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リアル講義再開に戸惑う大学生のホンネ…「今さら対面は正直キツい」

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今春から対面授業を中心にする大学が増えている。

撮影:今村拓馬

「3年生だけど『え、誰?』から始まりそう、1年生みたい」

「別キャンパスで開講される講義を受けたいけど、往復2時間1200円が痛い」

「朝早く起きて満員電車に乗るのは億劫」

「会社もテレワークなどを使ってるんだから、大学もうまく使って欲しい」

「ワクチンを打てない人、打ちたくない人もいるので、対面講義を半強制的に強いるのはどうなのかなと思う」

新型コロナウイルスの流行が始まった2020年春から続いてきた大学のオンライン講義が、徐々に対面に戻りつつある。

文部科学省は、3月22日に全国の大学に対して対面授業に取り組むよう通知を発表。「原則対面」と方針を打ち出している大学もある。

「元通りの大学生活」を取り戻そうとする動きの中で、2年間キャンパスから離れた学生生活を送ってきた大学生たちの間には、期待と不安が渦巻いている。

文科省

文部科学省は全国の大学に対して、「感染対策を十分に講じた上で、面接授業の実施に適切に取り組んでいただきたい」などとする通知を発表している。

撮影:三ツ村崇志

「何が変わるのか分からない……」対面の経験ない世代

「対面講義は嬉しいけど、いざ履修を組もうとすると……」と言葉を濁したのは、都内の私立大学に通う3年生のはるかさん(仮名)だ。

大学に入学した2020年春からの2年間で、本来通うはずだったキャンパスで対面講義を受けることができたのは、テスト期間を除くと15回ほどだったという。

この春からはるかさんの大学では、大半の講義を対面で実施する方針が示された。これで憧れのキャンパスライフが送れると喜ぶ一方で、「正直、何が変わるのかよく分からない」という困惑もある。

はるかさんのように大学に入学した直後に1度目の緊急事態宣言を迎えた今の大学3年生にとって、キャンパスで過ごす大学生活のイメージが湧かないのだ。

対面講義が増えることで、空きコマの調整や、通学にかかる時間も考慮しなければならないことは想像がつく。ただ、オンライン講義で増加したと言われる課題の量などがどうなるかは未知数だ。

「生活は一変しそうだけど、具体的に対面授業で何が変わるのか経験したことがないからよくわからない」(はるかさん)

と、先を見通せない不安を口にした。

「大学生活が戻ってきた」ものの、キャンパスで1人は不安

対面授業の経験がない学生は、新しい学生生活のイメージが湧かない。

コロナ禍への突入と共に大学へと進学した学生にとって、対面講義中心の学生生活はイメージが湧きにくい。

撮影:今村拓馬

「本来の自分の生活が戻ってきた感じがします」

対面講義が再開することに対してポジティブな印象を語るのは、新型コロナウイルスの流行が拡大が始まった2020年春に上京した大学3年生のあやかさん(仮名)だ。

あやかさんは、都会での大学生活に憧れて上京したものの、この2年間、思い描いていたキャンパスライフを送ることはできなかった。

春から拡大した対面講義に期待を膨らませているあやかさんだが、講義を一緒に受けるような友人関係が少ないことに、一抹の不安も。

あやかさんが通う都内の私立大学では、2021年度からオンラインか対面かを学生が選択できた。ただ、あやかさんは満員電車への抵抗感などから、基本的にはオンラインで講義に参加し続けていたという。

「Zoomから対面になった時に、友達が少ないとしんどいなと思うようになりました。(3年生になると)必修で学年全員が集まる講義もなく、友達の輪もできにくいので、これから急に対面になるというのはきついなと思います」

対面講義は歓迎も「就活との両立に困る」

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対面授業再開と就職活動の両立に悩む学生もいる。(写真はイメージです)

撮影:今村拓馬

都内の私立大学に通う4年生のかなさん(仮名)は、大学の講義が対面中心に戻ることが決まり、喜びを隠せない。

「正直、やっと戻れるのか、と思います。この2年間、大学生の学生生活は止まっていました。私たちがキャンパスに行けていないことを、世間は忘れていると思っていましたから」

一方で、学生生活と就職活動の両立がうまくいくか不安もある。コロナ禍の就職活動では、オンライン面接が定着した。

「オンライン面接はわざわざ企業に出向く必要がなく、楽でいいのですが、ワンルームで一人暮らしをしているので、自宅での面接は面接官に生活が筒抜けになってしまう不安もありました。そういう意味で大学の空き教室を面接に使えるのは非常にありがたかったです」

