無料のメールマガジンに登録

平日17時にBusiness Insider Japanのメルマガをお届け。利用規約を確認


「生理の常識を変えた」フェムテック3社に聞く吸水ショーツ誕生秘話

吸水ショーツ サムネ

吸水ショーツはそれ自体が水分を吸収してくれるので、ナプキンなど使用時のごわつきがなく快適に過ごせるのが魅力(左からBe-AJapan、フラン、Period.の商品)。

楽天市場はフェムテック・フェムケア商品の理解を深めるため、吸水ショーツ3社によるオンライントークセッションを2022年4月1日に開催した。登壇したのは、Be-AJapan代表取締役COOの高橋くみさん、Period. 代表の寺尾彩加さん、フラン商品部長の奥村登代さんだ。

商品開発のきっかけ、各社の吸水ショーツの特徴、フェムテックの現在地と今後の展望について聞いた。

目標額の100倍「1億超」の支援から始まった

写真

Be-AJapanのブランドメッセージは「Girls Be Ambitious」。そのBeとAをとって「ベア」とブランド名を表現。高橋さんはシングルマザーに育てられたこともあり「ジェンダー平等」と「女性のエンパワーメント」に人一倍の関心と持論を持っているそう。

——Be-AJapan(以下、ベア)の吸水ショーツが生まれた経緯を教えてください。

高橋くみさん(以下、高橋):私はアメリカに住んでいるのですが、あるとき吸水ショーツの存在を知りました。日本人に合った良いものを作りたいと思ったことが開発のきっかけです。

アメリカではピルやタンポンの普及率が高いのですが、日本のピル普及率は0.9%、タンポンは約10%。やはり最も快適で簡単に使えるのは吸水ショーツだと思ったのです。

もともと共同代表の山本と美容ブランドを14年間展開しており、ベアに関しては2020年6〜7月にクラウドファンディングからデビューしました。

当初の目標額は100万円でしたが、それを数時間で達成し、最終日の45日目には1億円を超える支援をいただきました。

——ベアの吸水ショーツは、生理2日目など経血量が多い日でも1枚で過ごせることを目標に開発したそうですね。

高橋:はい。目標が高いために最初は受け入れてくれる工場がなかなか見つかりませんでした。20社目でようやく返事をもらえたのが尿もれ下着の技術を持つ工場で、2年間以上かけて一緒に作り上げました。

発売から1年半で8万枚以上を売り上げ、お客様からは「人生が変わった」という声を多数いただいています。

写真

寺尾さんは現在28歳。吸水ショーツのビジネスを始めてから結婚・出産、さらに卵子凍結などに関しても友人と話せるようになり、選択肢の広がりを感じていると言う。

——一方、Period.の吸水ショーツは生理期間だけでなく普段でも履きやすいデザインにしているとか。

寺尾彩加さん(以下、寺尾):そうですね、私はもともと「生理の時に特別な何かをする」ことがちょっと違うのかなと思っていました。Period.の商品は普段のランジェリーと同じようなデザインと履き心地を目指し、かつ自宅の洗濯機でも簡単に洗えるようにしています。

——Period.は日本初の吸水ショーツ専門ブランドと聞きました。創業のきっかけやブランドとして大切にしている点を教えてください。

寺尾:高橋さんと似ていますが、アメリカの吸水ショーツの創業者の方のインタビュー記事を読んだことがきっかけでした。誰も生み出していなかったものを作っているという点に感銘を受けたのです。

また、私自身が20代半ばは気分の浮き沈みが激しくて悩んでいたのですが、吸水ショーツの存在を知って改めて生理について調べたところ、それが実はPMS(月経前症候群)だったことに気付いて。

病院へ行ってピルを処方してもらったら、生活が劇的に改善しました。その経験から、ショーツを通して女性の体のこと、生理のことをしっかり伝えながら「新しい生理の選択肢」を増やしていきたいと思ってブランドを展開しています。

写真

奥村さんは下着専門店を経営する両親のもと、幼少時から下着やレースに囲まれて育ち、大学卒業後にフランに入社。現在は商品の企画責任者として、社長である弟と会社を経営。吸水ショーツ「comfits」に関しても開発から素材、パターン、生産管理、イメージ等全てに携わる。

——フラン(以下、フラン)の吸水ショーツは下着専門店としてのこだわりが詰まっているそうですね。

奥村登代さん(以下、奥村):はい。フランは下着専門店を展開しており、今年で創業41周年を迎えました。フランの吸水ショーツ「comfits(コンフィッツ)」には大切にしている3つの柱があります。

1つ目は「履き心地」。創業時からのこだわりです。

2つ目は「豊富なサイズ展開」。これも下着専門店としては外せません。XS〜3Lサイズまで計6サイズ展開しています。

3つ目は「日用品として選びやすい価格」。生理がある全ての方の選択肢の1つにしたいからこそ、贅沢品ではなく日用品としての価格を目指して、3枚で7000円以下の価格を実現しました。

育児中のお風呂、実家への帰省で「役立つ」

——まだ吸水ショーツを使ったことがない人が多いと思います。どのタイミングで試したら良いでしょうか?

