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迷走する総務省。携帯ショップの「不要な料金オプション」増加の背景にある不都合な真実

総務省では現在、「競争ルールの検証に関するWG」並びに「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」という有識者会議が開催されている。

そのなかでテーマの1つとしてあげられているのが、キャリアショップの問題だ。

販売代理店における不適切な行為や、それを助長していると思われるキャリアの評価指標に問題がないか、総務省のサイトに「携帯電話販売代理店に関する情報提供窓口」を開設し、情報収集を進めて4月25日に公開された

また、総務省では2022年1月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、ワイモバイルおよびUQスポットのショップ店員、425人に対してウェブ調査会社をアンケートも実施している。

「利用者ニーズを逸脱した提案をせざるを得ない」

窓口に寄せられた声

実際に情報窓口に寄せられた声の抜粋。

出典:総務省「「携帯電話販売代理店に関する情報提供窓口」等に寄せられた情報」(2022年4月25日公開)より

情報提供窓口には、以下のような声が寄せられていた。

「キャリアから求められるポートイン(後述)評価指標が高くなっている。達成しないとショップに入る支援費が減ってしまう。
ショップの運営を継続するには、利用者ニーズを逸脱した提案をせざるを得ない」

代理店への各指標が、ポートインや新規契約関係ばかり。お客様満足度をと言うが、満足度を上げてもポートインを上げないと代理店あての支援費は入らない。
ポートインを上げていれば、満足度がどんなに低くても表彰され、代理店あての運営支援金も多くもらえる。コロナ禍だが、来客を増やす ために、イベントやスマホ教室の集客を指示される」

こうした声で、キャリアは代理店に対してポートイン……つまり他社からユーザーを奪い、MNP(Mobile Number Portability:携帯電話番号ポータビリティー)で契約させた実績を高く評価するという点が浮き彫りになった。

これに対して有識者からは「代理店にポートイン指標を設定して手数料を手厚くしている状態を見直すべきではないか」という声が上がっていた。

店頭施策

店頭施策の例。他社からの乗り換えもしくは一定の年齢以下の新規契約時、一定期間で端末を返却、独自特典が適用されると3月に発売されたばかりの「iPhone SE(第3世代)」も実質負担額1円になる場合も。

撮影:小林優多郎

また、ユーザー獲得での評価ではなく、ユーザーが長期的に利用することで、代理店が評価される仕組みを導入できないか」という提案もあった。

しかし、通信料金値下げを実現させようと、顧客の流動性を上げ、MNPの獲得競争をあおってきたのは総務省の政策だ。

SIMロック解除が義務化され、2年縛りの契約も禁止になった。1万円近くあった解除料も撤廃され、ユーザーはいつでも無料で解約しやすくなった。

ユーザーとしては気軽にキャリアを乗り換えやすくなったが、一方で、キャリアからすれば、ユーザーに逃げられやすくなった。

経営を安定するには逃げられた分だけ取り返す必要がある。つまり、キャリアが販売代理店に対して、MNPのポートイン重視の営業施策を強化したのは必然の流れだ。

「長期顧客の優遇撤廃」も総務省主導だが……

dポイント

例えば、NTTドコモは6月3日からdポイントで長期契約者向けの特典を一部変更・撤廃する。

撮影:小林優多郎

実際、NTTドコモは「MNPのユーザー獲得を重視するのは、乗り換え需要の高まりに応じたもので、ドコモとしての営業戦略もあるが、代理店の利益とも合致する」と指摘している。

また「長期契約ユーザーを優遇すべき」という有識者の意見が出たが、これも総務省が顧客の流動性を上げようと、キャリアに禁止させた過去があることを忘れてはならない。

かつて、料金プランにおいて、長期に契約していると割引が適用されたり、ポイントの付与率がアップするなど、同じキャリアを使い続けている人が得をする施策があった。

しかし、「流動性を上げなくてはならない。囲い込みはけしからん」ということで総務省から見直しが入っていたのだ。

こうした長期契約ユーザーへの優遇を禁止し、キャリアを辞めやすくするような政策を展開した後に「ユーザー獲得ではなく、長期ユーザーを評価すべき」と意見を一変させるのは、キャリアと販売代理店、さらにユーザーに対して混乱を招くだけではないだろうか。

「総務省が定めるルールが複雑で理解できない」

総務省

総務省

撮影:今村拓馬

実際、キャリアショップ店員のアンケート結果では

「接客をする中で難しく感じたり悩んだりすることとして、営業目標を達成するために不要なサービス等の勧誘をしなければならないことを挙げている者が4割いた。これは、総務省が定めるルールが複雑で理解できない(5割)に次ぐもので、 サービスや商材の説明の困難さや大変さ(3割)を上回った」という。

見方を変えれば、キャリアショップ店員が最も不満に感じているのは「総務省が定めるルールが複雑で理解できない」ということになる。

ここ数年、総務省は流動性を上げるためのルールを次々と新設。顧客の囲い込みができなくなったキャリアはMNP重視の経営方針を強化し、そのしわ寄せが販売代理店、さらにはキャリアショップ店員へのプレッシャーになっていく。

オンライン専用プランの登場で代理店は更に困窮

ahamo

オンライン専用プランの「ahamo」(アハモ)。

撮影:小林優多郎

一方、キャリアは政府からの値下げ要請に応えようと「ahamo」をはじめとする「オンライン専用プラン」を展開し始めた。

キャリアとしては「オンラインだから人件費やショップ営業費がかからず、低価格を実現できた」という建前が成立する。オンライン専用プランが増えれば、キャリアショップを削減することも可能になる。

通信料収入が落ち込む中、営業費を削減しようと、すでに店舗数の削減を検討しているキャリアも現れ始めた。

まさに、オンライン専用プランの台頭は、キャリアショップを経営する販売代理店にとって死活問題なのだ。

総務省が料金値下げをしようと、過剰に競争環境をあおったことにより、キャリアショップが疲弊し、さまざまな問題が悪化し始めている。

決して、ただ料金だけが下がったわけではない……この不都合な現実に総務省こそ気がつくべきだろう。

(文・石川温、編集・小林優多郎

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