ダンキンは、ホットコーヒーをこぼした利用客から訴えられたことが何度かある。
AP Photo/Gene J. Puskar, File
- ニュージャージー州の男性が4月上旬、ホットコーヒーをこぼしたことで、ダンキンに対して訴訟を起こした。
- ダンキンやスターバックスは過去に、ホットドリンクによってケガを負った利用客から訴えられたことがある。
- 専門家は、ホットコーヒーに関する訴訟事件は「ばかげた訴訟の典型だ」と述べている。
ダンキン(Dunkin')は、ホットコーヒーをこぼしたことで利用客から訴えられた最新のチェーン店だ。Insiderが確認した訴訟内容によると、ダンキンを訴えた原告はある夫婦だ。ホットコーヒーが夫の膝にこぼれ、ケガをしたという。
エバン・アーリントン(Evan Arlington)と妻のステファニー・アーリントン・マシアス(Stephanie Arlington-Macias)は2022年4月4日、ニュージャージー州のパサイク郡上級裁判所に訴えを起こした。
訴訟内容によると、ニュージャージー州トトワにあるダンキンで、夫婦がホットコーヒー2つとアイスコーヒー1つを注文したときに、問題が起きた。
「被告はコーヒーが熱すぎたという点で、原告に対して準備、販売、サービスを怠った」と訴状には記載されている。さらに「その結果として、原告のエバン・アーリントンは重いケガを負い、この先も大きな痛みや精神的苦痛を負うことになった」と訴えている。
アーリントンはこの事件によって後遺症の残るケガを負い、この先の治療費を用意しなくてはならず、その結果、損害を受けたという。
妻のアーリントン・マシアスも影響を受けなかったわけではない。訴訟内容には、今回の事件に伴い、彼女は「夫の助けや癒し、夫婦の絆を失った」と記述されている。
アーリントンの担当弁護士で、ニュージャージー州の弁護士事務所Bendit Weinstockのウィリアム・ゴールド(William Gold)は、ダンキンで提供するホットコーヒーの温度帯とアーリントンに提供した飲み物の温度について、ダンキンからの回答を求めている。
ダンキンは、コーヒーの温度をめぐって、近年別の訴訟を起こされている。
マサチューセッツ州ブロックトンのアンジェラ・バルバロッサ(Angela Barbarosa)は2021年、ダンキンで注文したホットコーヒーがトレーからこぼれ、重いやけどと神経損傷を負ったとして、このチェーンを訴えた。
訴状によると「ダンキンの従業員はコーヒーを注いたカップにきちんと蓋をせず、トレイにしっかりと固定しなかったため、トレイを車に入れたときに、熱いコーヒーがこぼれて原告にかかり、脚と尻にやけどを負った」という。
この一件によって、バルバロッサは身体にやけどの跡が残った。彼女は、ホットコーヒーが染みたレギンスを脱がざるを得なかったときにスタッフに嘲笑され、「極度の恥ずかしさ」を味わったと訴えている。
他のコーヒーチェーンでは、スターバックス(Starbucks)が、熱い飲み物によるケガで訴えられたことがある。
テキサス州のある女性が2021年8月、注文とは違うドリンクをスタッフから渡され、それを返した際にⅠ度とⅡ度のやけどを負ったと主張し訴えた。
ハリス郡地方裁判所に提訴された訴状では、同社は飲み物のフタをかぶせて、ドライブスルーを安全に利用できるようにするためのバリスタの教育と管理を怠ったと非難している。
ダンキンとスターバックスにコメントを求めたが、回答は得られていない。
温かい飲み物をこぼすことに関した訴訟を39年間扱ってきた法律の専門家、ダン・コックス(Dan Cox)は、通常どのように飲み物が扱われたことかが問題だと、Insiderに語った。「毎日コーヒーや紅茶を飲む人々は、事件など起こさずに大量の飲み物を消費している」とコックスは語った。
「不適切に利用されたとき、例えば、こぼしてしまったときにだけ問題になる」
コックスは、コーヒーチェーン店に対して原告が勝訴する見込みは低いと述べた。彼はホットコーヒーをこぼしたことに関する80件以上の訴訟に関わっているが「終わりが見えない」という。
コックスと同様に、バージニア州の法律事務所Breit Biniazanで、傷害の弁護を行っているケヴィン・ビニアザン(Kevin Biniazan)は、ホットコーヒーをこぼしてケガをした場合の訴訟は勝つことが難しく、多くの人にとって「ばかげだ訴訟の典型だ」とInsiderに話している。
アメリカでのこの種の裁判は常に「商品または提供されたものが、不当に危険か」が焦点になるとビニアザンは語った。また、「このような訴訟で勝つためには、熱いことを証明するだけでは不十分で、不当に危険であることを証明しなければならない」と彼は付け加えた。
「コーヒーを提供する人が合理的に行動し、その状況で期待されることを行っていれば、結果的にコーヒーをこぼしたからといって、過失や不当な行為をしたことにはならない」
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)