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知床の観光船事故、社長が会見で3度土下座…波浪注意報でなぜ出港?事故までの経緯は?(会見詳報)

知床遊覧船ホームページより。消息を絶った「KAZU I」。

知床遊覧船ホームページより。消息を絶った「KAZU I」。

知床遊覧船ホームページより

北海道斜里町の知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が4月23日に消息を絶った事故で、運行会社「知床遊覧船」の桂田精一社長が4月27日午後、斜里町内の宿泊施設で記者会見した。桂田社長は事故発生から公の場に姿を見せていなかったが、発生4日後での会見となった。

会見では、波浪注意報が発出されていた中で出港を決めた運行会社の安全意識を問う質問が相次いだ。

桂田社長は午後4時50分ごろ、会見場に入った。

冒頭で「皆さん、この度はお騒がせいたしまして、大変申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を述べると、約10秒間にわたって土下座。その後、謝罪の言葉を続けた。

「当社の船舶のクルーズの中で、大変な事故を起こしてしまい、亡くなられた被害者の方々及び捜索中の被害者の方々に大変申し訳ございませんでした。亡くなられた被害者の方のご家族、捜索中の被害者の方のご家族に対し、大変なご負担を掛けております。申し訳ございませんでした」

「現在、捜索中の被害者の方々が一日も早く見つかることを心からお祈りするとともに、当社としては捜索中の被害者の方々の捜索ためのできる鶴限りのことを尽くしていく」

「当社として、今後、被害者の方々のお気持ちを第一に考えて対処する」

「事故の究明を全力で行っていく所存」

こうした言葉を述べた上で、「この度は大変申し訳ございませんでした」と、もう一度土下座した。

最終判断は「私」と発言

この後、桂田社長は事故経緯について説明した。

桂田社長によると、事故を起こした「KAZU I」は4月20日の日本小型船舶検査機構の検査で合格。4月21日には他の運行会社3社と事故を想定し救助活動訓練を実施したという。この日は海上保安庁の定期的な安全点検があり、救命胴衣や船体を検査されたが、桂田社長は「船体に対して指摘はなかった」とした。

一方、海上保安庁は21日の点検で、洋上の船の位置が確認できる「GPSプロッター」が船(KAZU I)から取り外されていたため、改善指導をしていたと毎日新聞が海保関係者への取材結果をもとに伝えている。

毎日新聞は「GPSプロッターは法律上の搭載義務はないが、船舶が安全に運航するうえでは有効なツール」と指摘した上で、知床遊覧船が海保の点検に対し「整備のために外している」と説明したと報じている。

桂田社長は事故当日の23日の出港判断について、当日朝に船長と相談しつつ、最終決定は自身が下したと述べた。通常シーズンよりも早い就航ではないかという質問にも「最終的に判断は全て私であります」と述べた。

ただ、出港判断の責任の所在をめぐっては、回答がチグハグな場面も見られた。

会見の途中で「社長にとって、行けるか行けないかの判断は、船長に任せていたのか」と問われると、「基本的に船のどの会社も最終的には船長判断です」とも発言した。

波浪注意報が出ていたのになぜ出港?

報道陣からは「他社からは“今日は波が高くなる”と出港をとどまるよう指摘もあったようだが、なぜ出港したのか」「波浪注意報も出ていた」といった指摘があった。

桂田社長は「(波浪注意報は)把握していた」としつつ、「ウトロの天候を調べたが、やはり(波は)1メートルいかない形。風速も2メートルぐらいだった」と主張。「天候の急変など不可抗力で予定地点まで到達できない場合の料金も、予め案内していた。条件付き運行だった」と述べた。

桂田社長によると、同社の安全管理規程は以下の通りだったという。

・波1メートル以上で欠航

・風速8メートル以上で欠航

・視界が300メートル以上ないと出港不可

さらに報道陣からは「他の船は午後は確実に荒れると見送っていた」との指摘があったが、桂田社長は船舶の大きさに寄って観光運行の開始シーズンのはじまりに差があると主張。23日は、他の船の出港予定はなかったと反論した。

ただ、波浪注意報が出ていたように、波の高さは時の経過で高くなることもある。

読売新聞は国交省北海道開発局の情報として、観光船が出航した23日午前10時のウトロ漁港の波高は32センチと穏やかだったと伝えている。ただ、4時間後には3mを超す大波になっていたという。

