グーグルの親会社アルファベット、FacebookやInstagramを運営するメタ、スナップチャットの親会社スナップの各社が発表した2022年第1四半期業績は、精彩を欠いたものとなった。
Insiderが同年4月に独自入手したデータ管理企業ロタメの(Lotame)分析によると、グーグル傘下のユーチューブ、メタ、スナップ、そしてツイッターを加えた2022年の収益は合わせて160億ドル(約2兆800億円、1ドル=130円換算)近くも減少する見込みであるとされている。
原因は、iPhoneを使用しているとよく目にする「他社のAppやWebサイトを横断してあなたのアクティビティの追跡することを許可しますか?」というポップアップだ。
2021年4月に実装された「アプリのトラッキングの透明性(以下、略称であるATT)」として知られるこのiPhoneアップデートにより、アプリ開発者は異なるアプリやウェブサイトをまたいでユーザーを追跡するには事前にユーザーに許可を求めなければならなくなった。
ユーザーの大多数が追跡を拒否しているため、テクノロジープラットフォームや広告主にとっては顧客像が見えにくくなり、広告活動が効果を発揮しているかどうかが分かりにくくなっている。
各社が受けたダメージ
最大の打撃を受けると見られたメタは2021年の時点で、ATTの影響で2022年の業績は100億ドル(約1兆3000億円)規模のダメージを受ける可能性があるという予測を既に公表していた。
実際、メタの今四半期の広告収入は前年同期と比較して約7%の伸びにとどまっている。ウォール・ストリート・ジャーナルは、10年前の上場以来最低の年間成長率になるとしたアナリスト予測が現実となりつつあると報道した。
FacebookやInstagramなどのSNSアプリは広告トラッキングを許可するユーザーの割合が最も低い傾向にある。それでいて、メタの広告主の中心はターゲティングや正確な測定に頼って顧客獲得している比較的小さな広告主で構成されている。幅広い消費者を対象としたいわゆるブランド広告に重点を置く傾向がある大手広告主とは違うのだ。
スナップのCEOであるエヴァン・シュピーゲル(Evan Spiegel)は、4月上旬に行われた決算報告の際、第1四半期は「想定より厳しかった」と述べた。スナップの収益は38%増の10.6億ドル(約1378億円)となっており、アナリスト予測の10.7億ドル(約1391億円)には届いていない。同社はまた、予測を上回る3億5960万ドル(約467億円)の純損失も計上している。
アルファベット傘下のグーグルは、競合と比較してアップルの変更で被る影響が少ないと見られていた。同社の検索広告事業では、トラッカーよりもユーザーが検索ボックスに入力する情報の方が広告事業においては重要だからだ。
グーグルは既にYouTubeやGmail、Chromeのようなサービスにおける多数のログインユーザーに関する膨大なデータを蓄積しており、さらには広告の対象をiOSユーザーからAndroidユーザーへと切り替える広告主の恩恵も享受すると見られていた。
しかし、そんなグーグルでさえも痛打を避けられていない。アルファベットのCFOであるルース・ポラット(Ruth Porat)は4月26日に行われた同社の四半期決算報告で、「『ダイレクトレスポンス(クリックすると別のウェブサイトに移動するといった、特定のアクションをユーザーに取らせるようにデザインされた広告)』を主として、ATTによる逆風が続いている」と述べた。アルファベットの収益自体はアナリスト予測に達したものの、ユーチューブの広告売上は予測を下回った。
ツイッターもアップルのアップデートによる影響を受け、売上成長が減速したことを明らかにしている。Yahooファイナンスによると、今四半期の収益は16%増の12億ドル(約1560億円)で、19%増としたアナリスト予測に達しなかった。なお、イーロン・マスク(Elon Musk)による同社の買収を踏まえたコメントの発表や収支報告の開催はなかった。
アップルの一人勝ちなのか?
アップルのティム・クックCEO。
REUTERS/Lucy Nicholson
アップルはアップデートにより大きな恩恵を得ている。ユーザーのプライバシーを重視するブランドとしての立ち位置の強化と、検索広告事業での予想外の収益という2点だ。特に後者において、市場調査会社のオムディア(Omdia)は2022年のアップルの検索広告収入が55億ドル(約7150億円)まで成長すると予測している。この件についてアップルの広報担当者にコメントを求めたが回答はなかった。
なお、アップルは4月26日、同社の出資によるホワイトペーパーを発表した。著者はコロンビア大学ビジネススクールのキンシュク・ジェラス(Kinshuk Jerath)教授で、「ATTの導入によりメタなどの企業からアップルに何十億ドルもの広告費が動いたという主張は憶測にすぎない」としている。
もちろんビッグテックの今四半期に打撃をもたらした要因は他にもある。ウクライナ侵攻により多くの企業がロシアでの営業停止を余儀なくされており、これにはロシアのユーザーを対象とした広告事業も含まれている。グローバルなサプライチェーンの混乱に伴うインフレ環境に不安を感じるマーケターたちも広告費を抑えている。
ただし、市場調査会社のマグナ(MAGNA)は経済的・地政学的な不透明感を受けて広告費の成長予測を下方修正しているものの、2022年のアメリカ広告市場は全体で11.5%の成長を見込んでいる。多くの広告主が財布の紐を締める一方で、仮想通貨業界などはマーケティング支出を増やしているからだ。そして何より、アメリカでは巨額の広告費が動く中間選挙が近づいている。
[原文:Apple was a key reason Google, Facebook's Meta, and Snap had a terrible quarter]
(編集・野田翔)