記者会見したリコーの山下社長(左)とサイボウズの青野社長(右)。業務提携により、DX事業とグローバル展開を強化する。
画像提供:リコー
リコーは2022年4月27日、クラウド型業務支援ソフト(SaaS)開発大手のサイボウズと業務提携すると発表した。
リコーはこれまで、国内販売会社リコージャパンを通じてサイボウズのクラウド型業務支援ソフト「kintone(キントーン)」を販売してきた。
今回の業務提携を機に、リコーブランド版のキントーンをサイボウズと共同開発し、デジタルトランスメーション(DX)事業を加速させる。
リコーは自社のクラウド型プラットホーム「RSI」(日本名称はEDWプラットフォーム)を基盤に、ソフトウェアポートフォリオの充実を図る。
出所:リコー発表資料
国内では2022年10月、リコーブランド版キントーンを発売。北アメリカでは2022年中に発売開始し、欧州でも1年以内にテストマーケティングを始める予定だ。2025年度までに年間売り上げ100億円を目指す。
今回の業務提携を機に、リコーブランド版キントーンを2025年度に売上高100億円、デジタル事業全体で同500億円を目指す。
出所:リコー発表資料
サイボウズのキントーンは、ITに詳しくない人でも直感的に操作できるのが特徴。また、容易にカスタマイズできることから部署や業種を問わず導入が進んでおり、2022年4月現在の契約は2万4000社、毎月550社(2021年平均)が採用しているという。
直感的な操作と柔軟なカスタマイズ化が支持され、右肩上がりに成長しているサイボウズのキントーン。2021年は毎月550社が導入したという(2021年平均)。
出所:サイボウズ発表資料
業務提携の狙いについて、リコーの山下良則社長は記者会見で、リコーが展開するワークフローのクラウド型プラットホーム「RICOH Smart Integration(RSI)」との親和性を重視していると語った。
「リコーブランド版キントーンの共同開発によって、RSIプラットホームの機能拡張の先が見えてくると思う」(山下氏)
2022年10月の発売と同時に、DocuWare(ドキュウェア)、AXONIVY(アクソン・アイビー)その他、RSI上で使えるさまざまなアプリケーションと連携した形で提供すると話すのは、リコーデジタルサービスビジネスユニット デジタルサービス事業部長の八條隆浩氏だ。
「RSIプラットホームに乗せることによって、我々の得意な印刷機能やリコー独自のキントーンプラグインをどんどん組み込んでいく。海外展開にあたっては、海外のお客さまが求めるプラグインについてもマーケティング活動をしながら組み込んでいきたい」(八條氏)
顧客の選択肢として、引き続きサイボウズ版キントーンも取り扱いしつつ、リコーブランド版の拡販に力を入れていきたい考えだ。
互いの強みを生かし、国内だけでなくグローバル市場での販売を強化していきたい考えだ。
出所:リコー発表資料
サイボウズは海外展開を加速
一方、サイボウズとしては、今回の業務提携によって海外展開に弾みをつけたいとする。同社の青野慶久社長はこう話す。
「キントーンは決して日本独自で日本企業だけにしかウケないわけではなく、アメリカやアジアのローカル企業にもウケ始めている。それをぜひ加速させたい」(青野氏)
サイボウズの青野社長は、まずは両社の人的交流を深め、さまざまな意見やアイデアを交わしながら共同開発を進めていきたいと語った。
出所:サイボウズ発表資料
“本家”のサイボウズ版キントーンは2022年3月現在、アメリカで720SD(契約中のサブドメイン数)、アジア・中華圏で2230社に導入されているが、自力で拡販していく販売ノウハウやネットワークの限界も感じているようだ。
「業務提携によって、リコーさんが築いてきたグローバルの販売ネットワークを活用させていただきたい。アメリカ、そして私たちがまだ行けていないヨーロッパにも、リコーブランド版キントーンを提供していきたい」(青野氏)
国産SaaSとして、巨大グローバル企業がしのぎを削る世界市場を切り崩すことができるか。
出所:サイボウズ発表資料
(文・湯田陽子)