桂田社長の安全意識を問う質問相次ぐ

報道陣からは、桂田社長の安全意識を問う質問が相次いだ。

「条件付き運行」の実施について桂田社長は、顧客から(知床岬まで)行ってほしいと要求された場合、実際に揺れを体感すれば諦めてもらえると述べたが、「揺れている時点で危ないのではと思うが」と報道陣は追及した。

これに対し、桂田社長は「なんと言えばいいのでしょうか…揺れる時点の度合いによると思うんですが、それを1メートル以内で行って、1メートルすれすれのところで感じてもらうという意味だった」と釈明した。

「多少波が高くても行かせろと発言したことはあるか?」 という問いには、桂田社長は「正直言うと、私の大切なお客様、私の知人が来た時、知床は綺麗なものでどうしても見せたいから行けるところまで言ってくれと言ったことはある。しかし、最終的には船長判断なので、断られた」と述べた。

また、「他の船が出ているのになぜうちの船は出さないのかと発言したことはあるか?」 という問いには、「ちょっと記憶にない」と答えた。

出港当日は知床遊覧船の無線設備が故障していたことも判明していたが、近隣の会社や携帯電話で連絡可能だと判断し、出港を取りやめなかったという。

会見の中で、桂田社長は「結果として、ご指摘されれば、安全管理は行き届いていなかったということになると思います」「(事故原因は)私の至らなさが原因だったと感じております」と述べた。

一方で、「収益のために無理に出港させたということはない」とした。

報道陣からは「船長がFacebookで“ブラック企業で右往左往”と投稿していた。人員不足や連日出港などの状況はあったか」という質問もあったが、桂田社長は「えーっとブラック企業……私はわかりませんでした」とのみ答えた。

「KAZU I」の遭難で現在までに11人の死亡が確認されているが、いまなお15人が安否不明となっている。

会見は19時16分頃に終了。このとき桂田社長は3度目の土下座を見せた。

会見に先立っては、国交省の現地対策本部長、斜里町長が会見場でコメント。遺族取材への配慮を要請した。

【桂田社長の説明による、事故発生までの経緯】

2021年

5月 「KAZU I」船首、海上浮遊物と接触事故。運行していた船長は今回の事故時の船長ではない。

6月 KAZU Iが船尾を暗礁にこする座礁事故。船舶を運行していたのは今回事故で乗船していた船長。同乗し操船していた従業員もいた。

7月 事故を受けて「KAZU I」は造船会社に修理を依頼。「丁寧に直していただいた」(桂田社長)。修理後、JCIの検査に合格。書類等はKAZU Iの船中。

上記2件の事故について、北海道運輸局から行政指導。改善報告を提出。

2022年

1月 「KAZU I」を陸に上げ、造船所に整備を依頼。

4月15日 「KAZU I」整備完了、港におろした。数回テスト走行

4月20日 日本小型船舶検査機構の中間検査で合格。書類は「KAZU I」の船中。

4月21日 「KAZU I」が他の運行会社3社とともに、事故を想定した救助活動。海上保安庁の定期的な安全点検。「KAZU I」の救命胴衣、船体検査。「船体に対して指摘はなかった」(桂田社長)

*編集部注:毎日新聞は、このときの海上保安庁の点検で洋上の船の位置が確認できる「GPSプロッター」が船から取り外されていたため改善指導をしていたと、海保関係者への取材結果として報じている。

4月22日 「KAZU I」で船長が、他の運行会社とともに海上浮遊物の確認のために安全確認運行。23日のための安全確認で、同じコースを辿った。

<事故当日の4月23日>

午前8時 船長とクルーズの打ち合わせ。「船長から午後の天気が荒れる可能性があるが、明日10時からのクルーズは出港可能と報告があった」。「当時、ウトロでは風と波も強くなかったので、海が荒れるようであれば引き返す条件付き運行を船長と打ち合わせ、出港を決定」

午前8時30分 他社船長から、「知床遊覧船」の無線アンテナが故障と連絡があり、業者に修理依頼。無線の故障は携帯電話や、他の運行会社の無線でもやりとり可能のため「中止判断はしなかった」。

午前10時 「KAZU I」ウトロ港を出港

同午後1時13分 「KAZU I」が他社に無線連絡。「いまカシュニの滝。戻るのが少し遅れる」と連絡。

午後1時18分 「KAZU I」が他社に無線連絡「船首が浸水している」と救助要請。他社が海上保安庁に救助要請。海上保安庁と「KAZU I」が無線でやりとり。

午後4時30分 海上保安庁の航空機などが現場到着、救助活動開始。

*情報を随時更新します。

(文・吉川慧)

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