みの宿題で作ったNFTアート「Zombie Zoo」が世界中で取引され、価値を高め続けている。

一方で、NFTはデジタルデータを唯一無二の存在であると証明して価値を与えることができるものの、一時的なムーブメントで収束してしまう可能性もある。

「その上で、子どもも大人も、誰でも素晴らしいものを作ったらNFTでの販売にチャレンジしてほしい。利益を得るためというよりも、NFTというプラットフォームに自分の作品を乗せることで、自分が作ったものがどういう人たちに刺さるのか、小さな実験を繰り返してほしい。

小さい時からマネタイズも含めて実験することによって、次世代のスピルバーグやピカソが生まれてくる土壌がメタバース空間上にできることを期待しています」(西村氏)

日本が取り組むべきメタバースとは?

文化と産業の面でメタバースと日本ってとても相性がいいと思っているんですよ。日本人が入ると、アバターのクオリティも格段にアップすると言われています。国家レベルの戦略として日本は取り組むべきです」(岸本氏)

メタバース空間は自分のクリエイティブを思う存分発揮できる世界。物理現象に囚われず自由な建築が楽しめるし、アバターのデザインにもこだわれる。

「マインクラフトで遊んでいる小学生って、自分が3D CGクリエイターとしてコンテンツを作っていると思ってないと思うんです。TikTokをやっている高校生もそうですけど、実感はなくてもみんな大量に映像クリエイターとして動画を作っているわけです。

そのようなクリエイティブが好きな人、新しい世代のクリエイターがもっと入ってきやすいように、こういった活動が良い方向性で正しい評価を得られるエコシステムをちゃんと作っていきたいですね」(岸本氏)

IBMはメタバースを活用した取り組みを従来から行ってきた。

「IBMは2016年に、川原礫氏原作の小説/アニメ『ソードアート・オンライン』のアルファテスター向けVRイベントを開催しました。これは当時のIBMの技術を用いて『ソードアート・オンライン』の世界を体験できるものだったのですが、募集定員約200人に対して10万人以上の応募数がありました」(岸本氏)

SF小説や映画、アニメの世界で語られてきたことが、一部とはいえ現実で体験できるということで、大いに注目を集めた。さらに、メタバース×医療の取り組みも始まっている。

順天堂大学とIBMが取り組む、メタバースを用いた医療サービス構築に向けた共同研究。

新しいテクノロジーをメタバースと掛け合わせることで、面白いこと、社会にとって役立つことができるんですよね。

例えばメタバース×医療のケースではバーチャル臓器模型などを用いて、アバターとして病状や処置の説明を受けたり、病気を疑似体験したり、メンタルケアとしてアバターを用いて面会できる場を開設したりと、病院での患者体験向上が期待できます。

例えば、パーキンソン病の患者さんって脳でイメージすることが大事で、脳で歩けるんだ、というイメージを持つことによって、歩行が可能になることがあるんですが、それを仮想でアバターの体験として提供してあげる。単にメタバースに仮想世界を構築するだけでなく、メタバースからリアルに持ってくるような体験設計も可能になるはずです」(岸本氏)

また映像撮影とほぼ同時に高精細な3Dデータを作る「ボリュメトリックビデオ技術」に関してもキヤノンと開発を進めている。IBMの並列サーバーや広帯域ストレージを用いることで、数秒で3Dモデルを生成できるそうだ。

現実にあるものをほぼリアルタイムでメタバースの中に持ち込めるようになってくると、本当に面白い世の中になると思うんですよね。この技術がどのように役に立つかを考えるのが今後の課題です」(岸本氏)

立体グラフィックレコーディングという新しいデザインの芽

今回のオニワラの様子はYouTubeでアーカイブが公開されているが、中でも注目してほしいのが、仮想空間内で繰り広げられたグラフィックレコーディング

通常のグラフィックレコーディングは2次元の紙の上に描かれるものだが、このイベントでは山田龍平氏がVRヘッドセットを装着し、それぞれのトークを聞きながらトピックを立体的にまとめていた。これが実に分かりやすいのだ。

山田氏はせきぐちあいみ氏のVRアート作品をリスペクトし、仮想空間の中でキャラクターの口の中に入っていくとそこに情報空間があるという仕掛けにした。話題の前後関係もつかみやすい。

もし私たちもVRヘッドセットをかぶって立体化されたグラフィックレコーディングを見たら、より短時間で深く学習できるんじゃないか、とも思わせてくれる。

現在はまだ定義が定まっていないメタバースやNFTを軸とするWeb3のビジネス活用。だからこそ、ふたりともいち早く乗り込んでチャレンジすることが大事だと言う。

「今回のオニワラでも視聴者から『NFTっていかがわしくて、どこから入ればいいか分かりません』という質問があったんですね。それに対して私が思うのは、まずやってみましょうと。

もちろんいきなり数十万円を使えというのではなく、例えば1000円とか3000円とか、自分が許容できる範囲でやってみるといい。実際に試してみないとその新しい世界に入って行けませんし、参加して自分ごと化するというのが大事です」(西村氏)


Web1は読む、Web2は書く、そしてWeb3は参加する体験こそがキーになる。新しい世界を判断したいのであれば、やはり中に入って体験することです。体験した上で知見というか役に立つものがあれば、惜しみなく他の人に共有していくといいんじゃないかなという気がします」(岸本氏)


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