大学の講義が春から対面に移行することで「面接用に使える教室が減ってしまうのが心配です」と話す。

「オンラインの方が都合が良い」

都内の私立大学2年生のかずやさん(仮名)は「オンライン講義はとてもありがたかった」と、この1年間の大学生活を振り返る。

かずやさんの場合、大学に入学した2021年の春は、週1度の実習を除き全ての講義がオンラインだった。後期になり、4度目の緊急事態宣言が解除されると、一部で対面講義が導入されたものの、かずやさんは学生起業の準備をしていたことに加えて、そもそもキャンパスが遠かったこともあり、ほとんどの講義をオンラインで受講していたという。また、年が明けてからは長期インターンも始めた。

この春から、かずやさんの大学は大幅に対面講義を増やす方針を示しているが、かずやさんとしては学外での取り組みにも集中できるオンライン講義の方が都合が良いというのが本音だ。

「個人的には、学生が希望する受講方法を尊重できる選択式がいいと思います」(かずやさん)

「今さら元に戻すのは難しい」

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オンライン講義に合わせた大学生活を送る学生からは戸惑いの声もある。

Shutterstock/makieni

かずやさんのように、大学生活の軸足が大きく変わった学生は多い。

都内の大学に通う4年生のまきさん(仮名)も、大学生活をガラリと変えた1人だ。

「オンライン講義は学校に行かなくて良いのでやっぱり楽です。私は1人で勉強する方が集中できたので。大学の友人関係に左右されず好きな講義が取れるようになって、興味があった分野の講義に積極的にチャレンジしました」

まきさんはコロナ禍で念願の長期インターンにも挑戦。

「2021年の3月に長期インターンシップを始めました。大学の講義は、自分の好きなタイミングで受講できるオンデマンド型のオンライン講義だったので、フルコミットで参加していました。生活は大学よりも長期インターンの方が主軸になっていました。

この2年間で人と会うハードルや価値観が変わったという彼女は、春から大学に行くのは億劫だと語る。

「準備をして大学に行って……というのはもう正直しんどいです。そういった時間がもったいないと感じます。自分の中で人に会うハードルも上がりました。あとは、就活もあるので学校に行っていられないです」(まきさん)

また、別の大学に通う4年生のみゆさん(仮名)は、

「(コロナ禍では)大学の講義が、ただこなすものになりました。自由に使える時間が増えたものの、アルバイトも朝から夕方まで入る事が可能になり、コロナ禍の自分はフリーターのようだと感じています

とコロナ禍での学生生活を振り返った。

ただ、「この2年で生活様式が変わりすぎて、今さら大学を主軸にした生活に戻すことは難しい」ともいう。実際、みゆさんは春からもフルオンデマンドで講義を受講しようと考えているそうだ。

「この2年で消滅したコミュニティも多く、大学の友人もかなり減りました。仲が良い友人とは、フルオンデマンドでできた空き時間に会えばいいかなと」(みゆさん)

犠牲になった私たちから、なにか進歩を

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学生たちは、犠牲からの学びを願っている。

撮影:今村拓馬

大学はいったいなんのためにあるのか。コロナ禍は、学生たちに大学の存在価値を考えさせた。

都内の私立大学に通う4年生のゆうすけさんは「僕はオンライン講義に反対ではないけれど、大学には大学生が対面で活動できる環境を担保して欲しいと考えています」と対面講義の再開を歓迎する。

また、移動時間がかからないことや、時間の制約がないことなど、オンライン講義のメリットは簡単に挙げられるものの「対面のメリットは明示しにくく、数値化できない」(ゆうすけさん)とも。

「勉強や教育は合理化しようと思えばいくらでもできます。ただ、大学は合理的であるべきではないと思うんです。図書館に本があんなに何万冊もあるのだって誰かにとってはムダで、誰かにとっては可能性じゃないですか。だからオンライン講義の客観的なメリットを享受する為だけに、対面の機会を軽視するのは個人的にはあまり好きではないんです」(ゆうすけさん)

一方で、春から横並びに対面講義を再開しようとする大学に対して、もやもやが募る学生もいた。

都内の私立大学に通う3年生のさちさんは、「『対面こそ正義』の様な雰囲気を感じます」と語る。単に新型コロナウイルスが流行する以前の状態に戻すだけでよいのか、疑問を感じるという。

「このコロナ禍でのオンライン騒動をそのまま終わりにするのではなく、プラスに変えてほしい。大学が悪いわけではありませんが、私たちの大学生活が犠牲になったのは事実です。この犠牲をなあなあにするのではなくプラスにし発展させてほしいと感じています。」

(取材・文章 猪野陽菜大隈優中尾咲希柳瀬綺乃 編集・三ツ村崇志

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