2022年3月にメタバースで開催された「ファッションウィーク」で、ドルチェ&ガッバーナは人間のモデルの代わりにデジタルの猫を採用した。
Metaverse Group
- メタバース・グループは、さまざまなメタバース空間で広大な仮想の土地を所有している。
- 同社は単なる地主ではなく、広告主が望むような空間を構築できる開発者を抱えているのだ。
- また、Forever 21のバーチャル店舗を設計し、メタバース初の「ファッションウィーク」を開催した。
いわゆるメタバースで「土地」を買うという意味が今ひとつよく分からなくても大丈夫。それはあなただけではない。このコンセプトは、まだ一般に受け入れられているという状況にはほど遠い。
しかし、だからといって、人気が衰えているわけではなく、1兆ドル(約130兆円)規模の市場になる可能性があると言う支持者もいる。
メタバースの不動産業界の主要プレイヤーの1つであるメタバース・グループ(Metaverse Group)は、仮想空間の地主として着々とその地位を確立している。同社の親会社であるトークン・ドットコム(Tokens.com)のアンドリュー・キグエル(Andrew Kiguel)CEOは、1000万ドル(約13億円)以上の資金をデジタル不動産の購入に費やしてきたとInsiderに語っている。
同社にとって、これは広告スペースへの初期投資であり、人々の注目を集めるためのものだ。
「15年前から、Facebookやインスタグラム(Instagram)をスクロールすると、広告が流れてきた」とキグエルは言う。
「10年、15年、20年前に戻って、まだ黎明期であったソーシャルメディアプラットフォーム内のスペースを購入できたとしたら、そのスペースで何でも好きなことができ、非常に価値のあるものになっただろう」
地主と不動産デベロッパーのハイブリッド
ディセントラランドにあるトークン・ドットコムの「トークン・タワー」。
Metaverse Group
メタバースは、いずれデジタル世界を席巻するだろう。そこではARグラスやVRヘッドセットを装着することで、リビングに居ながらデジタルアバターを通して、人々が交流できるようになる。しかし今はまだ、これらのスペースは生まれたばかりの個々の空間に過ぎず、相互のつながりはほとんどない。
それでもメタバース・グループは、ソムニウムスペース(Somnium Space)や、サンドボックス(Sandbox)、ディセントラランド(Decentraland)といったさまざまな仮想空間で土地を獲得することをやめなかった。そのポートフォリオに含まれるサンドボックスではラッパーのスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)が「スヌープバース(Snoopverse)」という独自のメタバース空間を構築しており、ディセントラランドは最大かつ最も人気のあるメタバースでイベント開催でもよく知られている。
ディセントラランドは約9万区画で構成されており、企業が所有して開発できるのはそのおよそ半分だ。キグエルは、メタバース・グループがどれだけ投資したのかは明らかにしていないが、2021年11月にディセントラランドの「ファッション・ストリート・ディストリクト」の中心地にある116区画を243万ドル(約3億円)相当の仮想通貨で購入したと述べている。また、2022年4月には「ミュージック・ディストリクト」の34区画も購入している。
仮想空間にある土地は、有限であることにその価値があるとキグエルは言う。これは、発行上限が2100万枚のビットコインを支持する人々の間でよく知られた論点だ。
広告主やミュージシャン、小売業者などは、この仮想空間を使って参加者にアプローチしたいと思うようになるだろうとキグエルは期待している。そしてメタバース・グループは、有料でその手助けをするための確固とした足場を築いている。
2022年3月には、同社が購入したディセントラランド内の土地で、初めての「ファッションウィーク」が開催された。Vogueが指摘したように、デザインの要素は1990年代を彷彿とさせる基本的なものだった。それでも10万人以上のユーザーがこのファッションウィークに参加した。現実のファッションショーでは到底収容しきれない人数だ。
同社には、バーチャル店舗やデジタル看板、ウェアラブルNFT(ブロックチェーン技術を用いて作られた独自のデジタルアイテムで、アバターがメタバースで着用する)のデザインについて、アドバイスを求めに来るブランドもある。
メタバース内にあるForever 21のバーチャル店舗。
Metaverse Group
特に、メタバースに参入したいが、自社に専門家がいない企業にとって、このようなアドバイスはありがたいものだろう。ファッションブランドのForever 21もメタバース・グループのクライアントになっている。
「我々はプログラマーとソフトウェア・エンジニアのグループを擁しているので、クライアントが『我々のビジョンはこれだ』と言ってきたときに、彼らが思い描いたようなデザインを作り、デジタルの命を吹き込んでメタバースに誕生させることができる」とキグエルは述べている。
メタバースの土地は一般ユーザーではなく、広告主のためのもの
専門家は以前Insiderに対し、メタバースの不動産は「リスクの高い」暗号資産に過ぎず、実際の不動産のように価値を高めることができないと語っていた。キグエルも、一般ユーザーがメタバースで「家」を購入するのは、単に目新しいからに過ぎないと述べている。
しかし、広告主となると話は別だ。メタバースの土地に対する広告主の需要が高まれば、その土地を所有していると有利になる。
「今、ディセントランドに行くと、カジノ以外はちょっとしたゴーストタウンだろう」とキグエルは言う。「しかし、イベントなどが開催されたりしていると…」状況は一変するという。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)