寺尾:生理の始まりと終わりかけのとき、ナプキンをするかしないか迷うタイミングがあると思いますので、そこからスタートしてみると良いと思います。

生理は体調や経血量など個人差があるので、試しながら使ってみてください。もちろん、不安な時はナプキンやタンポンなどと併用していただいて大丈夫です。

——吸水ショーツは生理中の不快感を減らしてくれるだけでなく、自分のタイミングでトイレに行くことが難しい方、例えば乳児を持つお母さんなどにも良さそうですね。

奥村:一人で育児に奮闘しているお母さんはとても多いですよね。吸水ショーツはナプキンをセットする手間がなく、お風呂上がりにその場ですっと履けるので、生理期間中のお風呂の時は本当に役立つという声をいただきます。

また、年末年始などで義理の実家に帰省した際、汚物入れがなくてナプキンを持ち帰っていたけれど、吸水ショーツなら問題解決できそうという声もいただいています。

——吸水ショーツが果たす役割は、今後さらに増えそうですね。

高橋:そうですね。ベアでは医療従事者や知的障害があるお子さんに吸水ショーツを寄贈しています。特に生理を理解することが難しい知的障害の方のご両親からは反響が大きく、「吸水ショーツに本当に救われた」という声をいただきました。

写真

ショーツが吸水していく様子(Be-AJapanの商品)

「生理は当たり前にあるもの」フェムテックが意識を変えた

——近年、フェムテックという言葉が広まりつつありますが、吸水ショーツのビジネスに影響はありますか?

高橋:ありますね。2021年流行語大賞に「フェムテック」がノミネートされましたが、そうやって世の中に広まっていくことは女性に対する問題を解決しようという動きなので喜ばしいことだと思います。ただ、流行に乗じて粗悪なコピー商品が出てきているのも事実で、それは女性たちのためにならないのではないかと危惧しているところです。

——フェムテックという言葉の浸透には、光と影があるということですね。ポジティブな面はどういうところでしょう?

寺尾:良い面は、みんなの生理に対する意識が変化してきたことだと感じます。 Period.を創業した2018年時点は、女性同士でも生理については公共の場で話しづらい雰囲気でした。それが世の中でフェムテックという言葉が使われるようになって、「生理は当たり前にあるものだ」という意識に変化しつつあります。

例えば、最近ではPeriod.のポップアップストアに大企業の男性役員の方が来店して「会社では女性の生理とどのように付き合っていけば良いと思いますか?」と質問を受けました。今まではそういうコーナーに男性が来ること自体がなかったので驚きでしたね。

写真

「若い方がカップルでストアに立ち寄ることも増えて、フェムテックという言葉を通じて今までの男女の溝みたいなものが埋まってきたという印象」と寺尾さんは語る。写真のモデルが着用しているのはPeriod.の商品。

——先ほど粗悪品が出てくるという話がありましたが、他にもネガティブな面はありますか?

寺尾:消費者がフェムテックの使い方を誤ってしまうと良くないと思っています。

生理は病気のサインになり得るものなので、本来なら受診して根本治療すべきところを、フェムテックが進みすぎて緩和療法に流れ、気が付いた時には手遅れ……という事態を懸念しています。それを防ぐには、私たちが事業者として正しい知識を消費者の方々に提供していく必要があります。

——フェムテックと言うと、最先端のテクノロジーを使っている印象を持ちます。

高橋:吸水ショーツはローテクではありますが、ナプキンの登場から60年の間、生理用品があまり進化してこなかったことを考えると、素材を含めて高度なテクノロジーを使った製品だと思っています。

寺尾:「テック」と付くとIT的なものをイメージしがちですが、ローテクも進化しています。フェムテックの流行りを受けて、生地業界も今までになかった生地を生産し始めていますし、それに伴って吸水ショーツもレベルアップしています。

——フェムテック事業を始めて変化したことはありますか?

高橋:すごく変わりましたね。新しい市場を築けたと思っています。今まで生理用品の市場が年間1000億円弱、サニタリーショーツに限定すると15億円ほどの市場だったので、日本のフェムテック市場の課題の1つは資金調達だと考えていました。

そこに、ベアだけでもクラウドファンディングを行った1カ月半で1億円の支援があったのです。加えて、2021年には2億円弱の資金調達に成功し、フェムテック市場に対する期待と広がりを感じています。

——吸水ショーツの販売を始めてから、お客様の反応も変わったそうですね。

奥村:お客様から感謝のメッセージをいただくことが本当に増えました。フランは下着専門店を直営でも展開しているので、それまでお客様からクレームをいただくことはありましたが、良い反応は店側にはなかなか入ってきませんでした。

嬉しさと同時にそれだけ女性が我慢していた事実に改めて気付かされ、今後も良い商品を作っていかなくてはと感じています。

写真

フランでは顧客のリクエストに応えて吸水ショーツの種類を増やし、カラーバリエーションも豊富(写真は同社商品)。

——最後に今後、企業として商品を通じて果たしたい役割は何でしょうか?

高橋:ベアでは、女性が生理や女性特有の不調によって諦めることのない社会を作りたいと本気で思っています。

先ほどお話しした吸水ショーツの寄付を始め、学校での性教育が足りてないという意識から、親子で受けられる生理セミナーを開催しています。

奥村:フランでは、お客様はもちろんもともと社員の多くが女性なので、「女性を幸せにする」という大前提はありましたが、吸水ショーツの事業を通じてその想いがより強まりました。

そこで吸水ショーツの売り上げの一部を社団法人Colaboなどの女性を支援する団体へのサポートに使ってもらっています。

寺尾:日本は女性のヘルスケアについて遅れている部分が多いと感じているので、Period.では吸水ショーツを通して自分の体について知ってもらい、体に合ったものを自分の意思で選択して毎日を快適に過ごせるよう後押しできたらと思っています。

(文・比惠島由理子、写真・Be-AJapan、フラン、Period.)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み