イーロン・マスク。
HANNIBAL HANSCHKE /Getty Images
- イーロン・マスクのTwitter買収宣言以降、多くの疑問があがっているようだ。
- マスクがTwitterをどうするつもりなのかについては、ほとんど明らかになっていない。
- だが、「言論の自由」に対するマスクのスタンスと、マスクをチェックする取締役会が存在しなくなることは分かっている。
イーロン・マスク(Elon Musk)が440億ドル(約5兆7200億円)でTwitter(ツイッター)を買収するという出来事を巡り、新たなことが続々と明らかになっている —— そして明らかになればなるほど、分からないことが増えているようだ。
特にTwitterの従業員たちは、会社の買収が自分たちにとって何を意味するのか、不安に思っているだろう。このほど行われた全員参加会議では、その懸念はほとんど払拭されなかった、とInsiderのカーリー・ヘイズ(Kali Hays)は伝えている。
疑問を持っているのは、従業員だけではない。Twitter上では、ユーザーたちが、自動投稿を行う「ボット」アカウントはどうなるのか、凍結されたアカウントが復活したらどうなるのか、などの疑問を挙げている。まだ答えが分かっていない最重要問題の一部を紹介しよう。
Twitter本社は移転するのか
マスクと言えば、2021年にテスラ(Tesla)をテキサス州に移転したことで有名だ。今回、Twitter買収のニュースが公になる以前から、Twitterもサンフランシスコからオースティンに移転したらどうなるだろうと想像していた人々もいる。
マスクは明らかに、テキサス州とその政策が好きだ。テキサス州の政策はよく、カリフォルニア州の政策と対比される。テキサス州知事、グレッグ・アボット(Greg Abbott)は、ネット上の言論の自由を守ると度々主張しており、「不当なソーシャルメディア検閲」に反対してマスクに移転を促した。
テスラ、スペースX、Boring Companyと同じようにTwitterをテキサスに移そう
レイオフはあるのか
TwitterのCEO、パラグ・アグラワル(Parag Agrawal)は、「現時点では」従業員の解雇は計画されていないと述べた、とザ・バージ(The Verge)は4月25日、匿名の情報源によるものとして報じた。
だが、アグラワルは、マスクの買収で社内がどう変わるのかは分からない部分が多いとしぶしぶ認めているという。
Twitterのモデレーションはどうなるのか
社内のコンテンツ・モデレーション部門をマスクが変えるとして、どう変えるつもりなのか、具体的な情報はない。
だが、自称「言論の自由絶対主義者」であるマスクが、モデレーションが大嫌いなことは誰もが知るところであり、マスクはこれを検閲と呼んでいる。
コンテンツのモデレーション —— 投稿を取り締まり、ユーザーを偽の情報や嫌がらせから守る作業 —— は、アメリカの厄介な文化戦争へと引き込まれ、保守派の大半はプラットフォームのルールの標的にされていると感じている。
専門家が以前Insiderに語ったところによると、マスクの言論の自由への執着がモデレーション・ポリシーを後退させ、ヘイト・スピーチや偽情報を増やすことになる可能性があるという。
従業員はTwitter株で利益を得る機会を失うのか
Twitter従業員の多くが報酬として自社株を与えられているが、マスクの提示額について心配する従業員もいた。2021年は、提示額の54.20ドル(約7000円)以上で取引されていたからだ。
もちろん、最近の株価の低下から、現金が得られる見込みを喜ぶ者もいた、とある従業員はInsiderのカーリー・ヘイズに語っている。
だが、Twitterのブレット・テイラー(Bret Taylor)会長とアグラワルCEOはこのほど、従業員に対して、報酬は株式の追加ではなく、現金で与えられると伝えたという。
働き方の柔軟性はなくなるのか
Twitterのリモートワークは、2022年末に買収が成立するまでは続くことになるとアグラワルは4月25日に従業員に語った。
だが、Twitter社内のSlackチャンネルでは、ある従業員が「マスクの仕事のやり方がTwitterの文化を変えてしまうことを多くの人が懸念している」と述べたのはInsideが以前に伝えたとおりだ。
Twitterの創業者で前CEOのジャック・ドーシー(Jack Dorsey)は、柔軟なワークライフ・バランスを重視することで知られている。Twitterは、パンデミックによるロックダウンが解除されても、永久に在宅ワークをして良いとした最初の企業だ。また2020年以降、会議がない日などに有給休暇を取得することを推奨している。
マスクのやり方は全く違う。マスクは自身を「ナノマネージャー」と表現し、従業員によると彼は短気で「激怒して解雇」したり、役員たちに怒りを爆発させたりするという。マスクはそれに対して、自分は「明確で率直なフィードバックをするだけだが、それが愚弄と受け取られるのかもしれない」と述べた。
誰がマスクを監視するのか
買収が成立すれば、ツイッターは完全にマスクのものとなり、非公開企業となる。つまりマスクは、株主の代理である取締役会に対して責任を負う必要がない。テイラーはこのほどの全員参加会議で、買収が成立すれば、実質的には取締役会は存在しなくなると述べた。
アグラワルも、ドーシーでさえも、それほどまでの株を所有したことはない。ほとんどの公開企業と同様、彼らはいつでも、取締役会と対話しながら仕事をしなければならなかった。
マスクは攻撃的なツイートで知られており、訴訟や証券取引委員会(SEC)との法廷闘争になったこともある。
そんなマスクが、世界で最も影響力のあるプラットフォームをほぼ完全にコントロールすることになるのだ。
[原文:The 6 most burning questions that Twitter employees, investors, and users have for Elon Musk]
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)