エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
Tim Levin/Insider
- エレクトラ・メカニカの「ソロ」に試乗した。1万8500ドルで、1人乗りの3輪電気自動車(EV)だ。
- カナダのスタートアップ企業、エレクトラ・メカニカは「ソロ」で都市部での移動手段に革命を起こすと述べている。
- この小さなEVを試乗して一番良かったのは、行く先々で笑顔と注目を集めたことだ。
アメリカ人は大きなものが好きだというのはよく言われることだ。大きなハンバーガー、大きなショッピングモール、大きな家。車を買う場合も大きなものが欲しいと考えるだろう。
2021年、アメリカの購買層は40年連続で、他のどの車種よりもフォードFシリーズ(Ford F-Series)のピックアップトラックを多く購入した。また、新車販売台数の半分以上がSUVだった。しかし、一般の人が本当に必要とする車とはどのようなものなのだろうか。また、純粋な実用性への欲求は、どこで「古き良きアメリカ」が理想とするものと一線を画すのだろうか。
カナダのEVスタートアップ、エレクトラ・メカニカ(ElectraMeccanica)が開発した車もそうした疑問を投げかけてくる。それが、目を疑うような外観の3輪電気自動車(EV)「ソロ(Solo)」だ。1人乗りであることから、そう名付けられた。
多くの人は、ほとんどの場合1人で車を運転する。しかも、それほど遠くへ行くわけでも、たくさんの荷物を積むわけでもない。そこで、航続距離が約160km、トランクにスーパーの袋がいくつか入る1人乗りの車であれば、従来の車よりも安く、効率的に多くの人のニーズを満たすことができるだろう、というのが開発した理由だという。
エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
Tim Levin/Insider
エレクトラ・メカニカは、この1万8500ドル(約240万円)の「ソロ」が都市部での移動手段に革命を起こすと述べている。そう確信しているので、生産台数を増やすために、これまでの中国に加えて、アリゾナ州に新工場を建設中だという。
2022年4月初旬、エレクトラ・メカニカがマンハッタンで試乗会を開催するというので、筆者はそのチャンスに飛びついた。
第一印象
初めてソロを見て、その小ささに衝撃を受けた。写真では普通の車の半分くらいのサイズに見えたが、実物を見ると4分の1くらいに見える。しかし車内は、身長185cmの私でも広々として感じられた。居心地がよく、窮屈でもない。
エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
Tim Levin/Insider
ソロには一般的な車と同様に暖房、冷房、Bluetooth付きラジオ、シートヒーター、カップホルダーなど、快適性を高める装備が豊富に用意されている。インテリアはベーシックで少し安っぽい感じもするが、高級感を売りにしているわけではない。
テストドライブ
試乗できる時間は20分ほどしかなかったので、最高速度の129km/hを出したり、車庫入れを体験したり、コストコで買い物をしても荷物を積み込めるかを試したりといったことはできなかった。しかし、混雑した都市部でソロを走らせるとどんな感じになるのか、その感触はつかめた。
エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
Tim Levin/Insider
発進するときは、多くのEVと同様にソロも一気に加速していくのかと多少期待していたが、そうではなかった。56馬力のソロはそれほど速くはない。それでも運転するのはスリリングだった。車体がとても低いので、まるでサーキットから抜け出したゴーカートで走っているような気分になった。
ニューヨークの荒れた路面ではどんな車でも苦労するが、ソロの乗り心地もあまりよくはなかった。凹凸があるとそれがすべて座席に伝わってくる。もっとひどい路面になると跳びはねるような感じになる。ブレーキをかけるには意外と力がいるが、それにはすぐに慣れた。
エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
Tim Levin/Insider
ソロの小ささは、駐車したり、狭い駐車場で運転したりするときなど、さまざまなシチュエーションで明らかに大きな長所だと思うが、運転の荒いドライバーの多いマンハッタンでは負担になるかもしれない。
試乗中、周囲を走る大型SUVやピックアップ、トラックからはまったく見えていないだろうと何度か感じた。視認性を高めるためにショッピングカートやリカンベント自転車に付いているようなフラッグが必要なのではないかと真剣に考えた。
エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
Tim Levin/Insider
ソロを試乗して一番良かったのは、注目されたことだ。どこへ行っても、人々は笑顔でソロを指差し、首を伸ばして靴の形をした小さな車のようなものが静かに走っているのを見ようとしていた。多くの人が行きかう横断歩道から、目を輝かせて手を振ってくれる人もいた。こんなことはめったにない。
結論
ソロは巧みに走ることができ、駐車場の最も狭いスペースにも停めることができる。また、一般的な車よりもはるかに燃費がよく、走っているとたくさんの人が笑顔を向けてくれる。合理的に考えれば、ソロでニーズが満たされるということに気が付く人は多いだろう。しかし、スマート フォーツー(Smart ForTwo)やフィアット500(Fiat 500)といったコンパクトカーがあまり売れなかった国では、多くの売り上げは見込めないかもしれない。
エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
Tim Levin/Insider
ソロを試乗して感じたのは、通勤用というより、大学構内のパトロールや駐車違反の取締りなどの用途としての可能性の方が大きいのではないかということだ。そして、マーケットも同様の考えのようだ。
「10月以来、100台あまりのソロを納車してきたが、そのうち約60%が商用だ」と、エレクトラ・メカニカのケビン・パブロフ(Kevin Pavlov)CEOは教えてくれた。商用と乗用が半々くらいになるだろうという彼の予想は外れたようだ。
エレクトラ・メカニカの「ソロ・カーゴ」。
Tim Levin/Insider
パブロフによると、商用車としてソロが好まれる理由は、コストが低く、なおかつ人目を引く動く広告塔にもなるからだという。エレクトラ・メカニカでは、トランクルームを拡大した配送用の「ソロ・カーゴ」も2022年内に納車を開始する予定だ。大きなピザが12枚、2リットルのソーダが4本入るという。
ソロは都市交通の常識を覆すのだろうか。それを達成するために十分な台数を販売できるのかどうか、私には分からない。しかし、この3輪EVは、大胆で奇妙なもの、あるいは超効率的なものを求める消費者に対して興味をそそるユニークな車としてアピールできるだろう。それは間違いない。
[原文:I drove an $18,500, 3-wheeled electric car with 1 seat and big dreams]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)