バイオテクノロジー市場には年初来、株価下落と資金流入不足の大波が押し寄せている。
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バイオテクノロジー市場は2022年に入って低迷を続けている。企業も投資家もこの嵐を乗り切るために節約モード一色だ。
しかも、一部の企業については、そのような節約程度では足りず、年越し前に資金不足に陥るおそれすらある。
バイオテクノロジー銘柄の動向を示す代表的な指数連動型の上場投資信託(ETF)「SPDR S&P バイオテクノロジーETF」は年初来34%の下落を記録している。
この急落は、投資家のグロース(高成長)株離れ、買収合併(M&A)を通じた経営資源集約化の遅れ、相次ぐ臨床試験失敗などが要因として挙げられる。
資金不足の企業は一般的に市場低迷の影響を受けやすい。
米投資銀行ジェフリーズのアナリスト、マイケル・イー、アンドリュー・ツァイ、デニス・ディンは最近の顧客向けレポート(4月29日)で、バーンレート(=1カ月あたりの現金消費額、月次のマイナスキャッシュフロー)をもとに、今後12カ月以内に資金不足に陥るおそれのあるバイオテクノロジー企業20社をリストアップしている。
時価総額2億ドル(約260億円)以上、株価1ドル超のバイオテクノロジー銘柄がリスト掲載の対象で、最新の四半期決算(純損失)をベースに、現在の現金及び預金水準から資金不足に陥る時期を推定した。
上記リストのうち3銘柄は、Insiderが先月公開の記事(3月23日付)でリストアップした「財務上の危機に直面し、2022年の生き残りに悪戦苦闘中のバイオテクノロジー企業13社」にも名を連ねている。
うちソレント・セラピューティクス(時価総額9億100万ドル、従業員数799人)、ブルーバード・バイオ(同3億5600万ドル、518人)、クロビス・オンコロジー(同2億3000万ドル、413人)の3社は、いずれも2022年中に資金不足に陥る危険性があることを有価証券報告書に記載している。
なお、ジェフリーズの顧客向けレポートには、一部の企業がごく最近実施に至った資金調達は反映されていない。
例えば、CTIバイオファーマは2022年2月、最初の製品である真性多血症あるいは本態性血小板血症の治療薬「VONJO(パクリチニブ)」について、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を取得。医薬品ファンドのDRIヘルスケア・トラストから6000万ドルのロイヤルティを受け取ったが、これはジェフリーズのレポートには計上されていない。
他にも、ゼリス・バイオファーマは2022年3月、ヘイフィン・キャピタル・マネジメントと1億5000万ドルを上限とする優先担保付ローンの提供を受けることで合意している。
ただ、そうした資金調達や売上計上の動きを踏まえてもなお、リストアップされたバイオテクノロジー企業の資金力は十分とは言えない。
ジェフリーズがリストアップした資金不足のバイオテクノロジー企業20社は以下の通りだ。
- ソレント・セラピューティクス(Sorrento Therapeutics)
- CTIバイオファーマ(CTI BioPharma)
- オプコ・ヘルス(OPKO Health)
- ゼリス・ファーマ(Xeris Pharma)
- リネージ・セル・セラピューティクス(Lineage Cell Therapeutics)
- クロビス・オンコロジー(Clovis Oncology)
- チメリックス(Chimerix)
- カロ・ファーマ(Karo Pharma)
- アクサム・セラピューティクス(Axsome Therapeutics)
- ヘロン・セラピューティクス(Heron Therapeutics)
- ワクシニティ(Vaxxinity)
- トリシダ(Tricida)
- エンド・インターナショナル(Endo International)
- ADMAバイオロジックス(ADMA Biologics)
- ブループリント・メディシンズ(Blueprint Medicines)
- ブルーバード・バイオ(Bluebird Bio)
- レキシコン・ファーマシューティカルズ(Lexicon Pharmaceuticals)
- マーサナ・セラピューティクス(Mersana Therapeutics)
- TGセラピューティクス(TG Therapeutics)
- イノビオ・ファーマシューティカルズ(Inovio Pharmaceuticals)
[原文:Top biotech analysts say these 20 companies are set to run out of cash within a year]
(翻訳・編集:川村力)