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多くの企業が従業員の出社勤務を推し進めている。しかし、Slackとそのパートナーによる研究グループであるフーチャー・フォーラム(Future Forum)が2022年4月19日に発表した報告書によると、会社員の仕事関連のストレスや不安は2020年6月の調査開始以来、最悪のレベルに達したという。
中でも、出社勤務をせざるを得ないナレッジワーカーのうち、「職場におけるストレスや不安の程度に問題を感じていない」と答えたのはわずか6.7%に過ぎず、直近の四半期との比較で11.1%低下した。全体的に見た場合、スコアが最低なのは、週5日の出社勤務を余儀なくされている従業員だった。
なお、この四半期報告書は、2022年1〜2月にアメリカ、オーストラリア、フランス、ドイツ、イギリス、日本の6カ国で行った1万名を超えるナレッジワーカーに対する調査結果で、第6次報告書となる。
一流人材が流出する
フューチャー・フォーラムのバイス・プレジデントであるシーラ・サブラマニアン(Sheela Subramanian)はInsiderの取材に対し、こう語る。
「人々はここ何年か、時間も場所も柔軟に働けるという経験をしてきました。それなのに会社は『2020年の働き方に戻せ』と言うわけです。そのせいで多くの従業員がもがいているのを私たちは目の当たりにしています」
従業員の声は明快で、彼らは柔軟な働き方を求めている。企業がこのことを無視すれば、「大退職時代」に一流人材を失うことにもなりかねない、とサブラマニアンは言い添える。同調査によると、勤務地を柔軟に決められない労働者は新たに職を探す可能性が20%高くなることが分かっている。
またサブラマニアンは、労働時間にもっと柔軟性を持たせてほしいという労働者の声にも注目している。回答者の94%がスケジュールに柔軟性がほしいと答える一方で、51%が自分の会社にはフレックスタイム制度がないと報告しているのだ。
ダブルスタンダードな経営陣
今回の調査では、従業員は勤務形態の先行きが不透明であることにも不満を感じているようだとサブラマニアンは指摘する。
それでいて、経営陣の姿勢はダブルスタンダードだ。グーグルやマイクロソフトなど、いくつかの大手企業が最近、従業員に出社勤務に戻るように命じたが、にもかかわらず経営陣は積極的に出社勤務をしていない可能性が高いという。
2四半期前、フューチャー・フォーラムは世界中の企業のCクラス(CEO、CFO、COOなど)300名に対して調査を開始した。今回の調査によれば、役員はそうでない社員と比較して半分の時間しか出社していないことが分かった。
「経営陣と従業員の間には厄介な断絶があるのです。経営陣は『私と同じように出社して働いてくれ』ではなく、『私が言う通りにしなさい』と言っているのです。従業員には会社に戻れと命じておきながら、自分たちは率先してお手本を見せようとはしません」
多様性を味方につけられるか
柔軟性を高めることは従業員の満足度を高め、組織に多様性を持たせる鍵にもなり得る。調査によれば、仕事を持つ母親や非白人の従業員は、出社とリモートワークを組み合わせた勤務形態や遠隔勤務を望む傾向が強い。
サブラマニアンは、企業がこのことに関して行動を起こさなければ、より公平な職場を目指す昨今の動きに逆行することにもなりかねないと指摘する。
「対面を必要とする仕事も確かにあります。しかし多くの経営者や役員は、出社勤務は必須だと端から思い込んでいます。画一的なモデルを捨て、それぞれの社員の仕事がリモートワークで可能かどうかを検討することが重要なのです」
リーダーにとって重要なのは、監視することではなく、信頼関係によってメンバーをマネジメントすることだ。
「行動を追跡するのではなく、結果で評価するのです。大切なのは、従業員が成果を挙げられるよう、どのような行動規範を組織として設定するかです」
多様なバックグラウンドを持つ人同士が、最低限守るべきルールのもとで協力し合いながら柔軟な働き方をする。その土台を作ることこそが、いまリーダーに求められているということだろう。
※この記事は2022年5月6日初出の記事の再掲です。
[原文:Stress and anxiety are skyrocketing as companies mandate in-person work, survey suggests]
(編集・野田翔)